馬車は走るよラリックへ
雪解けと道のぬかるみが回復するまでの数週間、ポーション作りに励んでいた。
作っては自ら飲んでいたのだが超まずかった。
これ絶対ただの青汁じゃん。
効き目もポーションの無い非常時に、緊急で薬草をそのまま口にしたくらいの効果しかなかった…
ポーション作りの道具や作り方の本は収納に入っていたのでチャレンジ出来たのだが、全然上手くいかない。
残念だ。
その合間に暇そうなギルドに立ち寄り、セリナさんにお菓子の差し入れをしたりしていた。
勿論、日頃お世話になっているので皆さんでどうぞ、と一言添えてだ。
すごい喜んでもらえた。
ただ、後日風の噂で、
カルナの街の期待の新人魔法師は、顔も存在もはっきりしない謎の魔法師だったと噂されていた。
セリナさんもよく会っているのに顔が覚えられないわ、と仰ってたそうだ。
しまった!
窓口では認識障害の指輪外しておくんだった。
くっ…
お菓子を貢いだ…もとい差し入れしたのに覚えてもらえないとは…
その後俺は、顔も覚えてもらえないのにも気が付かず、そのままセリナさんに街を移動する旨を伝え、惜しまれつつもカルナの街を出たのだった。
ラリックの街までは乗り合い馬車に乗ることにした。
さすがに村からカルナまで歩いたのはきつかったから。
ま、仕方ないっちゃ仕方ないんだ。
村に馬車の便なんてないし、そもそも金がない。
俺が前世を思い出していなかったら、果たして街まで辿り着けたか怪しい。
ひと月以上もかかるのに持参のパンの量は切りつめても一週間くらい。
後は弱いホーンラビットでも狩るとかしかなかったのだろう。
俺の前に家を出されたウィル兄ちゃんは本当にどうしているのかな?
大丈夫だろうか?
気になるがしょうがないよなあ。
こんな心配も前世の力のご利益あってのもの。
本来なら俺の方が心配される立場だ。
気を取り直して馬車での食料などを買いに向かう。
露店でパンに肉をはさんだ物を大量に買い込んでいく。
一人用のテントも購入。
それらを皆の目を誤魔化すために、普通のポーチに、さもこれはアイテムバッグですよ~ってな感じに異空間収納に仕舞っていった。
一応評判の謎の魔法師ということで怪しまれずに済んだ。
寒風の中、馬車が進んで行く。
以前の歩きで一か月と違い、ラリックまでは3泊4日くらいらしい。
俺の両隣はおばちゃんとおねえさんだ。
おねえさんは栗色の髪をポニーテールにした可愛いお嬢さんである。
ラッキー!
っくしゅん!
おねえさんが可愛いくくしゃみをした。
無理もない。
馬車と言っても幌馬車で、隙間風がスース―入るのだから。
「大丈夫ですか?よかったらこの毛布を使ってください」
収納から出して勧める。
俺は紳士なので困ってるおねえさんはほっておけない。
今回は認識障害アイテムは外しているのだ。
是非交流をしなければ。
ところが、それを見たおばちゃんが、
「あら魔法師のおにいちゃん、毛布持ってんのかい、助かるよ」
「え、いやこちらのおねえさんに言ったんだけど。
てか、おばちゃん、毛皮着こんでるじゃん」
「あたしゃか弱いから足りないんだよ、あんたも借りるだろ?」
なんとおばちゃん、隣の旦那風のおっちゃんに勝手に聞いてる。
おっちゃんもなんか頷いてるしー
おねえさんが隣でクスクス笑ってる。
ま、いっか。
結局、乗り合いの12人全員に毛布を貸すことになった。
宿泊用の毛布を引っ張り出すのが面倒くさいんだろう。
そう思っていたら、この毛布の暖かさに皆手放せないから、ラリックに着くまで貸してと頼まれた。
うん、馬車の毛布ペラッペラだもんな、わかったよ。
皆心なしか顔色が良くなった。
よかった、よかった。
「ありがとう。
さすが魔法師さんね、アイテムバッグ持ちだなんてすごいわ」
「いや、安物なんで収容量はたいしてないんだよ」
「ううん、それでもすごいわ。
私はミア。
奉公先からラリックの実家に帰るところなの。
実家は食堂だから、是非食べに来てね」
「うん、絶対行くよ。
俺はアロイス。
ラリックのダンジョンに行くつもりなんだ」
この後話が弾み、ついでに乗り合い全員とも交流はした。
正志が脳内でうんうんと頷いている。
喧しいわ。
その保護者面したしたり顔が煩いわ!
夜になり、宿泊の準備と夕食を各自とる。
実は乗る前から頼まれてたんだが空になった樽に魔法で水を入れていく。
馬達の水飲み桶も満杯にしてあげた。
この後はゆっくり休もう。
女性の乗客達は幌馬車の中で泊まる。
流石に夜は隙間風が入らぬよう保護布が上から被さっている。
他は各自テント。
「あんた冒険者でしょ。
乗員じゃなくて、あたしらみたいに護衛にまわればよかったのに」
そういや忘れていた。
乗り合いに護衛が4人馬で隣を走っていた。
革鎧に弓とショートソードをさげた気の強そうな美人に突っ込まれた。
「いいんだよ。
のんびりしたいし。
水の補給や、いざという時の予備として料金割引きしてもらってるから」
「ふうん、ま、いいけどさ。じゃね」
これから4人で順に夜の番か。
乙です。
ありがたい、俺は寝ます。
おやすみ… zz




