第1巻 第139讃歌 万神讃歌(全神族の系譜篇)
1 私たちの祈りを聞き届け給え。
思索の中で、私はまず
アグニを尊ぶ。
今や私たちは、この天なる神々の集い、
インドラとヴァーユを選び取る。
私たちの最新の思索が高まり、
ヴィヴァスヴァーン(太陽神)へ
集中するとき。
私たちの聖なる歌は、
神々のもとへと向かうかのように、
己の道を前進してゆくのだ。
2 ミトラよ、ヴァルナよ、
汝らが真実の上にあって、
偽りなるものを己の心へと、
知性の精神的エネルギーをもって
収めたように。
汝らが住まうその座において、
私たちは黄金なる御方を見つめた。
己の思索や精神によってではなく、
この目をもって、
然り、ソーマが授ける目をもって。
3 アシュヴィン双神(Aśvins)よ、
虔なる者たちは讃歌をもって、
生存する者たる男たちは、
供物のもとで汝らを呼ぶ。
あらゆる栄光とすべての糧は、
富の主たちよ、汝らに懸かっている。
汝らの黄金の戦車の輪渕は、
力強き二神よ、雫を散らすのだ。
4 充分に知られている、力強き二神よ、
汝らは天を開く。
朝の儀式のために、
汝らの戦車の馬は繋がれる。
ブレることなき朝の馬たちが。
私たちは汝らを戦車の座へと、
力強き二神を、
黄金の戦車へと据える。
汝らは中空を、まるで正しく通ずる
道を辿るかのように突き進む。
5 溢れる力を持つ二神よ、
その偉大なる威力をもって、
昼も夜も私たちに祝福を授け給え。
私たちがもたらす供物は、
決して絶えることがない。
私たちが届ける贈り物は、
決して潰えることがないのだ。
6 これらのソーマの雫は、
強大なるインドラよ、
英雄たちのために注がれ、
搾り石で搾り出され、
汝のために湧き出ている。
それらは汝の心を歓ばせ、
大いなる、驚くべき富を
授けさせるのだ。
讃歌を受け入れる御方よ、
讃美の歌によって讃えられ、
慈悲深く私たちの元へ来たり給え。
7 速やかに、アグニよ、
私たちの声を聞き給え。
私たちによって高められ、
汝は崇められるべき神々へ、
崇められるべき王たちへ語りかける。
神々よ、汝らがかの乳牛を
アンギラス一族へ与えた時、
彼らは乳を搾った。
彼らに加わったアリヤマンが、
その作業を行ったのだ。
彼は私と同じほどに、
かの乳牛を知っている。
8 私たちのための、
汝らのこの雄々しき業が、
古び去ることがありませんように。
汝らの眩い栄光が、
衰えへと落ちることがありませんように。
私たちの命の時に先立って、
衰えることがありませんように。
時代ごとに新しく、
人間を超越した驚くべき汝らの業が、
轟き渡る。
マルート(Marut)よ、
手に入れることがいかに困難であれ、
獲得しがたいものを、
私たちに授け給え。
9 いにしえのダディヤンチ(Dadhyac)も、
アンギラス(Aṅgiras)も、
プリヤメーダ(Priyamedha)も、
カンヴァ(Kaṇva)も、アトリ(Atri)も、
マヌ(Manu)も、私の出生を知っていた。
然り、古代の日々の者たちも、
マヌも知っていたのだ。
彼らの長き血脈は神々へと伸び、
私たちの出生の繋がりは
彼らとともに存在する。
彼らの高貴なる領域に向かい、
私は歌をもってひれ伏す。
インドラへ、アグニへ、
歌をもってひれ伏すのだ。
10 招集する祭司が祝福せんことを。
捧げ物をする者たちが
選りすぐりの品をもたらさんことを。
友なるブリハスパティ(Bṛhaspati)は、
幾多の優れし力を持つ
牡牛たちとともに祭祀を行う。
今、私たちの耳は、
遠くで響く搾り石の音を捉える。
強大なる御方は、
みずから水を勝ち取った。
強大なる御方は、
数々の安息の地を勝ち取ったのだ。
11 天を住処とする、
十と一(11)の神々よ。
地を住処とする、
十と一(11)の神々よ。
威力をもって水の中に住まう、
十と一(11)の神々よ。
これらの神々よ、
歓びをもって、
この祭祀を受け入れ給え。
解説
『リグ・ヴェーダ』に登場する主立った神々と、太古から続く人類の聖なる系譜を一堂に会させ、全宇宙規模の調和と加護を祈願する、壮大で重厚な構成の讃歌です。
アグニ、インドラ、ヴァーユから、ミトラ、ヴァルナ、アシュヴィン双神、さらには古代の伝説的聖者たちの系譜までが総動員され、天・地・水の世界に満ちる神々の恩寵を総ざらいする圧巻の構成です。
* 1–5節:視覚を超えた神域の知覚と、アシュヴィン双神の黄金の戦車
1〜2節では、単なる思考や肉眼ではなく「ソーマが授ける覚醒した目(with the eyes that Soma gives)」によって、天上の不変の真実(黄金の御方)を捉えるという、神秘的な認識が語られます。3〜5節では、朝の光とともに天空を疾走するアシュヴィン双神の姿が描かれ、その黄金の戦車が撒き散らす雫と、途絶えることのない人間側の捧げ物とが、美しい循環を形作っています。
* 6–9節:時代を超えて古びぬ業と、古代聖者たちの血脈
8節の祈りが極めて力強く響きます。「汝らの雄々しき業が古び去ることがなく、眩い栄光が衰えることがないように」と願い、時代ごとに新しく生み出される神の奇跡を求めます。9節では、伝説的な古代の聖者たち(マヌやアンギラスなど)の長き系譜と自分自身が固く繋がっているという誇りが語られ、自らの言葉の根底にある伝統の重みを証明しています。
* 10–11節:天・地・水を満たす三領域の「三十三神」
10節で響き渡る「遠くの搾り石の音」は、祭壇の興奮が最高潮に達した合図です。そして11節、天に11、地に11、水(中空)に11、計33の全神族(ヴェーダにおける基本神数)を呼び起こし、宇宙の全方位から完璧な祝福を導き入れる圧倒的な結びで幕を閉じます。
8節の「神々の雄々しき業や眩い栄光が古び去ることなく、時代ごとに新しく轟き渡る」というプロット。そして9節の「太古の偉大な先祖たちと自分の魂は深く繋がっており、その誇りを胸に歌を紡ぐ」という姿勢……。
古典や歴史の膨大な伝統の重みを受け止めながら、全宇宙の三十三神(天・地・水)を総動員して、まさに壮大なオーケストラのフィナーレのような圧巻の読み応えです。




