全国出場の前に立ち塞がる相手
「今日も完封で気分最高っと〜♪」
プレミアリーグの試合が、準々決勝の音村戦が行われた翌日に始まって、輝羅は昨日に続いて連戦となる。
今日の相手となったアニモ札幌。
相手の攻撃陣を一夜を中心とした守備陣で跳ね返し、水月達が攻め上がって3得点。
輝羅もGKとしての役目を務めて、完封に貢献した。
「インターハイ予選戦った後にリーグ戦って、2日連続は大変だろ」
「確かによくやるよなぁ。俺とか無理よ?」
水月と一夜は揃って後輩の連日出場を前に、体を崩さないかと心配になってくる。
数日空くならともかく、試合が行われた翌日の試合は相当な負担のはずだが、輝羅に疲れた様子は特に感じられない。
「次はインターハイ準決勝で、東京代表の懸かった試合ですから。良い弾みになって良かったです♪」
「準決勝──確か西園高校だったな。今年は西久保寺が調子良さそうと聞いたけど、そっちが来たか」
「え、知ってます?」
2軍が次に大一番を控えた試合で、その事を言うと水月は彼らの事を知っているように見えた。
「そりゃ知ってるさ。西園って言えば、去年にうちと東京代表として選手権にも出てたし。東京じゃ有名よ?」
応えたのは輝羅の後ろに居る一夜の方で、同じ東京予選を戦う彼らの間では知れ渡っている。
「FWの和泉正、DFの大野隆太、GKの岩坂弘樹。この辺りが要となる奴らでな」
「特に岩坂が関東のNo.1GKって言われるぐらい優秀で、こいつ1年の頃からスタメンで守ってるんだ」
「へ〜、今の僕みたいですね?」
要注意の選手について、水月と一夜から教えてもらうと、岩坂というGKが難関らしい。
同じポジションなので、輝羅としては彼に興味が沸いてくる。
「兄弟とは体格が全然違うけどな。あっち190cmを超えてて、リーチ長いしさ」
「あ〜、イングランドの選手ぐらいありそうですね〜」
この時点で輝羅とは40cm程の差があると分かり、相当な長身を思わせた。
「インターハイは俺達、登録されてないから輝羅達に託すしかない。頼んだぞ」
「東京王者も取りますから、任せてくださいって♪」
「相変わらず憎らしいぐらいに強気だな」
インターハイには水月や一夜達、1軍は今年プレミアリーグに専念という理由で、そちらへの出場は無い。
西園高校について知れた輝羅は、リーグ戦を戦った後に1軍からエールを貰い、全国出場の懸かった試合に備える。
立見3ー0アニモ札幌
藤村
滝口
沢田
マン・オブ・ザ・マッチ
滝口水月
☆
「西園高校は此処まで無失点で勝ち上がり、今年は攻撃以上に守備が厚くなっています」
部室棟で2軍の部員達が集まり、理彩は準決勝の対戦校について話す。
「3ー5ー2のシステムですが、時には両サイドが下がって5バック。攻撃では4トップのような形で、状況に応じて対応します」
「確かに、向こうのSHは結構サイドを中心に走り回っていたな」
マネージャーの話を聞いて、高良川が相手の両サイドを注意するべきと話す一方、輝羅は1軍から聞いた話を思い返す。
「(FWの和泉、DFの大野、GKの岩坂。厄介な選手は中央に集まってるなぁ)
西園を支える3年の選手達で、タブレット画面に表示されている試合を見た限り、いずれも中央のポジションだ。
「あれ?」
この時、何気なく見ていた西園と西久保寺の試合の方で、輝羅は1人の選手に気付く。
「海斗いるじゃん」
画面の中でフィールドを駆け回り、相手のドリブルを2人がかりで止める時に、見覚えある顔が見えた。
中学時代に石立中学で戦い、日本代表として共にイギリス遠征へ行った事もある。
天才ゲームメーカーと言われる社海斗。
彼は1年ながら西園の司令塔として出場すると、西久保寺との試合で勝利に貢献していた。
「彼の力なら名門校でも、1年からレギュラーになってて不思議じゃないね」
「……久しぶりに見る……」
影二と星夜も敵、味方として戦った経験を持つので、彼の事は覚えている。
「ああ、1年の3人は彼とチームメイトだった事もあったね。彼が入って中盤も力が増してるよ」
「総合力は予選で戦ってきた相手の中で、最も高いです。無論、我々立見のチームも劣ってはいないですが」
西園へ海斗が入った事によって、層が厚くなったのは高良川、理彩も同意見。
「(FW、MF、DF、そしてGK。西園は縦に1本の強力なラインを作ったって事か)」
両サイドの豊富な運動量を持つ選手に加え、中央に優れた選手が集結するチーム。
これまでと違って今回は手を焼く事になりそうだと、輝羅から見れば2軍の部員達の大半が考えている。
「──簡単じゃねぇって事だ。全国に出るっていうのは」
そこへ静かに生徒達を見守っていた間宮が、静かに口を開く。
「決勝よりも今回の準決勝な方が大一番になっちまうが、関係無い。お前らの力なら勝てる」
向き合う部員達に向かって相手が西園でも負けないと、力強い言葉を送った。
輝羅が心を覗き込んでも監督の言葉に偽りは無く、本当に教え子の勝利を信じている。
「準決勝まで時間が無い。前日になるまで集中してやってくぞ」
「「はい!」」
間宮の言葉を受けた部員達は、気持ちを新たに練習へ向かう。
練習メニューは主にチームの全体練習で、フィールドを使って行われる。
「っせい!」
バチッ
「てぇっ!」
ビシッ
飛んでくる数々のシュートを輝羅はキャッチせず弾き続け、上手くゴールラインの外に出して、コーナーへ逃れる練習を重ねていた。
「(こいつでどうだ!!)」
ゴール前での競り合いから零れたボールに向かって、理勝が右足のダイレクトボレーを狙う。
バチィッ
ゴール左隅へ飛ぶシュートに、輝羅は両掌に当てて弾き出す。
「ふ〜、凄いの蹴って来ますね牙崎先輩ー♪」
「ちっ……叩き割る気で蹴ったってのに」
パワーの宿った剛球を防いだ後、輝羅が陽気な笑顔を向けると、理勝の方は悔しさの滲む顔をしていた。
準決勝の西園戦に向けて、立見サッカー部は練習を重ね続ける。
「輝羅君、お疲れ様ー」
「六峰先輩、待たせてすみませんー!」
互いの練習が終わり、輝羅は正門に急ぐと千里の待っている姿が見えた。
「ううん、そんな待ってないし大事な準決勝に備えてだもんね」
「六峰先輩の方も準決勝進出でしょー?」
千里の女子サッカー部も、男子と同じく準決勝まで勝ち上がっている。
立見のサッカー部が男女揃って、インターハイ出場は実現間近だ。
「ま、そうだけど息抜きしないと持たないからねぇ」
すると千里は輝羅と目が合って、軽く微笑んでいた。
「ちょっと付き合わない?」
「え?」
突然の誘いに輝羅は戸惑いながらも、断る事はせず首を縦に振る。
輝羅「試合じゃ結構キャッチしてるけど、こうしてディフレクティング(手のひらの硬い部分で弾く技術)の練習もやってるんだよねー」
星夜「何でもバシバシとキャッチ出来る訳じゃないからね」
輝羅「GKに取りづらい球とか飛んでくるから、一旦外に弾き出して流れを断ち切るのも大事だよー」
影二「ちゃんと練習した所で次回……六峰先輩と輝羅がデート再び……!?」
輝羅「まさかの放課後デート、なのかなぁ〜?」




