相手には恐怖の軍団
2軍の立見高校は2次トーナメントに進出し、1回戦の時を迎える。
相手は港坂高校で、ノーシードながら此処まで勝ち上がってきた、東京予選のダークホースと言える相手。
「支部予選から此処まで得点27、失点2と抜群の成績で勝ち上がった注目の新鋭校です」
試合前のロッカールームでミーティングを立見は行い、2年マネージャーの理彩は対戦校の情報を話す。
「支部予選からだとすれば、うちより数多く試合をこなしてるよね……?」
「そうなるね……うん……」
ミーティングの陰で、輝羅は密かに話すと影二も彼と会話を交わしていた。
「確かに好成績だが、関係無ぇ」
2人が話していると監督の間宮が口を開く。
「それぐらいの事をやってくんのは、上にいけば行く程ゴロゴロ出て来る。そういうチームを越えてかねぇと全国には届かないからな」
港坂高校の好成績は全く珍しくないと言い切り、監督の言葉に皆が真剣な表情で聞いていた。
「お前らは越えられるチームだ。相手の成績なんか関係なく、自分達のサッカーをフィールドで表現して来い」
「「はい!」」
間宮の言葉を受けた選手達は、ロッカールームを出て今日の試合が行われるフィールドで向かう。
港坂高校は他の名門校と比べ、創部からの歴史が浅い。
ただ、確実に地力をつけて強豪を脅かす程までとなり、巷では立見に続いて伝説になるかもしれないと、噂する者も居るぐらいだ。
彼ら自身も無論、ノーシードだろうが出るからには頂点を狙う。
「(何でだ……!)」
FWでキャプテンの東沢紅吉は今、激しく苦悩していた。
「左気にしないー! 右行ってー!」
片方のサイドに囮を仕掛け、逆サイドからの攻撃で迫れば見抜かれてしまう。
ならばと、予定には無い囮の方を使おうとパスを出すが、相手CBに猛然と迫られる。
先程から読まれてばかりで、攻撃が全く繋がらない。
「(何で通らないんだよ、くそ!)」
此処まで対戦校から多くの得点を決めて、自分達の力は都内のレベルを超えていると、自信を持って臨んだ。
それが今日、同じ東京の高校を相手に攻撃を跳ね返され続けている。
電光掲示板のに目を向ければ、現状のスコアが表示されていた。
5ー0
港坂が1点も取れていないのに対して、立見は既に5得点と大きく突き放す。
「(立見が東京屈指の強豪校とはいえ、こんなにも差があるのか……)」
港坂の監督は打開策を頭の中で考えるも、有効な作戦は浮かんでこない。
疲労した選手を交代させ、流れが変わるのを期待するしかなかった。
それでも立見の攻撃は止まらない。
「良いね古神」
「ああ、試合を重ねるごとに調子を上げているよな」
立見ベンチでは、翔馬と川田のコーチ2人が星夜のプレーを高く評価。
後半の頭から坂田に代わって出場すると、高良川や柿田と共に3トップで活躍を見せる。
「元々は不安視されてたけど、後ろの守備も良くなってるよ」
「牙崎が物凄い闘志でプレーしてるから、相手は押されてるよな」
フィールドでは、理勝が相手FWとの空中戦に競り勝ち、相手を弾き飛ばす光景があった。
「そこに闇坂がセカンドを高い確率で拾ったり、良いパスを出すから中盤も安定してきてるし」
理勝が弾いた球を影二がキープして、相手の攻撃チャンスを断ち切る。
今日も密かにチームへ貢献し続けていた。
「それにしても……彼の元気は何処から来るんだろうね?」
翔馬が視線を向ける先には、立見ゴール前で味方選手に向かってコーチングを続ける輝羅の姿。
彼に関してはインターハイ予選の戦いだけでなく、1軍でプレミアリーグの試合も行っている。
あまり動かないGKとはいえ、色々と考えたり異なるDFラインと連携しなければならない。
その為、疲労は蓄積していくと思われたが、輝羅は何時もと変わらなかった。
「オラァ!!」
「ぐぅっ!?」
理勝が港坂選手へ激しく詰め寄り、キープしている球を右足で弾く。
セカンドとなって転がると、今度は相手に拾われてロングシュートを放たれる。
「ちっ……!」
後ろを振り返った理勝の目が捉えたのは、ゴール左隅の枠内へ飛ぶボールに輝羅が反応する姿。
サイドステップで動いてからダイブするまでもなく、シュートを真正面でキャッチしていた。
「牙崎先輩! その調子でガンガン行っちゃってー!」
理勝のプレーを褒めた後、輝羅は左足のパントキックで右サイドに送る。
低空飛行のボールが立見の右SH風野に渡ると、右サイドから攻め上がっていく。
「(このカウンター行けそうだね)」
前線の様子を眺めていた輝羅は、追加点が入りそうだと予感が伝わる。
そう思っている間に風野から星夜に繋がると、港坂DFの1人が寄せて来た。
相手が来る事を察知したのか、星夜は前を見据えた状態で右足の踵を使い、お洒落に左へボールを転がす。
中央の柿田にパスが通り、右足のシュートで港坂のゴールネットを大きく揺らしていた。
「ガンガン押していこうー!」
もっと決めて来いと、攻撃的な2軍のチームの背中を押すように輝羅は声を出し続ける。
「(去年と顔ぶれが全く違う上に戦術も異なっているが……強い……! かつての黄金世代のように……!)」
攻守で圧倒されてしまい、港坂の監督は立見の強さを前に全盛期の頃を思い出す。
その時の立見と現在が彼には重なって見えた。
結局、港坂は1点を返すどころか、決定的なチャンスを1つも作れないままタイムアップを迎えてしまう。
「ダークホースって聞いたけど、あんま骨無かったねー」
「こっちが前半でゴールを重ねられたから、それで彼らのリズムが狂ったんだと思うよ」
試合が終わってロッカールームに戻り、輝羅は星夜と話しながら着替えていた。
そして着替え終えると、輝羅はスマホを手に持ってメッセージを1人の人物へ送る。
2次トーナメント1回戦、11ー0で勝ちました♪
今日の圧勝劇を伝えた後、送ったメッセージの返事は1分も経たない内に輝羅のスマホへ届く。
こっちは12ー0! そっちより1点多かったね♪
送り主は千里で、向こうも女子サッカーのインターハイ予選を戦っている。
男子よりも多くの点を取って派手な勝利を飾ったようだ。
「うわぁ〜、六峰先輩強いや……」
輝羅の惚れた女子はダブルハットトリックを達成し、大車輪の活躍を見せていた。
男子、女子の両者が大勝と、男女揃っての全国大会に向けて突き進む。
立見11ー0港坂
柿田2
高良川2
古神1
玉石1
風野1
闇坂1
牙崎1
オウンゴール2
マン・オブ・ザ・マッチ
牙崎理勝
輝羅「女子サッカー部が滅茶苦茶ゴール決めてる事にビックリ〜」
影二「……昨年よりも地力を上げたり、優秀な選手も沢山来て好調みたい……」
星夜「これは男女揃っての全国大会出場、あるね」
輝羅「出場権を絶対手に入れないとー!」
影二「……次回……休む暇なく輝羅はプレミアリーグの戦いへ……!」
輝羅「疲れてないから全然行けるよー♪」




