オオカミさんウサギさんを押し倒す
リアンきゅん~熱で熟れたトマトのような真っ赤なほっぺ。甘い人参色の髪が汗で首筋や額にへばりついている様子に堪らなくそそられるわ。
ベットで気怠げに上半身をクッションに預けたリアンくんを目にして、思わず舌舐めずりをしてしまう。そのまま約束通りご褒美をあげようとスキップで近づいた。
「リ・ア・ンく~ん」
「ひぃ!」
すると、なぜか青褪めながらベットの角に逃げ込まれてしまう。あり?
「帰ってください…」
ぷるぷると震えるリアンくん。でも直ぐにそんな自分に気付いて、キッとこちらを睨み付けてくるのが可愛いね。
「帰らないよ。だって私はリアンくんの恋人だから」
「付き合うなんて…言ってません」
無垢な笑顔で飄々と嘘を吐く。嘘から出た誠というし、何でも言ったもん勝ちだと思うの。自己主張って大事よね!でも反論してきたわ。さて、どうしようかな―――
「え、そうなのかよっ?!」
リアンくんの反応に、今まで静観していたピーターが私の前に立ちはだかった。邪魔よ!アホ犬!進路を妨げた目と鼻の先にご立派な駄犬の胸筋がある。しかし、にも関わらずやっぱり狼の食指は1mmも反応していない。
つまり私にとって価値ある"筋肉の君"が、この世界上でリアンくんという唯一にして無二の存在だからということ!
「グルルルル……!」
私が心の中でちょっぴり感動している間も、ピーターはこっちを睨みながら喉を鳴らし続け警戒するように瞳を光らせていた。
ふっ、想定内だわ。こういう時は息を大きく吸って……せーの!
「ハウス!」
「きゃん!」
私の一声でピーターは部屋の外へ弾かれるように飛び出した。そしてその背中はあっという間に見えなくなってしまう。見事な忠犬っぷりね。事前に躾といて良かったわ。
「え、ピーター…なんで…」
直前まで自分を守るように私を威嚇していた従者の突然の逃走に、見捨てられた主人は目を丸くしながら呆然と呟いていた。
「先輩、ピーターに何かしました?」
「うん。私の下僕にしちゃった」
「え?!」
「リアンくんの犬なら、私の犬でもあるも同然だし問題ないよ」
ベットの上を四つん這いで近づいていく。すると顔を赤くしたリアンくんが逃げ道を求めて壁にぺったりと背中をくっつけた。でも残念、もう行き止まりよ。
「問題あるから!俺の従者に何かしたなら、流石に怒ります!それに、ピーターは俺の友人でもあって、恋人でもない先輩の玩具じゃありません」
「ふ~ん。リアンくんは恋人でもない女と、こーゆー事するの?」
いつになく強気な彼の言葉にちょっぴりご機嫌斜めになったので、ポケットの中に入ってるスマホを取り出し、待ち受け画面をリアンくんの目の前に突き出してあげたわ。
「ここここ、これはっ!???」
それを見たリアンくんが目を見開き、次の瞬間にはボッと全身を赤く染め上げた。
私の待ち受け画像は、兎の皮を被ったオオカミに襲われて、トロトロに蕩けちゃったウサギさんの生画像。ソファに押し倒したリアンくんが目をつぶってる隙に、こっそり撮影した嗜好の一枚よ。最高に乱れた己の姿を見た羞恥で、リアンくんはしばしフリーズしてしまう。
「…今すぐ消して!」
しばらくして再起動するのと同時に飛び掛かってきたリアンくんの腕を掴んで、あっと言う間に押し倒した。
彼の黒曜石と私のチョコレ―トの瞳がカラーレンズ越しに絡み合うのが嬉しい。
邪魔なレンズなんて無ければいいのに…彼の綺麗な瞳の色をちゃんと見たい。脅えたように瞳を揺らすのはどうして?私が怖いのかな?
でも、ゴメンね。逃げる獲物ほど追いたくなるのは肉食獣の性なの。




