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建帝とゆかいな仲間たち  作者: 風車猫十郎
第一章 帝国再建
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第12話:北方将軍は地道に働く

帝都外壁の避難民たちを収容するキャンプ地は、帝都の軍と職員らの手により、急速にその形を整えつつあった。


 そんなキャンプ地の食糧配給を担う行政職員が駐在する天幕の一画で、ローブに身を包んだ女性が大きく上空に手を振っていた。


「リリ様こちらです~」


 そう言いながら手を振るローブ姿の女性の上空には、同じようなローブを身にまとった人影が空を飛んでいた。


 上空の人影は、地上で手を振るローブの女性に気付いたのか、地上の方に降下してくると、女性の傍に降り立った。


「ミリエラ、敵地じゃないのですから、閃光魔法を上空に放つなりして居場所を知らせなさいな。声と身振りだけじゃ気付きにくいでしょう」


「えへへ、そうでした」


 ミリエラと呼ばれた手を振っていたローブ姿の女性は、口では反省の弁を述べながらも、全く悪びれることもなく、笑顔のまま頭をかく。

 それを見て、空を飛んできた方の女性、北方将軍であるソーサラーのミミはため息をついて、これ以上の注意を諦める。


「まあ、いいですわ。それで、貯水槽はどこですか」


「こちらです」


 ミミの問いかけに、ミリエラは、左手で方向を指し示しつつ、そちらの方にミミを案内する。


 二人がキャンプ地を少し歩くと、二人の目の前に大きな貯水槽がいくつも集まった一画が姿を現す。


「これはまた大きいですわね」


「ええ、何かリシアナ将軍が張り切って作られたみたいですよ」


 それを聞き、やれやれという表情を浮かべるミミ。


「ミミ様、お願いします」


 ミリエラの促す声に、わかったわと頷いて、すっと体を宙に浮かして、貯水槽の上部に移動するミミ。

 貯水槽の上部は事前に準備がしてあったのか、蓋のようになっているところが開いており、そこから水が注水できるようになっていた。


 ミミは口の中で呪文を呟いた後に貯水槽の開いている穴に向けて右手をかざす。


 するとミミの右手から、大量の水が出現し、激流となって貯水槽目がけて放水される。

 放水された水は凄い勢いで貯水槽の容量を埋めていく。




 円卓会議におけるロザリエの差配により遊撃的任務を割り当てられミミのところに一番に届いた任務は、避難民キャンプの水不足の解消であった。


 内政官のリーザの指示により帝都の地下水が、行政庁の職員や兵士の手により避難民キャンプに運ばれていたが、運搬するための樽が不足し、必要とされる水の量に対し供給が追い付かないことが判明し、リーザからの相談を受けたロザリエが、リシアナに避難民用の貯水槽の設置を依頼するとともに、ミミに対して避難民へ配給する水を確保するよう依頼が来たのだ。


 ミミは、しばらく貯水槽に向かって魔法で生み出した水を放水していたが、満タンに貯まったのを確認すると放水するのをやめ、次の貯水槽のところに移動してまた同じように放水していった。


 何度か同じようなことを繰り返し、設置してある貯水槽をすべて満タンすると、ミリエラのいるところに降り立った。


「終わりましたわよ」


「お疲れ様ですミミ様~。流石ミミ様ですね。これだけある貯水槽すべてに水を補給しても魔力切れを起こさないなんて」


「霊器があればこそですわ。それより、ここ以外にも貯水槽はあるのですか?」


「はい、こちらが第1キャンプになりますが、第200キャンプまであるはずです」


「聞いてはいましたが、凄い数ですわね・・・魔力容量は私一人でも持つと思いますが、流石にこれは部下と分担しないといちいち給水して回る作業が大変ですわね」


 そう言って、ミミはため息を一つつくと、後は任せましたとミリエラに伝えて、次のキャンプ地の貯水槽に水を補給するために上空に舞いあがった。





(それにしても妙ですわね)


ミミは、魔法で水を放出している間感じていた違和感を思い返していた。


(魔法の効きが強くなってる?でも私の魔法に関する能力は霊術のおかげでこれ以上あがるはずはないはず・・・)


次のキャンプ地を目指しながら、ミミは思考を巡らせる。


(私の霊器に備わっている霊術『魔力保有量極大』、『魔力放出力極大』、『魔法操作力極大』の三つは、魔法を扱う際に必要な三つ能力を極限まで高めるものですから、この能力は異世界に来たからと言って変わることないはず・・・にも関わらず、魔法の効きが強くなったように感じる・・・これは一体・・・)






 ミミが持っている霊器は、左手の中指につけた装飾の付いた指輪であるが、この霊器についている霊術は、アスサガのゲームの中ではどれも魔法に関して壊れスキルと呼ばれてもおかしくない能力であり、壊れスキルを三つも保有している霊器ということで、ミミの持つ霊器は、プレイヤーから「公式チート」という肩書を得ているとんでもない代物であった。


 もっとも「公式チート」と呼ばれるだけあって、装備条件は、「アラサーのですわ口調の女性ソーサラー」という、一体どのような層をターゲットにしたのかわからない制限がついており、ゲーム上、絶対にミミ以外には装備できない仕様になっており、アスサガのプレイヤーの間では、開発陣の中に、強力なミミ推しがいたに違いないという噂がまことしやかに流れていたこともあった。






 ミミは先ほど感じた違和感の正体について、考え続けるも、視界に次のキャンプ地が見えたため、一旦思考を止めることにした。


(落ち着いたらこの件は腰を据えて研究するべきですわね)


 研究者肌のミミは異世界に来たことによる魔法への影響についての研究に心を躍らせつつ、頭を切り替えて、ある程度給水作業を終わらせたら、一旦魔法省に戻って部下達も動員して、ローテーションで給水する方法を採ることについて考えめぐらせながら、高度を下げていくのであった。


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