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【悪役令嬢救済】推しの令嬢、守護します!  作者: 下田 暗
第1章 少年エドガー

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推しの令嬢、守護します! 1-13


「私とあの少年??

――いや、特別な事など何もないぞ? ただ、偶々居合わせた酒場で出会っただけ。

別件だが、ガルバニア王国で少し興味深い事があってな……。

それを調べる事と旅行を兼ねて、この国に訪れ、あの酒場を利用した、それだけだな」


レベルタの質問に、オルレッド・ガウスマンは、不機嫌な態度を一切見せる事無く、思い返すようにエドガーとの出会いを語った。


ガウスマンはレベルタにエドガーの話題を、いきなり出された事に困惑し、レベルタを不思議そうに見つめ、ガウスマンの言葉を聞いたレベルタは、少し考え込むようにして黙り込み、ガウスマンに続けて進言する。


「オルレッド様、急なご助言を申し訳ございません。

これから先、あの酒場の少年、エドガーとの接触は控えるようお願い致します」


レベルタは首を垂らし、ガウスマンにそう告げ、いきなりの言葉に、ガウスマンは驚きを隠せず、間髪入れずに、その理由を問う。


「レベルタ。

――話が急すぎて理由が分からん。

まず、貴殿とかの少年はどういった関係なのだ」


レベルタの急な助言に納得できるはず無く、酒場は勿論、エドガー自体に興味を持ち始めたガウスマンは、レベルタのそんな一言で、エドガーと関わるのを控えようとは思わなかった。


「私とあの酒場の少年、エドガーは端的に言えば、教え子と師の関係になります。

剣術をエドガーに教えております」


「なにッ!?!? 貴殿が??」


レベルタの言葉に、ガウスマンはこれまで以上に驚きの表情を浮かべた。


「どういった風の吹き回しだ??

貴殿が今まで誰一人として、弟子を取った事など見た事も、聞いた事も無いが……?」


レベルタをよく知るガウスマンは、信じられないといった様子で話し、レベルタはそんなガウスマンを顔色一つ変えず見据えた。


レベルタは超一流の冒険者であり、冒険者としての功績はレブカント大陸全土に及んでいた。


ただ、レベルタは一匹狼の気質があり、必要がなければ、他の冒険者と共に一緒に仕事をすることも無く、ガウスマンの知っての通り、弟子を取ったりという事も、今まではしたことがなかった。


「レベルタよ、何があった?

あの少年は何なのだ??」


レベルタの心境の変化も、レベルタを返させた年端のいかない少年エドガーも、両方奇妙に感じ始めたガウスマンは、冷や汗を少し描きながら、続けてレベルタに質問をする。


「――私があの少年と出会ったのは、三年前になります。

当時、私は仕事の兼ね合いでガルバニア王国に訪れ、あの酒場に行ったのも偶然でした」


レベルタは当時を思い出しながら話し始めた。


「腹を満たす為に、初めてその酒場に訪れた私に、エドガーはすぐに私に対して、弟子入りを申し出てきました。

――私の事を知ってか知らずかは、分かりませんが、勿論子供の戯言だと、冷たくあしらいながらエドガーの誘いを当初は断っていました。

酒場で出される料理は絶品だった為に、私はガルバニア王国滞在中、酒場に通う様になり、その度にエドガーはしつこく弟子入りを申し出ました」


レベルタはエドガーのあの時の行動を思い出し、少しだけ顔を歪めさせた。


「そして何度か断った後、ある出来事が起こります。

ガルバニア王国での仕事は、王国が保有するダンジョンの調査でした。

その帰りです」


レベルタは大雨が降っていた、レベルタの運命を変えた、その日の事を鮮明に思い出しながら、ガウスマンに話す。


「大雨が降ったその日。

ダンジョンがある遺跡の近く、王国へ帰る為の帰り道の中に、ネーフェリア森林という一帯があります。

ダンジョンほどではないですが、ネーフェリア森林には、魔獣が多く生息しております。

その一般の人間は、立ち寄る事の無い森林にて、ダンジョンから帰る私を、エドガーは待ち伏せていました」


大雨の危険な森林の中、当時7歳の少年が、帰りを待ち伏せしているその異様な光景に、レベルタは今、思い返しても気色悪さを感じ、話しながら当時感じた気持ちを思い出した。


「大雨の中、立ち尽くすエドガーに異常な気味悪さを感じましたが、エドガーは当時、その場には一人連れを連れておりました。

――オルレッド様はトレブ・ジェイス子爵という人物をご存じですか??」


「ッ!?」


レベルタの話を聞き入っていたガウスマンは、聞きなじみのある人物、そして、自分がガルバニア王国に訪れた理由の一人の人物の名前の登場に、三度驚いた。


ガウスマンは声にならない驚愕の声を上げた後、声を振り地堀ながらレベルタの質問に答え始める。


「――わ、私がこの国で調査している人物の一人だ。

旅は趣味だが、ガルバニア王国には最近、面白い話もあってな?

趣味のついでに調べようと……、貴殿に繋がるのか??」


「オルレッド様が何を目的に、そのトレブ・ジェイス子爵を調べているかは存じませんが、私に繋がると言うよりも……、あのエドガーに繋がっている可能性は高いです。

――ですから、オルレッド様、もう一度助言致します。

あのエドガーには、近づかない方が宜しいです」


「いや、レベルタ。 無理だ。

今、無理になった。

そんな興味深い人物を野放しに出来ない。

――それに、其方の教え子なのだろう?? 事情はまだ分からんが、悪い人間ではあるまい。

私も何度も会話をしたが、悪人には見えなんだぞ?

何故そこまで敵視? 危険視しておる」


レベルタがどうしてそこまで、エドガーから遠ざけようとしているのか、ガウスマンは想像が付かずに、理由を直接、レベルタに尋ねた。


そして、ガウスマンの問いかけに、レベルタは一呼吸置いた後、淡々と答え始めた。


「――オルレッド様、亡者と呼ばれる者をご存じで??

一部の冒険者界隈、あるいは軍隊にも浸透している隠語です」


「亡者? 分からん。

死んだ者の事か??」


「違います。

亡者とは、何かに取り付かれた者を言い表します。

その何かとは、主には復讐心です。

――復習に駆られ、復讐する為だけに生きる、自分の命すらも簡単に軽んじ、ただ目的の為に生きる者を差します」


「復讐? あの少年がか??」


レベルタの言う言葉は理解できたが、レベルタの言う亡者がエドガーに該当するとは、ガウスマンは思えず、当然レベルタに聞き返す。


「確かに、エドガーを動かすモノが何なのか、それが復讐だとは私も考えません。

彼はまだ10歳。

それに両親も健全であり、戦争とは縁のない、幸せな家庭で過ごしております。

――ただ彼の纏うソレは、正に亡者のそれと全く同じです。

あの日、大雨の中で私を待つ彼に、強く私はソレを感じました」


レベルタの言葉に、ガウスマンは言い淀み、それでもエドガーと接触する事を諦めきれないのか、ガウスマンは難しい表情を浮かべる。


そんなガウスマンの心情を察してか、レベルタは更にガウスマンに告げる。


「亡者は悪意無く、周りを不幸にします。

目的達成以外、自分の命にすら興味の無いのです。

――戦場を生き抜く戦士達は、例え味方であっても、亡者には近づかないです」


レベルタは自分の習った教訓を踏まえ、ガウスマンに伝え、これでエドガーへの接触を、ガウスマンが諦めらなければ、自分もガウスマンを止めるのは諦めようと、そう考えていた。


そして、レベルタのそんな言葉を一通り受け止め、ガウスマンは答えを出す。


「――レベルタ、貴殿の忠告、しかと受け止めよう。

ただ、ここまでの話を聞いて、あの少年と接触しないわけにはいかない。

貴殿の忠告を頭の片隅に留めながら、今後も彼と話をしていく」


「承知しました。

出過ぎた真似を失礼致しました」


ガウスマンの決定に、レベルタはこれ以上異を唱える事はせず、ガウスマンの決定を尊重し、今までの非礼を詫びた。


「よい。 失礼などと微塵も思っておらん。

それよりも、トレブ・ジェイス子爵の話。

何故、あのエドガーと共に居たのか、まだまだ聞きたい事がある。

話して貰えるか? レベルタよ」


「はい。 オルレッド様」


ガウスマンの願いに、レベルタは素直に応じた。


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