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建帝とゆかいな仲間たち  作者: 風車猫十郎
第一章 帝国再建
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第13話:執政官は差配する

 帝都の中心に位置する帝宮は、皇帝が生活する場としての機能だけでなく、政務を執り行う執務室や、将軍達が会議をするための円卓の間など、政庁としての機能も兼ね備えていた。

 そして、その執務室の一室に政府の職員達が引っ切り無しに出入りしていた。


それは、執政官であるロザリエの執務室であり、室内には各部署から上がってくる報告を聞いて矢継ぎ早に指示を出すロザリエと、ロザリエから回ってきた報告書を、うんうんと頭を抱えながら読んでいるラウラの姿があった。


「次の報告は?」


「はい、内務省より、リーザ様の名で要請が来ております。ミミ様のおかげで水の供給も目途が付いたそうですが、ついては避難民の不安解消と健康保持のために、簡易な浴場を設置して欲しいとのことです」


 部下からの報告を聞いたロザリエは少し思案する。


(確かに、濡らした布で体を拭くしかできない現状、風呂に浸かることができれば、体を清潔にできるだけでなく、避難民の不安も多少は和らぐか・・・)

「わかりました。リシアナに簡易浴場の設置を命じておきます。リーザからの要請は他にありますか?」


「はい、一部の避難民が体調不良を訴えておりますが、帝都内の医療施設まで通わせるのは不便なので、避難民キャンプに野戦病院を設置して欲しいとのことです」


「わかりました。では補佐官のセラエラに神官達を指揮させて野戦病院を設置させることにしましょう。後でタクミさんには私の方から頼んでおきます」


「了解しました」




 ロザリエが話題に出したセラエラは、霊祇官の下で神官として祭祀と医療を司るプリーストの補佐官であり、霊祇官同様に軍事や行政の命令系統から独立した形となっている。

 そのため、執政官と言えどもセラエラに直接命令することはできないため、セラエラへの仕事の依頼は、霊祇官への要請という形をとることになるのだ。




「後、リーザ様から来ているのは、報告が1件と要請が1件となります。報告の方は、帝都内の一部の商人が結託して、物資の値段を引き上げているとの情報が上がってきており、現在内務省の商業局の職員を派遣して調査しているので、事実が判明した場合には、値上げに関わった商人たちに制裁課税を行うとのことです」


 その報告を聞いた途端、ロザリエの眉が吊り上がる。


「何ですって?この非常時に物資の値段の引き上げを・・・帝国自体が危機に直面しているこの現状で目先の利益につられるなんて!制裁課税では生ぬるい。値上げに加担した商人全員から商業許可を取り消しの上、強制的に工兵部隊に編入して、しばらくの間、従軍の役務をさせるようにリーザに伝えなさい」


「は、はい!」


 ロゼリエの剣幕に恐れをなしたのか、応える部下の声は震えていた。




 ロザリエは冷静沈着公明正大な言動を常としており、かつ部下にも対しても労りを忘れないことから、理想の上司として部下からの信望は篤かったが、一方で道理から外れた行いについては性格上どうしても義憤が沸き起こり、冷静さを欠く一面もあった。


 帝国の一大事であれば帝国臣民として、一致団結してこの一大事を乗り切らねばならぬ時に、目先の利益を上げるために商人達が行ったことは、彼女からすれば許容できぬものであり、彼女の性格からして、一瞬冷静さを失わせてもしかたのないものであった。




「それで、要請の方は?」


 高ぶった感情を直ぐに鎮静化させると、ロザリエは部下に先を促した。


「はい、夜間は幾分冷えるため、薪を燃やして暖を取らせていたのですが、思ったより薪の消費量が早いようで、薪の備蓄が心もとなくなってきていると。また、食糧備蓄についても、小麦の消費量が想定より早く、タチアナ様による自給手段の確立が間に合わない可能性もあると」


 続いての部下の報告に、ロザリエは即答せず考え込む。


(流石に避難民の暖にまで活用したら、薪の備蓄が足りなくなるのも当然。しかし、それ以上に小麦の備蓄が持たないのはまずい・・・これは、タクミさんに頼るほかなさそうですね)


 ロザリエは、自分の右隣で、うんうんとうなって報告書の内容を理解しようと頑張っているライラの方に視線を向ける。


「陛下、よろしいですか」


「はっ?ああ、何だ?」


 集中して読んでいたところに急に声をかけられたため、油断したような声を出しつつも応えるライラ。


「薪や小麦の備蓄が心もとなくなってきているようです。ついては陛下からタクミさんに、召喚の儀を行ってもらうよう頼んでもらえませんか」


「そうか、わかった」


 ライラはロザリエの言葉に頷くと、読んでいた報告書を置き、立ち上がって足早に執務室を出ようと執務室の扉の方に向かった。


 ライラが扉から出ようとしたところで、ロザリエが思い出したというように、笑顔でライラに声をかける。


「タクミさんへの要請が終わったら、またこちらに戻ってきてくださいね、陛下」


 ロザリエの言葉に、部屋を出ようとしたライラの体がピタリと止まる。


「あ、ああ、もちろんだ」


 そう言ってロザリエの方を向いたライラの笑顔は若干強張っていた。


 その強張った笑顔を見ながら、ロザリエは内心では苦笑しつつ、それを表には出さずライラに応える。


「ではよろしくお願いします、陛下」


「ああ」


 そう言って今度こそ部屋を出るライラを見送るロザリエ。


(内政が苦手でも、皇帝として何とか頑張ろうとする姿勢は良いのですが、それでも苦手意識はなかなか抜けないようですね)


 元々が傭兵であり、内政全般が苦手なライラがそれでも皇帝として頑張ろうとする姿に、ロザリエは、そんなライラを支えようと、あえてスパルタな姿勢を崩すことはなかったのであった。


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