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リグ・ヴェーダ 詩訳 ― 火の神が歌う世界の始まり  作者: はまゆう


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第1巻 第129讃歌 雷神インドラ讃歌(絶対守護篇)

1 インドラよ、汝が神々のために

遥か彼方から

手繰り寄せるあの戦車、

迅速にして、

非の打ち所なき汝が

引き寄せるあの戦車を、

私たちの助けとして、

ただちに傍らに置き給え。

それが強靭なものであることを、

心から願い。

欠点なき、精力的な汝よ、

祭祀を司る私たちの、

この秩序ある言葉を聴くがいい。

2 勝利を求める男たちが、

戦いの叫びの中で、

その力を求めて

呼び求めねばならぬインドラよ。

英雄とともに光を勝ち取り、

詩人とともに

栄誉を掴むあの者を、

富める者は、

まるで頑強な駿馬を求める如くに、

手に入れようと追い求める。

3 強大なる汝は、

雨を湛えたあの(雲の)革袋を

大地へと注ぎ込み、

悪意ある者を

遥か彼方へと追い払う。

インドラよ、

私は汝に向かって歌い、

ジァウスに歌い、

みずから輝くルドラに歌う。

ミトラとヴァルナに、

そして慈悲深き神に向けて、

名高き賛歌をうたうのだ。

4 私たちはインドラが、

汝らをさらに先へと進める

友となることを願う。

万人に愛され、

いかなる戦いにおいても

最も頼もしい同盟者。

あらゆる遭遇戦において、

私たちの祈りを、

助けとなる力へと変え給え。

汝が打ち倒す敵は、

決して汝を屈服させることはない。

5 すべての敵の

傲慢不遜なプライドを、

烈火の中の薪を燃やす如き、

強大なる援助をもって、

踏みにじり給え、強大なる者よ。

英雄よ、

かつての如くに私たちを導け、

汝は今も変わらず、

非の打ち所なき守護者なのだ。

汝は祭司の如くに、

人間のすべての罪を追い払い、

みずから私たちを求めて

歩み寄る。

6 私は、今まさに注がれた

あのソーマの一滴に向けて、

この言葉を語ろう。

それは祈りを呼び覚まし、

魔物を屠る祈りを

呼び覚ます。

どうか彼みずからが、

死の矢をもって、

嘲る者の憎悪を、

私たちから遥か彼方へ

追い払ってくれますように。

邪悪を語る者は

遥か彼方へと逃げ去り、

一粒の塵の如くに、

消え失せるがいい。

7 思慮深い呼び声によって、

私たちはこれを手に入れ、

勇敢な息子たちとともに、

大いなる富を、

あの甘美なる富を手に入れる。

怒れる神を、

私たちは聖なる糧と

称賛の言葉をもって宥める。

真実のインスピレーションに満ちた

呼び声をもって、

聖なるインドラを呼び求めるのだ。

8 私たちと汝らの幸福のために、

インドラよ、

その気高き力をもって、

邪悪な者をここから追い払い、

悪意ある心を引き裂き給え。

貪欲な魔物が

私たちに向けて放つ武器は、

彼ら自身を滅ぼすだろう。

撃ち落とされたその武器は、

標的に届くことはなく、

放たれた松明が、

私たちを打つことはないのだ。

9 満ち溢れるほどの富とともに、

インドラよ、

私たちの元へと来たり給え。

何ものにも遮られぬ道、

魔物のいない、

安全な道を渡って。

私たちが遥か彼方に

迷い出るときも、

我が家がすぐ近くにあるときも、

常にともにあり給え。

近くからも、遠くからも、

汝の助けをもって、

私たちを永久に護り給え。

10 勝利の富を持つインドラよ、

汝は私たちのもの。

強大なる助けを授けるために、

ミトラの如き力強さで、

その力を伴い給え。

最も強き救い主、

戦士の駆る戦車の、

不滅の守護者よ。

雷撃を腕に持つ御方よ、

私たちではなく、

私たちを傷つけようとする

あの者をこそ、

打ち砕き給え。

11 称えられし御方よ、

私たちを災いから護り給え。

汝は常に、

悪意ある者を阻む防壁、

神の如き防壁である。

邪悪な悪魔を屠る者、

私のような詩人を

救う御方よ。

慈悲深き主よ、

父(創造主)は汝を、

魔物を屠る者としてお創りになった。

悪魔を滅ぼすために、

汝をお創りになったのだ。



解説

雷神インドラの絶対的な武力と、それを支える「富と雨の循環」という古代の人々の力強い生存の軌跡が、見事な拍子で展開される讃歌です。

1–5節:戦車と天の革袋の躍動

1節でインドラの乗る「非の打ち所なき戦車」を呼び寄せる場面から、一気に気勢が上がります。3節の「雨を湛えた雲を『革袋』に例えて、大地に注ぎ込む」という表現は、乾いた大地に生きる人々にとっての最高の救済を視覚的に伝えています。5節では、インドラの強大な戦闘力が「烈火の中の薪を燃やすような容赦のなさ」として描かれ、敵の傲慢さを粉砕する胸のすくような展開を生み出しています。

6–8節:言葉の防壁と呪い返し

ここには、言葉を武器とする表現者にとって非常に血湧き肉躍る構成があります。6節で、聖なる祝汁ソーマが「悪魔を屠る祈りを呼び覚ます」と語られ、8節では、敵が放った悪意の武器や火のついた松明が「物理的に標的に届かず、敵自身を滅ぼす呪い返し」となる描写がなされています。負の感情を言葉の力で完全に遮断する、極めて強靭な精神性です。

9–11節:旅路のなかの守護

9節の「迷い出るときも、我が家にあるときも、遠くからも近くからも護り給え」という言葉は、常に移動を繰り返していた人々の旅情を感じさせます。そして11節の、創造主(父)がインドラを「悪魔を屠るための専門家」として生み出したという結びは、自分の役割に誇りを持つすべての表現者への最高の賛辞として響きます。


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