推しの令嬢、守護します! 1-14
トレブ・ジェイス子爵。
現在はガルバニア王国の大商人であり、元々は平民の商人であった。
ここ数年で彼の商売は大いに成長し、巨万の富を得た事で、ガルバニア王国の中でも有名になった。
そして平民であったジェイスは、ガルバニア王国の貴族、トレブ家に婿養子として籍を入れ、晴れて貴族の身分へとなったいた。
「話を戻しますが、数年前です。
私は、エドガーのしつこい弟子入り要請に、辟易しておりました。
――子供の戯言です、すぐ諦めると高を括っていた私ですが、エドガーは諦める事無く。
私は売り言葉に買い言葉で、お金を積めば面倒を見てやると、エドガーに話しました」
レベルタは、オルレッド・ガウスマンが知りたいであろう事を、順を追って話し始めた。
「金額にして、1000万ダリズ。
子供に用意できる処か、大人にも難しい……。
いや、平民の出自であれば、急に用意できるはずもない金額です」
レベルタの言葉に、ガウスマンも同意し、貴族で裕福であるガウスマンであっても、そこまで浮世離れしてはおらず、その難易度の高さはよく理解できた。
1000万ダリズは、平民の大人が30年、40年真面目に働いて、やっと手にする事が出来るかどうかの大金であり、冒険者として超一流のレベルタであっても、すぐに用意する事は出来ない、それ程の金額であった。
「それで、今は講師をしておるのだろう?
用意してきたのか…………??」
ガウスマンは真剣な表情でレベルタに問いかけ、レベルタは首を縦に振り、それを肯定した。
「はい。 用意してきました、当時7歳のガキが……。
そして、何故かエドガーの援助人として現れたのが……」
「トレブ・ジェイス子爵…………。
一体何故? どういう関係なんだ……」
レベルタの言葉を最後まで聞くことなく、ガウスマンは援助人の名前を呟き、エドガーとの関係性がまるで見えてこない事から、謎が深まるばかりだった。
「ジェイス子爵との関係は、分かりません。
指南をしながら探りを入れ、3年ですが、まるで関係が分かりません」
「そうか……、こちらからも調べてみるとしよう。
――して、話は変わるが、レベルタよ。
其方、ジェイス子爵が如何にして、普通の商人から大商人にまで成り上がったか、知っておるか??」
「風の噂程度には。
何やら、料理のレシピを高値で有名店に売りつけたり、様々な素材を取り寄せ、多くの職人を雇っては、色々作らせ売っているのだとか……?
今では、彼独自の工房があり、多くの職人を抱えているとか、なんとか……。
すみません、詳しくは知りません」
ガウスマンの質問に、レベルタは町の噂程度の話しかすることが出来ず、具体的にジェイスが何をやっているのか、正確に伝える事が出来なかった。
レベルタの不十分な答えであったが、ガウスマンは何故か、レベルタの言葉を聞き、噛み締めるように頷く。
「いや、そこまで知っていれば十分だ。
私も詳細を細かく詰めれてはいないからな。
――――だが、レベルタよ。
お前の知識でもそうだが、この話、おかしくないか??」
ガウスマンの言葉に、レベルタはピンと来ておらず、困惑した表情を浮かべた。
そして、そんなレベルタを差し置き、続けてガウスマンは話し続ける。
「ジェイス子爵は、元は平民の商人だ。
しかも、調べるところによると、成功する前は裕福では無かったと聞く。
――そんな、商人が職人を大量に雇って工房??
今現在は利益が出ているとはいえ、元手は?
金の無い商人だ、腕の良い職人達とのコネクションは??
一人や二人、知り合いがいてもおかしくは無いと思うが、作ったのは巨大な工房だ。
職人一人や二人を雇った所で立ち行かない」
「確かに……、妙ですね」
ガウスマンは、ガルバニア王国に訪れた理由にも触れる。
「この国は、最近妙な出世を遂げる者がいる。
平民が子爵になど……、大問題だ。
妙な魔工具を作る技術者、偉大な発見をした冒険家。
パーム帝国の貴族は、偶然だと、奇妙な事が重なる事もあるのだなと、そんな意見ばかりが散見されるが、私は変だと考えておる。
――そして、これは私が秘密裏に掴んだ情報なのだがな?
どうやら、ジェイス子爵とやら、商売が成功したから、巨万の富を得たというわけではないらしい」
「どうゆう事で?」
ガウスマンは自然と、声のトーンを落とし、レベルタも緊張感を漂わせながら、ガウスマンの次の言葉を促した。
そして、ガウスマンは一呼吸置いた後、自分が掴んだ情報をレベルタに流す。
「どうやら見つけたらしい、そのジェイス子爵とやら……。
一つ見つけると、その事業の大きさから、国の運営となり、国営の産業となるアレ……。
――――新しいダンジョンを…………」
「――まさかッ」
ガウスマンの言葉に、レベルタは息を飲み、信じられないといった表情を浮かべる。
「私も俄かに信じがたかった。
このレブカント大陸に見つかった最後のダンジョンは、約50年もの前のもの。
今は、パーム帝国の領土に位置している事から、パーム帝国が管理、運営をしておる。
――それがこの、ガルバニア王国の領土で見つかったのだ。
信じられるか? もう既に現存するダンジョンで、見つかっていないものは無いとされている、この時代にだぞ??」
ガウスマンは話していく中で、次第にテンションが上がっていき、高揚しているのがレベルタからも見て取れた。
「ダンジョンの産業は、利益が凄まじい。
一つ見つかれば、巨万の富を得たも同然。
――そして、そのダンジョン発見者には、当然膨大な報酬が国から与えられる。
一生遊んでも、使いきれない程の金だ。
地位を望めば、爵位にすら付ける。
ジェイス子爵は、婿入りした事で爵位を得たが、個人が持つ大金を考えれば、婿入りしなくとも、それなりの地位は確立されたはずだ……」
ガウスマンはジェイスの事をよく調べており、ガウスマンの得ているものは、100%真実であった。
「そして、ジェイス子爵はその金を元手に、商売を拡張。
現在に至るというわけだ。
――そんなジェイス子爵が、エドガーを援助……。
きな臭いにも程がある」
ガウスマンはレベルタと話した事で、エドガーの不気味さ、興味深さがより一層深まり、調べないわけにはいかない状況に、より陥っていた。
「レベルタよ。
私は、まだ数日この国に滞在する。
貴殿からも、更なる情報を得たい。
――協力をしてくれるかな?」
「――とても気が乗りませんが、オルレッド様が滞在する間は、協力いたしましょう。
ただ私の言った事は、どうか、片隅に留めて置いてください」
ガウスマンはレベルタの協力を取り付け、レベルタは気が乗らないながらも、ガウスマンの願いを断る事は出来ず、それを承知した。




