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サイコフットボール 〜天才サッカー少年の双子は本当のテレパシーが出来て心が読めるサイキッカーだった!〜  作者: イーグル
第6章 高校サッカーへの挑戦

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208/210

インターハイ東京予選準決勝 立見VS西園5

『これは……!? 立見、壁を作りません!』



『完全にガラ空きですよ!? いや、そういえば輝羅君は中学時代にも壁を作らずFKを止めて、カウンターで1点をもぎ取ってましたね……』



『なるほど、まさかその再現を狙っているのでしょうか!?』



 立見が壁を作らない奇妙な光景に、観客や両校の応援団からもどよめきが起こっている。




「あいつ、また此処でやるのか……相当な自信を持ってるんだな」



「全国大会でやって止めてたよね〜。実績無かったら問答無用で壁は立ってそうだよ〜」



 竜斗も影丸も、彼のこういった事を見るのは初めてではない。



 見守る彼らは輝羅が止めてくれるのを願うだけだ。





「(そういえば……中学の全国大会で準決勝の名西寺戦にあれを演ったんだったか)」



 去年の輝羅については調べ、以前にも今のように壁を置かなかった事を岩坂は知っている。



 そこで彼は見事にストップさせていた。



「(高校でも同じように止める気なら、甘くないからな……!)」



 自身が立つゴール前から、岩坂は壁をどける輝羅の姿を睨むように見ていた。




「あのチビガキ、こっちのキックなら空けても入らないって舐めてんのか……!?」



 壁を作らないでゴールが空いている光景に、和泉は立見の小さな守護神が侮辱してると思って睨みつける。



 その表情は怒りに染まっていた。



「和泉さん、冷静になりましょう。此処で乱したら向こうの思う壺ですよ」



 異様な光景を前にしても海斗は冷静さを保ち、頭にきてそうな様子の和泉を落ち着かせる。



 今の状況は誰が見ても、西園がFKを獲得して得点チャンスとなり、立見は自分からゴールの可能性を広げた。



 そのはずだが、キッカーの位置に立つと自分が有利とは海斗には思えない。



「(有利なはずなのに、この空気は何なんだ……?)」



 ゴールを守る輝羅を中心に渦巻く、青白いオーラ。



 ガラ空きなはずのゴールマウスを前にして、海斗の頭は得点を思い描く事が出来ずにいた。



「(いや、飲まれるな! 落ち着け……大丈夫だ)」



 段々と迷いが生じてくれば首を横に振り、己に言い聞かせる。



 迷ったら輝羅に取られてしまうと。



 その場で深呼吸をしてから、海斗は改めてゴールに立つ小さな守護神と向き合う。




「(必死に落ち着こうとしてるけど──心の中が全部見えてるよ)」



 全てが心を読む輝羅の前では筒抜け。



 冷静になろうと自分自身に言い聞かせたり、何処のコースを狙えば反応し難いのか、目の前にいる海斗はセットされたボールの前で考えている。



 考えている事が全て聞かれ、バレている事など夢にも思っていないはず。



「(やっぱり、セットプレーの時は皆あれこれ考えるよね。僕としては止めやすくて助かる)」



 試合が止まらず進んでいる時は、流石に一人一人の心を呑気に読む暇は無いが、こういうセットプレーなら話は別だ。



 どうやってゴールを奪おうか、または守ろうか、大半が考える事は共通している。



 相手の心理状態を全て掌握し、相手の攻撃を確実に止めるのが輝羅だけでなく与一、そして弥一達サイキッカーのやり方。




「(流石に前半、もうそこまで時間は無いしアディショナルタイムも短い。カウンターは無理か)」



 残り時間の計算を終えてから、輝羅はFKを止める事に集中力を高めた。




『壁を作らない立見に対して、西園のキッカーは1年の社海斗が務める!』



『これは逆にどう蹴るか悩みますね……壁を超える必要が無いなら、曲げたり落とす必要もありませんから。互いに心理戦が展開されてそうですよ』



 未だにざわつくスタンドをよそに、海斗は助走の為にボールから離れると、そこからダッシュを開始。



 勢いをつけてから右足を振り抜き、弾丸のような速さで低空飛行のまま、ゴール左下隅に向かう。



 曲げたり落としたりはせず、直線でスピード重視のキックで、GKの苦手とするコースへ飛んでいた。




 バシィンッ



「!?」



 FKを蹴った海斗の目が見開かれる。



 感触は悪くなくて、コースもほぼ完璧なはずだった。



 それを輝羅は低い横っ跳びでシュートコースに飛び込むと、腕を伸ばす事なく正面でボールを掴み取る。



『止めたぁぁ!! 社の弾丸FKを立見GK神明寺がダイビングキャッチ! なんという守護神だ!?』



『相当な勢いがあったはずですが、ファンブルせず完璧にキャッチ出来てますね。これはスーパーセーブ間違いありません!』



 スタンドから驚きの声が飛び交う中、前半終了の笛が鳴らされる。




「……!」



 FKを止められて驚く海斗以上に、岩坂も輝羅のセーブが見えると驚愕してしまう。



 今のキックは自分でも止めるのが難しいと感じ、何故そんな事が出来るんだと。



 彼の心は信じられない気持ちで埋め尽くされていた。



『神明寺が止めた所で前半終了! 立見と西園の準決勝は0ー0と、シュート数では西園が上回った前半でした』



『良い流れの内に得点出来なかったのが後半、響かなければ良いのですが』




「どうなってんだ? 神明寺弥一の息子ってだけで、あそこまでやるもんなのかよ」



 西園のロッカールームで、和泉は椅子に腰掛けて休みながらも、輝羅のセーブが頭に焼き付いて離れない。



 彼が小さな巨人の息子で、天賦の才がある事は確実だろうが、それでも強過ぎる。



「遠めからのシュート、効果無いんじゃないか……?」



「DFの裏に抜けて一対一に持ち込むか、PKぐらい?」



「PKもあいつ11人全部止めてるだろ。何なんだあいつは……!」



 西園イレブン達で輝羅のプレーに驚く者が大半。



 どうやったら彼を中心とする立見の牙城を崩せるのか、皆が頭を悩ませていた。



「落ち着け!」



 そこへ西園の監督から一喝される。



「作戦は変えるな。確かに凄いが、彼とて人間だ。何度も諦めずにシュートを続ければ何処かでボールを零す。折れたら負けだぞ!」



 ミドルやロングシュートは変わらず実行させて、作戦の変更は無い。



 サッカーは何が起こるか分からないので、彼がボールを取れずに弾く可能性はあるだろうと。



「(こっちが押していたはずなのに、こうも皆をFKのセーブ1つで動揺させるか)」



 監督からの一喝があるまで、チーム内を動揺させていた輝羅のプレー。



 同じGKの岩坂は腕を組んで目を閉じる。



「(もしかしたら、PK戦まで行くかもしれないな。そうなったら俺と奴の戦いか……)」



 立見に1点もやるつもりはなく、彼の方も許さないだろう。



 そうなればスコアレスのまま、PK戦へ突入となる。




「望むところだ……!」



 PKストッパーとしても規格外なのは分かっていて、岩坂は目を開くと一番にロッカールームを出ていく。





「あ」



「!」



 通路を岩坂が歩いていると、輝羅もロッカールームから出て来て、顔を合わせる。



 岩坂は一瞬視線を向けたが、すぐに前を向いて歩き出す。



「PK戦になる前、決着つけに来た方が良いよ」



「……何?」



 先程、まさに思っていた岩坂は輝羅の言葉を受けて、隣を歩く彼に目が向いた。




「あんたPK苦手そうで壁をどかす度胸も無さそうだからさ♪」



「!」



 目が合った輝羅は笑顔で挑発のような言葉を言った後、岩坂の足が止まる。



 この時、岩坂の体は小さく震えると同時に額辺りから血管が浮き立つ。



「(小僧……!!)」



 明らかに表情が怒りへと変わり、今にも殴りかかりそうな雰囲気を纏わせ、先を行く輝羅を睨みつける。




「(ちょろい人だねぇ)」



 背中に感じる視線と怒りに、輝羅はニヤリと笑みを浮かべた。



 自分へのライバル心を利用して強く刺激させ、心を揺さぶりにかかる心理戦。



 後半開始前の通路で行われた事は、誰も気付かない……。

輝羅「GKは目立つものじゃない。出番無く試合を終わらせるのが一番……とは程遠いねー」


理勝「思いっきりセンターでスポットライト浴びてんじゃねぇか。目立ちたがりの小僧が」


星夜「どう見ても皆からそう見えてしまうよ」


輝羅「まぁ、それだけ相手が攻め込んできて強いんだよー」


影二「……確かに西園は強い……次回は後半戦……!」


輝羅「崩すなら守護神からってね?」

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