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不満と討伐とストレス解消

はあ、どうしてこうなった?

と、さっきから溜息ばかりがまた出てくる。



ユリウスの言う通り、二人や周りの者のステータスを見て確認しなかったからか?

そんな後悔をする俺に、前世の賢者たるユリウスが否定した。


«いや、今回は見ても無駄だったろう。

あの護衛騎士がお前のステータスの改竄を見破ったということは、彼らもまた改竄を行っているということだ。


そして、お前自身のステータスの秘密だが、

幸い、魔力測定器の計測範囲は、最大が200までだ。

1000を超えるお前の魔力の詳細はバレていまい。

他の数値も知られてはいないと思う»


そう、励まされた。

そうか、ありがとうユリウス。





「アロイス、顔色が悪いな。

従者は荷が重いか?」


シャルロッテ様が、心配そうに俺を見る。


「いえ、そんなことは…」


「今回強引にすまない。

アンナはか弱き侍女の身ゆえ、長旅は負担になっておるからな、力を貸してほしい」


か・よ・わ・い?


思わず胡乱な目でアンナさんを見やれば、ニッコリ笑って頷いとる。

どうもアンナさんの正体をシャルロッテ様は御存知ないらしい。

ただの侍女だと思ってるみたい。


ちなみにアンナさん、か弱い侍女の振りをする為に、普段は体に重しを付けてるそうだ。

服の上からなので取り外しは簡単。

肉体改造、筋肉矯正、と謳っている、恐ろしい人である。



はあ、分かりましたよ。

とっとと王都に行きましょう。


この2日、打ち合わせと称してアンナさんから状況を説明された。

状況と言ってもこの旅の状況だ。

間違ってもシャルロッテ様の身の上話ではない。


狙われている為、オウドの村に逃れて来た一行は、敵の目を欺く為に、乗り合い馬車に目を付け、乗客の2人程を買収して、替わりに乗り込んできたらしい。

護衛の冒険者達はギルドに詳細の手紙を持たせて帰らせた。

シャルロッテ様が騎士という設定は、女の子らしく見えないようにとか、身動きを取れやすいようにとかが理由だという。


で、今のところ、敵の姿はまだないそうだが…


「クランリーでの散策はまずかったんじゃないですか?」


「何を言う。

お嬢様が退屈されたらどうすると言うのだ!」


「…それくらい我慢させてください」




まあ、せっかくなので、ミアさん希望のクッキーの店情報や、嫌だけどジーンの親父さんのことを、同郷の金カード者への興味と装って聞いてみた。


「クッキーなら、どの菓子屋でも売ってるぞ。

王室御用達の製造元が各店舗に卸しているのでな。


エスリック殿なら、王都近辺の魔獣討伐で活躍されている。

確か2年ほど前に、騎士爵を賜ったはず」


「へえ、すげえ」


「まあ、一代限りだが。

周りとの調整の意味もある」


調整というのは、ある程度の身分がないと、出世させてやれないからだそうだ。

騎士って面倒くさい。


俺は平民のままで結構だ。



従者と言ってもただ傍にいて、細かい用事を足すだけである。


アンナさんは休憩と称して、他の護衛騎士と打ち合わせが出来るようになったとか。



諸々の2日間が過ぎ、今日はいよいよフラウ川を渡りメイチェに向かう。



ここにきて、俺ら以外の乗り合い乗客は激減して、馬車2台だったのが、1台になった。


乗客の殆どがクランリーの住人だったので、そこで降りていったのだ。

残った乗客は、おっちゃんおばちゃんの夫婦者一組と、ばあちゃんが一人の、計3人だ。

3人はメイチェの親族に会いに行くらしい。


まあ、メイチェの街からまた、王都行きの乗客が乗り込むそうだが。


ようやく川を渡る為の、船着き場に到着する。


川幅は150メル(メートル)程、流れもゆったりしているので、あっという間に向こう岸に辿り着いた。

船着き場の1キラル(キロ)先には、馬車駅があり、既にメイチェまで行く為の乗り合い馬車が待機しているそうだ。


今回は人が少ないので、一艘の小舟で事足りていた。

順に降りてく一行。

年配者を先に降ろせばいいのに、シャルロッテ様一行が堂々と先に降りていく。


最後に俺がばあちゃんの手を取って降りてく最中に、それは起こった。







バッシャャャァァァァァァァー――――――ンッ!!!





え?




振り向くと青緑色の禍々しい蛇が川面から姿を現していた、



なんでだ?

ずっと索敵していたのに、いきなり現れるって変だろう?



「サーペントだぁぁぁぁぁぁ!」



誰かの声が響く。

が、それどころじゃない!


俺はばあちゃんを背負い、腰抜かしてる夫婦を両脇に抱え、遠くへと一気に走る。


「アロイス!逃げる気かあ!」


アンナさんがアホなこと言ってんので怒鳴り返しとく。


「あんたら騎士だろう、民草守る為に戦え!

ばあちゃん達を避難させる!」


「貴様!

お嬢様を優先せんかーー!」


無視だ無視!


駅馬車停までの1キラル(キロ)を走って到着し止まると、抱えてた3人が伸びていた。

ああ、すまんて。

あんな運ばれ方じゃ苦しいよな。

ポーションを飲ますと元気になった。


俺は、待機していた馬車の御者に事情を説明して、3人を乗せて先に行かせた。

心配そうな彼らに、あいつら強いから大丈夫と請け合っておく。




さて、

戻るとまだ戦闘が続いていた。

サーペントは岸に競り上がって来ていた。

騎士が一人倒れていたので、解毒と回復の両方のポーションを飲ませておく。


なぜなら、



『鑑定

※グリーンサーペント

水陸両用。

毒のブレスを吐く。

体が硬いので普通の剣では刃が通らない』



俺は状態異常無効の指輪を嵌める。

収納から、魔法付与された剣を取り出した。


いつの間に、シャルロッテ様とアンナさんの姿は消えていた。

避難してるのだろう。


剣は一応持ったが、殺るのは魔法でである。



「魔法で攻撃します。

一旦下がってください!」



呼びかけると騎士達が引いていった。



『バースト!』



サーペントの周囲で、中級無魔法の爆弾が爆裂となって覆い被さっていく。

飛び散るとやっかいなので、同時に地魔法で壁を作り、サーペントを取り囲む。

索敵の赤い点が消えた。

どうやら仕留めたらしい。


そして、



『サンドショット』



向こう岸の何もない空間に地魔法を放った。

すると、何もなかった所に男が一人倒れ伏した。

隠微で隠れていたのだろう。


サーペントが現れた時、実は向こう岸にも赤い点があることにずっと気付いていた。

転移陣で此処に来て、魔獣を召喚したのか?

目潰し用魔法なので、まだ生きてるはずだ。

事情を吐かせる為にも、回収するよう騎士に言ったんだが、打ち消す声が上がる。



「回収の必要はない。

殺せ!」


嫌だよ、そんなの。


「自分でやってください」


一瞬睨み付けられたが、騎士達が一斉に矢を放ち男は死んだ。

あ~あ、事情聴取とかしなくていいのかな。

サーペントの召喚とか詳しく聞いた方がいいと思うんだけど、ま、いっか。




この後、アンナさんにグチグチ文句を言われたが無視した。

そうそう、倒したサーペントは当然俺の獲物なので確保した。

収納に仕舞っておいて解体は後程にする。



それにしても、こんな風に襲撃が実際起こってしまった。

俺は乗り合い馬車ではなく、駅馬車停で、1台普通に馬車を借りて行った方がいいと提案した。

渋っていたけど、一般人に被害が出たら、周り周って、そちらに非難の声が上がりますよ、と言っておいた。


それともう一つ、メイチェの街に入らず、素通りして進もうとも言っておいた。

同じく、周りを巻き込まない為である。

食料が、とか言ってたので、売ってあげると提案する。


無償では提供しない。

ざっと計算して、先にお金を貰い、食料を渡した。

有耶無耶にはしない。



従者の給料?は王都に行ってからでいいとしておいた。

どうせ大した額出さないだろうし期待してないから。


周りへ被害が行かないようにして、急行軍で王都に進んで行く。


シャルロッテ様が、ちょい涙目だが無視する。


可哀想だが、貴女がいるだけでトラブルが舞い込むみたいだ。

早く安全な王都に行きましょう。

王国騎士団は実力主義で強いと聞くので、守って貰いましょうね。


予定通りメイチェを素通りし、街も村も何も無い道を、ただひたすらに進む。


野営だが、俺は従者なので、夜番はしない。

風呂に入って疲労をゆったりと癒した。

今日の夜食は何にしようかな?


あいつらに売ったのは食材と大量の安いパンだけ、料理や露店の食べ物は渡さない。


悪気はないと思うのだが、親切にしても当然と何故か思ってるようなので、もうお世話はしないのだ。


大体、従者って必要あるか?

俺殆ど何もすることないじゃん。

正直時間の無駄、俺の時間返せと言いたい。



さて今晩は、具沢山のトマトのスープだ。


«お、ミネストローネじゃん、美味そう»


前前世の正志の世界のスープに似てるらしい。


「うん、美味い」


トマトの酸味と燻製肉の旨味が混然一体と口の中に広がる。


合わせるパンは、外はカリカリ、中はふわっと焼きたてのパンに、バターと塩コショー、刻んだパセリ、が塗ってある。

パセリの風味が食欲をそそる。


他にも刻んだゆで卵と酢漬けのきゅうりを白いソースで和えたものをパンに載せたら美味かった。

これは、タルタルソースだと正志の説明が入った。

腸詰肉(ソーセージ)に付けるのがお勧めと聞いたので、今度食べてみる。


最後に砂糖で煮たコケモモのパイを食べて、熱いお茶を飲む。


ふう、満足。


これで今日のストレスも大分解消できた、寝よう。


おやすみ。


前世達が、ご苦労さんと言っているのが夢現で聞こえた zzz

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