推しの令嬢、守護します! 1-16
「悪いな、カリスさん。
急に押しかけちまって……。
もう閉店もしてるってのに」
カリスの酒場に訪れた人物は、トレブ・ジェイスであり、最近は貴族の身分になった為、酒場に訪れる事も少なくなっていた、
ジェイスは知り合いであり、よく訪れた常連であるという事もあり、カリスはジェイスの為だけに店を開け、フロアにあるカウンター席にジェイスを座らせた。
「珍しいですね?
ジェイスさんがいらっしゃるなんて……」
カリスは、ジェイスの座る向かいのカウンターから水を出しながら、ジェイスに話しかける。
ジェイスは、カリスに礼を伝え、水を受け取ると、気まずそうにエドガーの方へと視線を向ける。
エドガーはジェイスの視線に気づくと、すぐに行動に移した。
「ねぇ、父さん。
新作の料理、ジェイスさんに食べて貰おうよ!」
「え? あ、あぁ、まぁ、確かに感想は聞きたいかもな。
――ジェイスさん、食べたい物があったかもしれないけど、いいかな??」
エドガーの提案に、カリスは好印象を持ち、ジェイスに確認を取った。
「ん? 新作??
ぜ、ぜひ食べてみたいな。
レシピに起こして、またウチの商品になるかもしれないしね?」
「展開はまだですよ~~。
それじゃ、持ってきますね?
――エドガー、料理、ちょっと温め直すから、ジェイスさんの対応お願いな?」
ぎこちなく笑顔を見せるジェイスに対し、カリスは営業スマイルをしっかりと取り、料理を持ってくる為、厨房へと戻る。
カリスが厨房に入った事で、フロアにはジェイスとエドガーだけが残った。
「――ホントに珍しいね? ジェイスさん。
俺に用事でしょ?? いつもみたく使いを寄越せばいいのに……」
エドガーはカリスがいなくなった事を確認すると、少し砕けた調子でジェイスに話しかけた。
「ことの重大性をお前に自覚させるためだよ。
俺が出向いた方が、危機感出るだろ」
「危機感?? 何の話よ……」
エドガーは、ジェイスの話そうとしている内容に心辺りなく、ジェイスの隣の席に腰を下ろす。
今は貴族の身分であるジェイスであったが、エドガーのそんな行動を咎める事は無く、むしろ特に気にも留めない様子で、会話を続ける。
「分かってるだろ?
パームのお貴族様の話だよ。
――俺の方にも、ちょこちょこ探りを入れて来てる。
何を知りたいんだか分からんが、うっとおしいったら、ありゃしねぇぞ??
王国の連中ですら、ここまで探り入れない……、てゆうか、殆ど探られた事なんて無いのに。」
「国王様には、もっと自国民に興味を持って貰いたいよねぇ~~?
急な出世頭、目立ってしょうがないだろうに……、気になんないのかね??」
「ダンジョンの事業で、それどころじゃねぇんだろーよ。
金のなる木だからな? とにかく、儲けを出しまくらないと……。
――とゆうか、そんな話をしに来たわけじゃねぇんだよ、坊主」
ジェイスは、「世間話をしに来たわけではない」と言わんばかりに、会話の途中であったが、脱線し始めた会話を引き戻す。
「お前、何した? パームの貴族に。
しかも、相手はオルレッド・ガウスマン侯爵だろ?? パーム帝国における貴族の中で、最も権力を持つと言われている四大貴族。
その一角だ……、シャレにならんぞ?」
「何って……、お店に来て、持て成しただけだよ~~? 俺はね??
――まぁ、ただ、師匠とは知り合いっぽいね……、しかも、かなり親しいっぽい」
エドガーは嘘をつかず、ありのまま起きた事、した事を全てジェイスに伝え、エドガーの報告を聞くなり、ジェイスは額に手をやり、大きく溜息を付いた。
「お前の師匠、お前の事嫌いだからなぁ~~。
多分、今、オズワルド伯のお前への印象は、悪いだろうな」
「何で嫌われるのかな? 結構、よくしてると思うんだけどなぁ。
金払いも良し、指示には従順、稽古からは逃げない!
――理想の弟子だと思うんだけど……」
「7歳のガキが、1000万ダリズは怖いだろ……。
俺も4歳のお前が、俺に商売持ちかけた時は、気持ち悪かったぞ??
――後、追加で情報だが、何やらキナ臭い連中も入ってる。
このガルバニア王国に」
ジェイスは、めんどくさそうにした様子で、エドガーに追加で情報を流す。
「え? 何?? 他の国の工作員?」
「いや、そんな感じじゃない。
子爵になってから本格的に組織した、俺の私兵に探らせてるが、どうもガルバニア王国を探ってるって感じじゃない。
入ってる人数も、工作員にしちゃ限りなく少ない」
「何してるの??」
「全く分からん。
何やら、ガルバニア王国に巣くうチンピラに、何度か接触してる。
俺らに関係する事でもなさそうだし、ほっといても問題ないだろうな」
ジェイスは、用意された水を飲み干し、エドガーはジェイスの話を聞き、ジェイスの話す怪しい人物達について、考え始める。
「何時頃、その人達入ってきたんだろう……」
「具体的な事は分からんが、つい最近の事ではあるな。
ここ数日、長くても7日、8日前くらいだと思うな」
「ふ~~ん」
エドガーは、何か引っかかるような、違和感を感じつつも、それが何かを断定させることは出来ず、ジェイスの話を、頭の片隅に留めて置くだけにした。
「――んで? どうすんだ? オルレッドの侯爵は?
まだ探りを入れてくるぞ??
マービス先生のとこにも行ってるみたいだ。
まぁ、あっちは門前払いだろうけど……」
ジェイスは、エドガーの考えを知る為に、これからの予定をしっかりと尋ねる。
「探り入れてくるかな? 結構、俺はもう来ない可能性も考えてるけど……。
俺からできる事は無いから、静観かな……、お店に来たら普通に客として持て成す。
――――とゆうか、俺に深く接触して何か、利があるんだろうか??」
「そりゃあんだろ。
ガキんちょがどうやって新しいダンジョンを見つけたのか……、何か方法があるとして、再現性はあるか……。
他にもまだ隠してるモノがあるんじゃないか?とか。
――実際、俺もお前は疑ってる部分はある。
まだあるんだろ?? 見つかってないダンジョン」
「教えないよ? まだ」
ジェイスはエドガーを疑るように視線を飛ばしながら、エドガーを試すように話すが、エドガーは冷たく言い放った。
実際、ゲームの知識があるエドガーは、まだ複数、見つかっていないダンジョンの存在、場所を把握していたが、それをまだ明かすつもりは無かった。
「やっぱまだあんのか……。
隠さないんだな」
「ジェイスさんに隠してもしょうがないでしょ?
既にもう、あり得ない事を披露しちゃってるし、たとえ、もう知らないと答えたとして、信じられる??」
「無理だな。
もう俺は、お前を普通の子供と思う事を数年前に止めてる。
大人……、とゆうか、得体の知れない怪物だと思って接してるよ」
「怪物~~?? 失礼な……」
「心意気で構えるならそうした方がいい、変に侮ったり、欲出したりしたら、俺の身が危険になるだろうしな。
幸い、利益だけは与えてくれてる。
リスクはありそうだが、メリットはある」
ジェイスのエドガーの総評に、エドガーは納得がいかないのか、不満げな表情を浮かべるが、ジェイスは冗談で言っている様子では無く、話し方は軽いものだったが、内容に関しては、交じりっ気のない本音だった。
「ジェイスさん! できましたよ!!」
ジェイスとエドガーが話していると、料理を温めていたカリスが、機嫌よく料理を運びながら姿を見せ、ジェイスの前に料理を並べた。
「お? 楽しみだな~~。
エドガー少年、ビールも飲みたい、頼めるかな」
カリスが来たことで、ジェイスの口調は少し変わり、エドガーに注文をした。
「――はい、かしこまり~~」
雰囲気の変わったジェイスに対し、エドガーはあまり態度を変える事無く、ジェイスの注文を聞き、ビールを用意する。
次回 第二章 『レアリー誘拐事件』は、2/7(土)より、更新致します。




