オオカミさんウサギさんの犬に気付かれる
リアンくんを押し倒す少し前……
意気揚々とリアンくんの家へとやって来た私。通りからも見える大きなホワイトキャッスル的なお宅には向かわずに、以前にんじんケーキを届けたコテージがある美味しそ~な畑の方へと、セレナから買った裏道情報を元に一直線に駆け抜ける。
愛しい野菜達に囲まれた道をスキップしながらルンタッタと通り抜け、その先にある庭の隅にこそっと建てられた、蔦まみれの赴きある離れへと訪れた。
ワンピース、メイク、ヘアOK!いざっ、ピンポーン。
身だしなみを軽くチェックした後に呼び鈴を鳴らすと、程なくして癖毛の黒髪にアーモンド形の瞳をした、中々の男前が現れた。身長は私より頭一つ分高く見た目的に10代後半といったところ。
もしかしたら、彼が電話に出たピーター(仮)では?
「こんにちは。先触れも出さずにごめんなさい。先程、連絡を差し上げたミルキと言います。恋人のリアンくんが風邪を引いてると聞いたので、心配でお見舞いに来ちゃいました」
「恋人?」
そう訝しげに眉を寄せた犬人少年ピーター(仮)は、私をギラギラとした鋭い眼光で一睨み。もしや…私の狼人としての正体が、高級香水だけでは隠し切れなかったというの…?
睨まれたまま暫し様子を伺う。すると何故かおもむろに握られる私の両手……うん?
「そうか、リアンってば、俺の知らない間にこんな魅力的な女性をゲットしてたなんて、水臭いな~。ミルキさん、俺が電話で話したリアンの幼馴染で従者のピーターだ。どうぞよろしく!歳もそんなに変わらないだろうし、敬語はいらないぜ」
予期せぬリアンくん側の人からの受け入れ歓待に、思わずポカンとする。だけど、これは思わぬ僥倖。利用しない手はないわ!
「うん。こちらこそ、リアンくん共々よろしくね」
「ああ!もちろん!」
固く握手しあう私達。しめしめ。今後、彼にはリアンくんを打ち落とす援護射手として、馬車馬のように、いや馬車犬?う~んソリ犬的な?・・・まあ、そんな感じできりきり働いてもらお~と!
「にしても兎人の彼女が狼人だとは、驚いたなぁ」
…………。
「は?」
「え?」
え、今こいつなんて言ったの?
ピーターの思わぬ味方撃ちに着弾して、一瞬思考がストップがしたわ。しかしコンマ数秒で立ち直り、表面上は動揺を見せないようにしつつ頭の中で瞬時に考える。
「…ずっと玄関で立ち話もあれなので、客室に案内して?」
「分かった。着いてきてくれ」
くるりと背中を向けて歩き出すピーターの後ろを静々と女の子らしく着いていきながら、私の脳内会議ではこの犬を殺るか殺さないかの、実に物騒な議題が挙がっていた。罪状―!私が狼人であると気付き、今後リアンくんにチクる可能性がある。判決―!有罪☆
「うん。犬なら躾はしっかりしないとね」
「え、何か言った?」
「ううん」
本当、邪魔な犬っころ。
「何でもないよ」
monologue:ピーター
(無いはずのしっぽがぶわっと膨らんだ…リアンの風邪が移ったか?)
不思議な寒気を感じるも、駄犬は気付かない→つづく




