推しの令嬢、守護します! 2-1
◇ ◇ ◇ ◇
ガルバニア王国 城下町。
例に漏れず、オルレッド・ガウスマンはまたもや、エドガーの居る、カリスの酒場へと通っていた。
「また来た。
悪いな、何度も」
オルレッドはまた、個室を取り、エドガーを給仕として、指名していた。
「いえいえ、お客様には大変お世話になっておりますので……。
料金も割高でいただいていますし、誠意を持って接客するのは、当然です」
「そうかそうか。
では、またいつものように頼むな」
「お任せください」
ガウスマンに依頼されたエドガーは、素直に命に従い、料理を提供する。
いつも通り、カリスの酒場でしか食べれない料理を中心に、食卓へと並べ、エドガーが次々に並べる料理に、ガウスマンは関心するように、声を漏らしていた。
「相変わらす、見た事無い料理が多いわね」
感嘆な声を上げるガウスマンに対し、レアリーは、料理に興味が無いわけでは無かったが、相変わらず冷たい対応をエドガーに見せた。
「どれも絶品ですよ?」
「宮廷の料理の方が美味しいわ。
食材が超一流だもの、小手先でどうにかしてる料理なんて、足元にも及ばないわ」
「――宮廷料理も勿論美味しいですが、こういったジャンク的な?
品を一番にしている料理では感じられない、そんな魅力がありますよ~~?」
「フンッ! 御じい様が気に入ってるから、私も付き合っているだけ……。
本音を言えば、品性の感じられない物で、口を汚されるのは、耐え難いわ」
エドガーはレアリーに、カリスの料理の良さを何度も伝えようとしているが、レアリーにそれが伝わる事は無かった。
(評価はめっぽう悪いが、毎回ちゃんと食べてはくれるんだよなぁ~~。
――ただ、依然として好みが…………。
表情が崩れる事も無いし、絶対、俺に対して意地を張ってるよな~~)
レアリーの表情を観察していたエドガーだったが、機微でもレアリーの心情を読み取ることが出来ず、目的があるエドガーはかなり苦戦していた。
「まぁまぁ、レアリー。
他の店よりも、ここの方が良いだろう?
他の店の料理は、食べもしなかったじゃないか」
「あららら? お嬢さん?
ウチは食べれますかねぇ??」
エドガーの肩を持つように、ガウスマンは言葉を発し、ガウスマンの言葉を聞くなり、エドガーは一気に有頂天になり、レアリーを茶化すように発言する。
「発言を慎みなさい、下民。
偶々、他の店の料理が口に合わなかっただけ。
――私からすれば、どんぐりの背比べよ」
「つ、慎めと言われても……。
お客様は、勿論、普通の方とは違うと認識していますが、身分は分かりかねますし……」
レアリーはキリっとした口調で、エドガーを注意するが、エドガーは愚か者を演じながら、ガウスマンに助けを求めるように視線を送り、言葉を返した。
「む? 悪いな、少年。
身分は、公けには出来ない。
お忍びなのでな?」
「お、お忍びですか……。
――ところで、こないだの噂の件は、進捗良く調べられているのですか?」
エドガーは、ジェイスから色々と情報を仕入れていた為、ガウスマンの答えを聞くまでも無く、彼の成果を知っていたが、話題をそちらに持っていく為にも、話を変えた。
「う~~ん、進捗はまずますと言っていいのか……。
正直、話が想像していた方向とは、全く別の方向に進んでいてな~~?
別の人物に興味が出始めておるわ」
「そうですか……」
ガウスマンはエドガーを真っ直ぐに見つめながら話し、ガウスマンの強い視線を受けながらも、エドガーは動揺を見せる事は無く、平凡な対応をして見せた。
そして数日、そんなガウスマンとエドガーの、奇妙な探り合いを見せられていた、レアリーは、遂に我慢が出来ないといった様子で、二人の会話に口を挟む。
「御じい様ッ! もうこの際です!!
ハッキリとこの子供に、聞いてしまいましょうッ!!」
「んなッ!? レアリー??」
思い立った様子で宣言するように、ガウスマンに言い放ったレアリーは、勢いそのままに、エドガーに視線を向ける。
レアリーの行動を、ガウスマンは止めようとするものの、レアリーを止めるには間に合わなかった。
「――貴方、何なの?? 何者」
「!? きゅ、急にどうされ…………」
「せかしいわね?
質問されたら、質問にだけ答えなさいな」
レアリーの発言に、エドガーは思考が付いていかず、ガウスマンに視線を送るが、ガウスマンは真剣な眼差しでエドガーを見つめていた。
(何だこれ……、良いのか??
爺さんは確かに、知りたい事は知れるのかも知れないけど……、知らせたくない情報もあるから、俺だけに情報を出させるように、遠回しに腹の探り合いをしてたんじゃなくて?)
レアリーの考えに乗るつもりであるガウスマンに、エドガーは気が付き、少し動揺するも、レアリーの問いかけに答え始める。
「えっとぉ……、何者と言われても……、しがない酒場の一人息子としか」
「そんな見たら分かる情報は、いらないわ!
貴方、何でレベルタ殿に指南を受けているの?
何故、こんな奇妙な料理が、貴方の酒場にだけあるの??
全て答えなさいッ!」
(全てって……、言うわけないじゃん)
レアリーの命令に等しい物言いに、エドガーは完全に困ってしまい、愚か者を演じる事に徹する。
「レベルタさんは……、気まぐれで付き合ってくれるだけで……。
料理も父が凄いだけですよ?」
エドガーは、恐る恐るといった様子で、レアリーの質問に答え、エドガーの質問を聞くなり、レアリーは険しい表情を一瞬浮かべ、エドガーを睨みつけた後、ガウスマンに向き直った。
「御じい様、やっぱりただの子供ですよ?
御じい様が時間を割いてまで、探求する程度では」
レアリーは、ガウスマンに懇願するような、説得するような、そんな様子で話しかけ、レアリーの対応から、エドガーは何となくレアリーの心情を察した。
(あぁ、レアリー嬢はレベルタからの報告を、聞いてないってぽいのかな?
それか、聞いたうえであり得ないと決めつけ、尊敬する爺さんが、俺なんかに時間を割いている事が気に入らないか……。
俺の愚か者っぽい演技が上手いとか、そんな話ではなく、まぁ、常識的に考えてば、ただの酒場のガキとしか思えないもんなぁ~~)
レアリーの嫉妬を理解したエドガーは、今度はガウスマンの反応に注視し始める。
「レアリー……、私はただ、酒場の料理が気に入っているから、ここに来ているだけだ。
少年に対して、脅迫めいた物言いは良くないぞ」
「でも、御じい様ッ!」
「レアリー」
ガウスマンの冷たく言い放った言葉に、レアリーは遂に口を紬ぎ、悔しそうな表情を浮かべ俯いた。
品のある、同年代であれば間違いなく、他の子供と比べて大人びているレアリーが見せたその表情は、エドガーには新鮮に映り、年相応の可愛さを感じた。
悔しがる表情を浮かべていたレアリーであったが、エドガーがレアリーの表情に見惚れていると気が付くと、すぐにエドガーを強く睨み返した。
「して、少年よ。
先程のレアリーとの会話だが、一つ私も気にある事がある」
「――んあ? え、えっと何でしょう??」
レアリーとの視線のやり取りを交わしていたエドガーは、ガウスマンの問いかけに一瞬遅れて反応する。
「レベルタの話だ。
――私とレベルタは昔からの知り合いでな?
アイツは、大の子供嫌いで有名だった。
そんな男が、どうして子供の指南なんて引き受けたのだ??」
ガウスマンは、昨日のレベルタとの会話で、経緯を全て知っていたが、エドガーに改めて質問した。




