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7階の秘密とトラブル

俺はその日、朝一番にギルド前に来ていた。


あれからダンジョンに再び潜り、帰還したのだが…

初回のような目立った戦果はなかった。

しかし大量の素材を、そろそろなんとかしなけりゃならない。

ギルドで売却すべく来たものの、早朝過ぎてまだ開いていなかった…


「アロイス」


呼ばれて振り向けば、アビーの父ちゃんのザックさんがいた。


「おはようございます」


「早いな。ダンジョンへは行ったのか?」


「行きました。

魔石や素材を捌きにきました。

量がちょっと多いので早めに来たんですよ」


「どこまで行ったんだ?」


「どこまでって… ああ、全部です」


俺の答えにザックさんが変な顔をしている。

なんだろう?


「そう言えばザックさん達はバッタ狩りしてたんですよね。

風の魔石捌きに来たんですか?」


「ん、ああ、そうなんだよ。

ところで、素材が大量にあるって話だが、受付で別室を頼んだ方がいいぞ」


「分かりました。

あ、もう開いたみたいですね」


話してるうちにギルドの職員が中から鍵を開けて入れるようになった。

早朝はさすがにギルドの中も清々しい。

猥雑さもなく、飲んだくれてる奴もいない。


俺達はそれぞれ受付に向かい要件を伝えに向かった。

残念なことに早朝は男の職員しかいなかった。



「ダンジョン素材の売却ですね。

大量なので別室希望、ですか?

量が多いってどれくらい…

え?

馬車3台分くらい?

別室を御案内しますので、こちらにどうぞ」




案内された大部屋で待ってると、貫禄のある禿げ頭の年配職員が入って来た。


「待たせたな。

わしはラリックのギルド長、コーラックだ」


ギ… ギルド長!

どうりで、やけに眼光鋭いと思った。


「銅カードのアロイスです。

ダンジョン素材も大量なんですが、

他にも処分したいものが色々あって、出来れば買取をお願いします」


異空間収納から今までの素材を全部出した。

怒られた。


「馬鹿者!

こんな溜めこんでどうする。

もっとこまめに来んか」


「す、すいませ~ん…」


当然だが今日中に清算は無理、いったん預かりになった。

朝の清々しさは何処へやら、帰りは煤けてしょんぼりの俺である。


ギルドから出たところで入口傍に居たザックさんに昼飯奢ってやると、声をかけられた。

アビー達はまだ宿で寝てるとのことだ。

せっかくなのでと、ありがたく申し出を受け、ついて行った先は酒場だった。

酒場と言っても昼も普通にやっている。

そして、ざわつく店内ではなく、個室に案内させて入っていった。


「中は煩くて話も出来ないからな。

個室は商談なんかによく使われてんだ。

まあ、まず食え食え」


「酒場って言っても食事も豪華ですね。

じゃ、遠慮なく、いただきます!」


綺麗なおねえさんの給仕のもと、分厚いステーキが運ばれてきた。

焼けた肉がじゅうじゅう音をたてて香ばしく、ガーリックバターソースがまた食欲をそそる。

美味い、美味すぎる!

パンとスープは添え物とばかりに、がっつり肉で満腹になった。

う~ん、満足。

食後に消化にいい林檎酒(シードル)が来た。


「ここは料理も意外と美味いって評判でな。

評判どおりだったみたいで良かった。

ところで、

ダンジョンの話を聞かせて貰ってもいいか?」


今朝の様子から、なんとなく用件はそれだと思っていた。

だが、何故奢ってまで聞くんだ?


「それはいいんですが、ザックさん達もダンジョンに行くことにしたんですか?」


「いや、

ああ、そうだな。

ちゃんと話さないとフェアじゃないな。

前に聞かれた時にラリックのダンジョンには行っていないと答えたが、実は、俺は20年前に行ったことがある。

そこで7階の秘密を知った」


「え、じゃあ『イベント』に遭遇したんですか?」


「ああ、そうだ。

…って、

やっぱりお前も褒章を貰ったんだな…」


驚いた、ザックさんも能力の一つを+100にして貰ったのか。


話によると、その力で銀カードまで登りつめたそうだ。

ただ、家族にも周りの人間にも秘密にしてるという。

それは、

7階の秘密は昔からトラブルの元になっているのだそうだ。


貰った奴は秘密にしたいし、

貰えなかった奴は、逆恨みで、

新たにダンジョンに来た奴の邪魔をするそうなのだ。


あのロブとかいう奴も、邪魔する奴に騙されて、褒章を貰い損ねたそうなのだという。

悔しがるロブの独り言から当時察したらしい。


「身内ならともかく、ロブのことを考えると、お前にだけ教えることは出来なかった。

すまない。

だが、気にはなっていた。

無事上手くいってよかった」


「ありがとうございます。

でも、アビー達に褒章を受けさせなくていいんですか?」


「そうしたいが難しい。

多分、他の奴の邪魔が入るだろう。

まあ、失敗すれば、奴らも安心して、以後は邪魔されることなく普通にダンジョンに入れるようになるだろうがな。

そして成功したらしたで、妬まれる。

それがまたトラブルになる。

お前も知られれば色々やりにくくなる」


「なんだそりゃ、おかしいよ。

ギルドはなんで黙ってるんだ。

あの剥げ親父め!」


「邪魔と言っても、法にふれることをしてる訳じゃなないからな。

ギルドも秘密を公表すれば、外部から有象無象が押し寄せてくるのを警戒している。

ラリックは周辺に外敵の少ない平穏な街だ。

職員も冒険者も地元の人間ばかりだ。

コーラックも身内に、成功した者と失敗した者を抱え、困ってるんだろう」


なんてことだ。

まあでも、平穏を保っていたい気持ちは分かるよ。


「ザックさん、よかったら俺がアビー達に協力しますよ」


俺は思わずそう言ってしまっていた。

それを聞いて最初は遠慮していたザックさんだったが、やがて考え直し、頼むと言ってきた。

やはり大事な家族に、もっと力を付けさせたいのだろう。

みんなで話し合う為に、アビー達がいる宿に一緒に向かうことになった。



俺達は、宿で寛ぐフランツ、アビー、コードの兄妹弟(きょうだい)の3人と合流、そして先程の話をもう一度話した。



「そうか、だから父さんは強いのにダンジョンに行かなかったのか…」


フランツがぽつりと呟いた。


アビーとコードは怒っている。


だが、ザックさんがそれを諫めた。

こんなチャンス、妬むなという方が無理だと。

確かに邪魔するのはよくないが、それでもその邪魔を乗り越えて褒章を手に入れる者もいるのだと。


「俺が手に入れた時、偶然だが誰にも知られずに手に入れた。

だが、俺はトラブルを嫌ってそれを隠し、それ以来あのダンジョンに行くのをやめた。

ずっと避けていた。


まあ、家族を持つまでは他のダンジョンに行ってたんだけどな。


だが、お前達を冒険者として育て、この街に再び関わる様になってからずっと迷っていた。

お前達にもチャンスを受けさせるべきじゃないかと。

だが俺一人のフォローじゃ正直自信がなかった。

アロイスが協力してくれると聞いて受けることにした」


「そうなのね、ありがとう、アロイス」


「うん、でも、この話俺にとっても利があるんだよ。

ザックさんに剣術や体術の指導してもらえることになったから、助かるんだ」


人と組まない俺が、オールラウンダー目指す為に武術を習いたがってるのはザックさんも理解していたので、これは良い取引きとなった。


それを聞いたアビーが、あたしも弓を教えてあげると言ってくれた。

ありがたい。

だが、後日談になるが、弓より魔法が便利と思う俺は結局、その申し出を受けることはなかった。


この後も色々作戦を練っていき、明日も宿を訪ねる約束をして帰った。


アビーが泊まっていけばいいのにと口を尖らせていたのが可愛いかった。

そう言えば今日はセーターにスカートで女の子らしい恰好だったな。

綺麗な黒髪もおろしていて、ちょっとドキっとしたよ。

髪と言えば、アビーとザックさんは黒髪で、フランツとコードは金髪、こっちは母ちゃん似なんだそうだ。

ザックさんの爺ちゃんが南の国フィオレ出身なんだそうだ。


ところで、アビー達の常宿〔いぶし銀〕は、程よく上等な宿である。

部屋に風呂は付いてないが、大風呂があり、別料金を払えば入浴できる。

ただし高い!



宿を後にして、俺も異空間収納から出した【隠れ家】で寛ぐ。


うん、アビー達に協力するかわりに、俺も剣術、体術と訓練出来る、完璧だね。

自画自賛!


が、


«馬鹿者! そんなことしている暇はないだろ。

お前の能力を隠してどうやって協力するか、考えたのか?»


ユリウスの的確な指摘がが痛い。


«よく考えろ、どこまでお前のことを話し、どこまで隠すのか。

それから協力するなら、相手のステータスを確認しろ。

能力が分からなければやりようがない。


それと、


お前のステータス鑑定だが、あれは略式だぞ。

完全にしないと、能力表示がいくつか漏れている。

筋力、素早さ、など身体強化に適応されるものが略されて省かれているぞ»



ええええええええええええっ!!


マジか


略式が最初分からなかったが、鑑定を発動させた時、一番下の所に、全部表示させますか?

と質問があり、ハイと答えると筋力、素早さが表示された。

よかった、出来た。

あ、でも、

あまり数値が高くなかった…

これは魔法ばかりの俺じゃしょうがないな。


あと、アビー達の鑑定は本人に聞いてからにするよと、ユリウスに伝える。



前世のユリウスは不満そうだが

前前世の正志はそれがいいと頷いている。


さて、

色々やることが出来たな。


しっかりサポートして、俺も技術を教わりスキルに加えるぞ。

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