インターハイ東京予選準決勝 立見VS西園
立見の2軍で編成したチームで挑む、インターハイの東京予選。
大会は東京代表の決まる準決勝を迎えて、この試合で勝利したチームが全国出場となる。
そのせいか、準決勝の会場は開始前から異様な雰囲気に包まれていた。
「いよいよ……高校の全国大会出場が決まるのか」
「何、竜斗? こっちが戦う訳じゃないのに緊張してるような顔しちゃってさ〜」
スタンドには観客の他に両校の応援団が居て、その中に大勢の部員達に混じり、竜斗と影丸の姿も見える。
彼らも応援と2軍や西園のサッカーを参考にしようと、見に来ていた。
「そりゃあ、まぁ……俺らと同じ1年の奴らが挑むし。あいつら頑張って勝ってほしいなって」
「勝つでしょ〜。逆に負ける所が想像出来ないぐらいだって〜」
準決勝の試合がどうなるのか、落ち着かない様子の竜斗に対して影丸の方はマイペースで、欠伸までする程に落ち着いている。
「つか、海斗の奴が西園に居るとか聞いてなかったな……」
「仲の良いマネージャーの子が行くって聞いたから、それで彼も入学したそうだよ〜」
「彼女にくっついて行ったのかよ」
影丸は海斗の事情を知っているらしく、彼と付き合うマネージャーの八乙女美怜が西園に行くとなって、それで道を決めたという。
「海斗が加わったから、総合力の高い西園がまた強くなったし。どうなっちゃうかな〜」
「どうなるも何も、立見には勝ってもらうしかねぇだろ」
2人が話している間、スタジアムの外では立見選手を乗せたバスが到着する。
「準決勝となると、大会側も良いスタジアムを用意してくれるもんだねー」
スタジアムに到着した立見は、ウォーミングアップの為にフィールドへ出てきて、各自が軽く体を動かし始める。
輝羅の方はインターハイを戦った予選で、最も大きな会場を眺めていた。
「そりゃあ全国出場の懸かる準決勝だ。これくらいの会場でやる方が盛り上がるだろ?」
そこに背後から聞き覚えのある男子の声が耳に入り、輝羅は振り向く。
「当たり前のように双子揃っていたのが、お前1人ってのは新鮮に見えるもんだな輝羅?」
「やあ海斗。元気そうだね〜」
去年のイギリス遠征以来となる海斗との再会。
久々に見れば、以前よりも逞しくなっているように見えた。
「ちょっと筋肉量が増えた〜?」
「イギリス遠征の時に相手とのフィジカル差を思い知って以来、筋トレを増やしてるんだよ。ああいう連中に競り負けない為にな」
「へー、今日の試合じゃ前より手強い海斗になっちゃうんだねー」
海外での試合を経験して、海斗は自分のフィジカルが弱かった事を痛感したらしく、あれから弱点を埋める為に頑張ってるようだ。
「お前の方は大丈夫か? 与一がいない上に学校での毎日の授業に苦労してるって聞いたぞ」
「何処から聞いたのさ〜」
勉強に苦しめられている事が、なぜか他校の海斗に知られて少し恥ずかしくなってくる。
「影丸の奴が色々と話してくれたもんでね」
「も〜、呑気に寝てばっかりかと思ったら……影ちゃんのお喋りめ〜」
スタンドに居るであろう、影丸から立見での学校事情を言われて、意外とお喋りな所があるのを初めて知った。
迂闊に彼へ内緒話をするのは、控えた方が良いかもしれない。
「──このインターハイだけじゃなく、プレミアリーグも毎試合出てるそうじゃないか」
「メンバー選ばれたからねー。それも聞いたの?」
「いや、立見について調べれば自然と分かる事だからさ」
輝羅が両方の大会に出て活躍しているのは、高校サッカー界に広まりつつあって、大抵が知る事実だ。
神明寺の名もある為、早めに噂されたのだろう。
「そこまでは俺も行ってないのに、早過ぎだろ」
西園高校はプリンスリーグの方を戦い、海斗は輝羅と違ってインターハイ予選の試合のみ。
同年代で既に高校最高峰のリーグ戦へ出る、彼を心底凄いと思った。
「行くだけじゃ終わんないよ。優勝も狙ってるから、完封の全勝を目指さないとね」
プレミアリーグの首位は東京アウラが独走して、2位に鹿島ブレイバーズが続く現状。
優勝を目指すなら、此処から立見は1試合も落とせない。
「随分と強気な事を言いまくるな。流石はビッグマウスでお馴染みの神明寺だ」
輝羅の背後から大きな影が現れ、振り向けば立っているのは、西園の守護神でキャプテンでもある岩坂弘樹。
190cmを超える長身が、同じポジションの輝羅を見下ろす。
「岩坂さん初めまして。今日はよろしくお願いしまーす♪」
3年の先輩である岩坂に、輝羅は頭を下げて明るく挨拶した。
「神明寺輝羅、お前の事は知ってるぞ。去年の中学で派手に活躍してたってな」
「あ、僕の事って高校の皆さんにも広まってるんですねー。名声が高くなって浮かれちゃいそうかも♪」
高校サッカー界にも自分の名が広まっている事に、輝羅は満面の笑みを浮かべ、その顔は高校生には見えない。
「お前、自分の活躍に最強と思ってるだろ」
岩坂の顔は険しく、同じポジションの輝羅をライバル視している。
それは彼の心にも強く出ていた。
「何時までも自分が最強、No.1だと思ってるなら教えてやるよ。更に上の世界をな」
言い放った後、岩坂はアップに戻っていく。
「結構ギラついた人だなぁ〜」
「岩坂先輩、お前の活躍を聞いて対抗意識を持ってるんだよ。あれは何時もより張り切ってる」
「嫌われるような事をしたかと思ったよ〜。睨まれてたし〜」
海斗から岩坂の話を聞いた後、輝羅は去っていく彼の広い背中に目を向ける。
西園を調べてる中で、岩坂が関東No.1キーパーというのを知って、彼は最強の座に拘っているのが話して分かった。
「じゃあ、俺もそろそろ……代表のよしみでも手加減しないぞ」
「分かってるって。また後でねー♪」
限られたアップの時間で、何時までも喋ってる場合ではない。
輝羅と海斗は別れて、準決勝に向けての準備を進める。
『インターハイ東京予選の準決勝。この試合で2つある東京代表の内1つが確定します。それを争うのは立見高校と西園高校!』
『どちらも相手を寄せ付けずに勝ち続け、それも両者無失点ですからね。今日は攻撃陣のゴールが特に大事となりそうですよ』
スタンドからの歓声は本戦を思わせるような盛り上がりで、両校の応援合戦が始まっている。
立見、西園の2校が歓声を浴びながら縦の一列となって、フィールドへ入場。
「今日の試合、相手はガンガン前に出て来ますよー」
円陣を組む時に輝羅は西園が攻撃的に来ると、皆へ伝えていた。
「何時も思うが……何を思ってそう言ってるんだ?」
「勘です♪」
柿田から根拠を聞かれれば、心を読んだと言わずに勘だと言い切る。
「まぁ、その勘に助けられてるからね。この試合でも当たってる事を願うよ」
輝羅が人の心を読める事など露知らず、高良川は恒例の儀式を行う。
「立見GO!!」
「「イェー!!」」
掛け声の後で立見の円陣は解かれ、各自がポジションへ向かう。
「さぁさぁ、立ち上がり今日も集中ねー!」
立見のゴールマウスから皆へ声を掛ける中、輝羅の考えている事は1つ。
立ち塞がる西園を踏み台にして次へ進む。
輝羅「2人も挨拶すれば良かったのにー」
星夜「流石に大事な準決勝だから集中してて、そんな暇は無かったよ」
影二「……それどころじゃない……」
輝羅「というか僕、喧嘩売られたなぁ〜」
星夜「同じGKだから、その人が輝羅の活躍を強く意識したんだろうね」
影二「次回……守護神同士の対決でもある準決勝で攻防戦……!」
輝羅「とりあえず点はやれないよねー」




