インターハイ東京予選準決勝 立見VS西園4
『前半も残り少なくなり、西園優勢で試合が進むもスコアは0ー0! 前半が終わる前に得点は動くのか!?』
『西園はシュートが出来てますからね。立見は輝羅君が何度もセーブしてるおかげで失点してませんが、何処まで持つのか……』
バシィンッ
前半の途中からシュートを浴び続ける立見。
海斗のパスから西園の選手達が狙うも、輝羅は枠内に飛んで来る球を全て掴み取っていた。
「大丈夫よー! このまま行こうー!」
今の状況は不利なんかじゃないと主張しているのか、輝羅は問題無いと味方に声を掛ける。
「何なんだあいつ……!?」
中盤に下がった和泉もシュートを狙いに蹴ったが、皆と同じようにキャッチされていた。
先程から何本も遠めから撃ち続けても、繰り返すように何度も防がれている事に、輝羅の存在が不気味に思えてしまう。
体の小さいGKが、何故あそこまで止められるんだと。
「(石立中の時とか与一に結構邪魔されて、今回は彼がいない分DFはある程度薄いかなと感じたけど……全然そんな事ないな)」
以前と違って与一がDFに入っていないので、今日こそ1点を取れるなと海斗は思っていた。
だが、今日は輝羅が大きく立ち塞がって隙は見えない。
「(それでもゴールネット揺らさないと、何も進めないから叩き割るしかないけど!)」
相手がどれだけ鉄壁でも、此処で引いてしまっては中学時代から何も成長していないとなってしまう。
彼からゴールを決めて自分の成長を証明する為に、海斗は小さな鉄壁のGKから点を取ろうと走り出す。
「オラァァ!」
「ぐぅっ!?」
立見ゴール前へ上がったハイボールに対して、理勝は和泉との空中戦で激しく競り合う。
フィジカルの差で理勝が上回り、相手を吹き飛ばせば頭でクリアしていた。
「(来た……!)」
零れ球を松石が拾おうとしてるが、その前に影二はボールを取って西園に追撃をさせない。
『牙崎のクリアから闇坂、ボールをキープ! 此処でも立見が守り切った!』
『センターに強力なフィジカルを持つ牙崎君と、セカンドをよく拾う闇坂君。彼らがこのチームの守備を支えていますね』
「牙崎先輩、相変わらず競り負けないなぁ〜」
「ホント、あれはすげぇ鍛えられてるよ」
スタンドで応援する竜斗、影丸の2人は理勝が何時の間にか守備の要になってると、揃って感じていた。
ゴール前への侵入を頑なに拒み続ける姿は番人のようで、彼らの知る与一とは違うタイプのDFだ。
「そこへ混じってヤミーの奴が活躍するってのは、嬉しいもんだな」
「確かに、セカンドへ凄い追いついてるよね〜。もう結構拾ってる気がするしさ」
派手なプレーはしていなくて目立たないが、影二は選手同士の競り合いで弾かれたボールを多く取っている。
西園に波状攻撃をさせる事なく、攻撃と守備の繋ぎ役として密かに活躍をしていた。
「お、取った! ヤミー良いぞー!」
「反撃行こうー!」
竜斗と影丸が会話をしている間、再び影二が転がる球を拾って立見は西園ゴールを目指す。
『闇坂から右の風野へ! 立見はサイド攻撃で崩しに行く!』
パスを受けた風野は右サイドからのクロスを狙う。
西園ゴール前には3トップが入って、それぞれがパスを要求してくる。
「マーク外すな!」
無論、此処でフリーにさせる事なく、立見のFW3人にはマークがついていた。
岩坂の指示で頑なに張り付き、離れないように務める。
「!」
この時、風野の視界に1人の人物が見えて、右足のクロスを放り込む。
『上がっていた牙崎! フリーだ!』
大胆にも理勝が攻撃参加で上がっていた。
ゴール前へ迫る姿を風野が見つけたので、マークが来てない内に彼へ託す。
「行けー! キャノンシュートー!」
理勝の破壊力あるキックを期待してか、輝羅が叫ぶと応えるように、右足のインステップキックによってシュートは放たれる。
パワーの籠もったボールが放たれた時──。
ドガッ
「がっ!」
「!」
躊躇う事なく理勝の放った剛球に飛び込み、海斗がシュートブロックで受け止める。
ボールを腹で受けた海斗の顔が苦悶で歪む。
『社が体を張って止めたぁ! 零れ球を松石が拾う!』
「カウンター!!」
理勝が上がっている今こそチャンスだと、岩坂は速攻を促す。
「戻れぇ! ディレイ!!」
高良川の守れと叫ぶ声が轟きながらも、西園の選手達が繋いで立見ゴールへ近づく。
『松石から田中! 和泉に繋がる!』
中盤のショートパスから、ゴール前に走る和泉に渡った。
「(止めないと……!)」
影二が戻るとボールを持つ和泉へ近づき、右足で足元の球を狙う。
「うわっ!?」
だが、それは和泉の右足に当たってしまい、フィールドに転倒する。
これを見た主審は笛を吹くと、プレーを止めた。
『立見、闇坂のファール! 西園、ゴール前でFKのチャンスを得ました!』
『止めなければ一対一で危ない所でしたが、立見にとっては嫌な位置からのセットプレーですね』
影二の反則を取ると、カードまでは出ないが注意はされる。
ゴール左寄りで距離は25m前後と、西園には決める為に良い位置でのFKを得られた。
「げほっ! げほっ! ってぇ……」
「おい海斗、大丈夫か? 相当なエグいシュートを腹に受けてただろ」
「あ、大丈夫です……腹筋を鍛えてなかったら悶絶したままだったかもしれませんね……」
和泉から心配されると、海斗は続行の意思を見せてFKのキッカーの位置に立つ。
体を鍛え上げた成果が此処で発揮され、理勝のパワーシュートに耐え切ってみせた。
「すみません……悪い位置でセットプレー与えて……」
「PKじゃなければ良いさ。抜かれてたら一対一だったしな」
「それより、このFKを止める事だけを考えよう」
影二は相手にチャンスを与えてしまった事を気にして、皆に申し訳無さそうに謝っている。
頭を下げる彼を柿田が励ました後、高良川は目の前のセットプレーと向き合う。
これを止めなければ先制されてしまうので、壁を作ろうと立見の選手達は動き出した。
「邪魔邪魔ー! そこ立たないで皆ー!」
「は?」
「え?」
すると輝羅は自分の前に立つ選手達に向かって、壁をどけるような仕草を見せる。
小さな守護神から言われた言葉に、頭の理解が追いつかない。
「壁0枚の方が良いからー! 他は周囲のマークに集中してー!」
「はぁ!?」
壁は不要と言い出す輝羅に、大半の立見選手達が駄目だろうと詰め寄る。
「ちょっと待って」
そこへ高良川が間に割って入ると、選手達を制して輝羅の前に立つ。
「止められる自信があって言ってるのかな? 目立ちたい為なら許可しないよ」
「勿論、確実に止める為ですって。僕からすれば壁立たれるとやり難いですからー」
FKは一般的にGKの前に壁が立って、ゴールを狙う球をブロックするが輝羅には邪魔な為、0枚の選択をしていた。
「じゃあ、それで行こう。君の力を信じるよ」
「ありがとうごさいますー♪」
高良川が真っ直ぐ輝羅の目を見続けた後、彼を信じて壁にどくように言う。
前半40分が迫ろうとしていた時、立見がFKのピンチを迎える中、輝羅は中学に続いて高校でも大胆な策に出る。
輝羅「まともにシュート受けたけど、本当に平気ー? 病院行きなよー」
海斗「だから鍛え上げて耐えたから平気だって言ったろ」
輝羅「どんだけ鍛えたのさぁ? 本当、中学時代と全然違うねぇ〜」
海斗「全然違うって……輝羅から見て当時の俺はどんなだよ?」
輝羅「ナンパ男(即答)」
海斗「それは……否定出来ねぇ……!」
影二「……試合前に神奈さんへ言い寄ってたからね……次回、輝羅の壁なしFKの行方は……?」
輝羅「鍛えても止めるよー」




