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【悪役令嬢救済】推しの令嬢、守護します!  作者: 下田 暗
第1章 少年エドガー

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18/21

推しの令嬢、守護します! 1-15


 ◇ ◇ ◇ ◇


カリス経営 酒場。


一日の営業を終え、日課になっているカリスとの新作料理の研究をしながら、エドガーは考えに耽っていた。


エドガーの発想、日本での経験を元に、カリスは料理の再現に集中しきっており、厨房は料理を作る物音だけがこだましていた。


真剣な面持ちで料理するカリスを尻目に、エドガーは今日の出来事に関して、思い返した。


(レベルタとあの貴族の爺さん、まさか知り合いとはなぁ~~……)


エドガーは、カリスの店に来店したオルレッド・ガウスマンと、エドガーの師であるレベルタが、酒場にて偶然遭遇し、その二人のやり取りを見ていた。


レベルタとガウスマンのやり取りから、エドガーは二人が見知った仲である事を理解した。


そして、その後も二人で会う約束をレベルタは取り付け、エドガーはその一部始終も目撃していた。


(レベルタのあの様子だと、俺の話もしてそうだなよな……。

あの人、俺に対してもあんま良いイメージ持ってないし。

――悪く言われてそう…………)


エドガーはガウスマンを交え、レアリーの好みや彼等の情報を引き出そうと目論見を立てており、レベルタにより出鼻を挫かれた可能性が出てきた事を危惧した。


エドガーは現状を憂い、自然と溜息を付く。


(もうあの爺さん、俺を疑った目で見てくるだろうな。

当然だろうな、俺でもそうする、不気味でしょうがねぇもんな。

――最悪、この店にもう来ない可能性すらある。

レベルタは、俺がジェイスと関わりがある事を知ってるし、その話を爺さんにしてるだろうしな)


エドガーは完全に八方塞がりであり、自分が動く事で状況が好転する事は無く、殆ど神頼みに近い状況に陥っている事を悟る。


(まぁ、レアリーとこんなに幼少期に出会えた事自体が、儲けものだし。

まだまだゲーム本編にすら入ってない……、パシフィニア学園に入学する為の準備は殆ど整ってる。

変にレアリー嬢とこれ以上関わる方が、今後の事を考えると悪影響出そうだな)


レベルタのエドガーへの印象は良くなく、そんなレベルタからの報告である為、ガウスマンがエドガーに対して、悪いイメージを抱く可能性が大きく出てきていた。


そしてガウスマンを経て、孫であるレアリーに対しても悪い影響が出始める事を、エドガーは危険視し始めた。


(ただでさえ、嫌われてるからなぁ~~、レアリー嬢には……。

このままの関係で終われば、生意気な平民のクソガキ程度の認識で終わりそう……、何なら、記憶にすら残らなそう)


エドガーはガウスマン達に、来店をされなくなる事を、最悪の想定として考えていたが、途中で考えを改め始め、もはやこのまま来店されない事の方が、悪影響が出ないのではないのかと、そう考え始めた。


「まずいねぇ~~」


「――え!? 不味いッ??」


状況の悪さに、思わずエドガーは愚痴を零し、一言も声が発せられなかった厨房で呟いた、エドガーの言葉は、簡単にカリスへと届き、カリスはエドガーに振り返りながら、聞き返した。


「え? あ、違う違う。

料理じゃなくて……。

ちょっと考え事だよ」


「なんだ、考え事か……。

――お貴族様の事?」


料理の評価ではないと知ったカリスは、ホッと息を付きながら、調理へと再び集中し、作業をしながらエドガーの悩み事を言い当てた。


「ん? まぁ……、そうだね」


「やっぱりか。

お父さん、エドガーが何考えてるのか分からない事が多いけど、危ない事は止めてな??」


カリスは、エドガーの新作料理の提案もあり、自分の子供でありながらも、その異質さには気が付いており、またもや計画や策略を考えていると推察していた。


エドガーの考えを、具体的に推測するまでには、至らなかったが、カリスは、エドガーが悪い事をしようとしているとは思っておらず、エドガーを止めようとまではしなかった。


「危ない? 大丈夫、大丈夫。

俺はビビりだからね~。 危険を感じたら即座に逃げるよ~~??」


「本当か? ファラも口には出さないけど、心配してる節はあるぞ?

好奇心旺盛で、挑戦的なのは良いけど、無鉄砲にはなるなよ?

――危ない事はしない事。

いいな? これだけは親父との約束、男の約束だからな~~?」


カリスの注意を茶化すような、そんな返答をしたエドガーに、カリスはエドガーに視線を向ける事無く、淡々とした様子で話した。


そしてカリスは続けて、エドガーに語り掛ける。


「親よりも先に子供が逝ってしまうなんて、こんな悲しい事はないんだから……。

せめて孫を見せるくらいの年齢ぐらいまでは、元気に成長し続けてくれよ~~。

――よしッ! そろそろ出来るぞ!!」


料理に集中力を割いていたカリスは、発言する内容を事細かく配慮しておらず、ただただ本音を駄々漏らしていた。


カリスのそんな発言に、エドガーは今まで、考えもしなかった生前の両親、上原うえはら のぞむとして生きていた頃の両親を思い出す。


上原 かなでを亡くし、そして恐らく、その後に望までもを亡くした両親の心情を、エドガーは想像し、カリスの言葉をより深く受け止める。


「――分かってるよ。

気を付ける」


カリスの言葉を、今度は茶化す事は無く、エドガーは真面目に受け答えをし、頭の片隅にカリス達の思いを刻んだ。


そして、そんな閉店をした酒場に、来訪を告げるベルが鳴り響く。


「あれ? こんな時間にお客さん??」


酒場は既にCloseの看板を出しており、看板を出す事で、来店するお客さんが入ってくる事は殆どなかった。


「扉、まだ鍵閉めてなかったかも。

エドガー、お客さんの対応と鍵閉めお願いできるか?」


「了解!」


カリスに指示され、エドガーは厨房を出ていき、フロアへと顔を出す。


「すいませ~~ん、お客さんッ!

今日はもうッ……」


来訪者に声を掛けながら、フロアへと顔を出したエドガーは、来店した人の顔を見るなり、途中で言葉を途切れさせた。


「おう、ガキンチョ。

一年半ぶり」


フロアにいたお客は、エドガーにとても縁のある人物であり、最近は酒場への来店も、極端に減った事から、久しぶりに顔を合わせる人物でもあった。


「ジェイスさん?」


フロアにいた来訪者は、トレブ・ジェイスであり、最近は見慣れないジェイスの姿に、エドガーは驚いた。


「久しぶりに、話したい事があってな」


ジェイスは、何か困った表情を浮かべ、頬を軽く描くようにして、エドガーにそう告げた。


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