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引き籠もりニート自室ダンジョンで最強になる~俺だけ最強の装備やアイテムで世界最強に!?~  作者: 仮実谷 望


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第三十二話 熱血少女の朝は早い、そして鋭い

【佐藤家のマンション:早朝】


「佐藤さん! おはようございます! 修行の時間です!」


朝の六時。オートロック越しに響く凛の凛とした声に、蓮は布団の中で枕を被った。 ここ数日、凛は毎日欠かさずマンションに現れる。ロビーのソファで「正座」して待つ彼女の姿は、住民たちの間で「あの子、もしかして佐藤さんの婚約者?」という最悪な噂を呼び始めていた。


「……蓮、起きて。管理組合から『お宅の訪問者(道着姿)が威圧感ありすぎて、他の住民がロビーを通れない』って苦情メールが来てるわよ」 モニターを見守っていたアキラが、蓮をベッドから蹴り落とす。


「……分かったよ、行けばいいんだろ……」


蓮は重い腰を上げ、あえて「ヨレヨレのジャージ」と「初心者用の安物ナイフ(Dカード特典のプラスチック製)」を装備して、玄関へと向かった。


【ダンジョン:地下二階】


「佐藤さん! 今日は私が前衛を努めます。師――いえ、佐藤さんは後ろで私の『型』を見ていてください!」


訪れたのは、一般公開されている練習用ダンジョン。 凛の動きは、以前に比べて格段に鋭くなっていた。迷いのない踏み込み、無駄のない重心移動。


「ハッ!!」


凛が正拳突きを放つと、前方の『アーマー・ベア(D級)』が、その衝撃波だけで数メートル吹き飛んだ。武器を使わず、ただの拳で硬質の毛皮を貫くその威力に、蓮は素直に驚く。


(……おい、アキラ。あいつ、前より三倍くらい強くなってないか? 才能の塊かよ) (玄武でスキャンしたけど、彼女、あんたの『ゴミ掃除』の時の動きを勝手に武術として解釈して取り入れてるわね。……独学で「縮地」もどきを習得し始めてるわよ。まさに戦闘の天才ね)


蓮は後ろで「うわー、すごいですねー(棒)」と適当な拍手を送りながら、自分にヘイトが来ないよう慎重に歩き回る。


【予期せぬ強敵と「本物の」武】


だが、奥へ進むと、本来そこにはいないはずの『デス・カマキリ(C級上位)』が迷い込んでいた。 素早い鎌の連撃。凛はそれを紙一重でかわすが、相手のスピードに徐々に押され始める。


「……まだ、届かない……! もっと、師匠のように『無』にならないと……!」


凛は窮地を、修行のチャンスだと捉えて無理に踏み込もうとする。だが、カマキリの鎌が彼女の防御を抜けて首筋へと迫った。


(……チッ、危ねぇな!)


蓮はポケットから、今日のために持ってきた『百均のハンディ扇風機』を取り出した。 《Reality Patch:【大気圧操作・真空波バキューム・ファン】》


蓮は転んだフリをしながら、扇風機のスイッチを入れた。 「わあぁぁっ! 滑ったぁぁ!」


ヒュン!!


扇風機から放たれた目に見えない「真空の刃」が、カマキリの鎌を根元から精密に切断した。さらに気圧の変動でカマキリのバランスが崩れ、そこに凛の渾身の回し蹴りが炸裂した。


バキィィィィン!!


カマキリは壁にめり込み、そのまま魔石へと還った。


【勘違いの加速】


「……勝った。……今の、私の力……?」


凛は自分の拳を見つめ、驚きに目を見開く。彼女の目には、蓮が転んだことで「偶然」カマキリが隙を見せたようにしか見えていなかった。


「あー、怖かった。一ノ瀬さんがいてくれて助かりましたよ! 今の蹴り、神がかってましたね!」 蓮は尻餅をついたまま、必死に誤魔化す。


しかし、凛はゆっくりと蓮に歩み寄り、その場で深く、深く頭を下げた。


「……佐藤さん。今、分かりました」


「え、何が?」


「あなたは、私が窮地に陥った瞬間、あえて『転ぶ』ことで私の闘争心を煽り、さらに気圧の変化で敵の動きを誘導してくださいましたね? ……あのような極限状態で、ハンディ扇風機(というお遊びの道具)を使い、私に悟られぬよう援護する……。その慈悲深きご指導、心に刻みました!」


「……え、扇風機はただ暑かったから……」


「明日も、朝六時に伺います!!」


「……アキラ、もうダメだ。この子の脳内ハック、俺たちには不可能だわ」


蓮の平穏な引きこもり生活への道は、凛の「熱すぎる忠誠心」によって、さらに遠のいていくのであった。

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