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相模川高校 その93

 その後、桜木にインタビューを受けた。


「なぜ頭に乗ったのですか?」


 俺は説明した。


「あの大きさのハチは、普通には飛べないのですよ。重たいですからね。普通なら滑空しているサイズですね」

「それにハチは自分の重量より重たいものも運びますが、あのサイズになるとペイロードが少ないはずなのです」

「それにハチは、30度から45度ぐらい頭を上げて飛びます。その姿勢が一番揚力が高いのです。だから頭にぶら下がって、バランスを崩していたのです」


「洗剤は? どうして?」


「へ?」


「ああ、界面活性剤だったらなんでも良かったんだけど、洗剤と言った方がわかりやすいでしょ」

「昆虫は腹に有る気門で呼吸しているのが多いから、そこを塞ぐと息ができなくなります。しかし、気門の周りは、毛が生えてたりして気門が詰まらないようになっています」

「そこで、界面活性剤を使うと毛の根元まで、洗剤が浸透するのです」

「あとは、泡で気門が塞がれて、息ができなくなるのです」


(要るのか? このインタビュー)


 翌日、蘇我さんから、相模川高校から応援に来て欲しいと連絡が入ってると話があった。


「ああぁ、俺はパス」


 俺は、あそことは関わりを持ちたくないので断った。

 すると、蘇我さんが、自分がいるから大丈夫と言って来た。


(いやいや、桐崎が居れば大丈夫じゃないか。俺要る?)


 この付近で数日の間に、巨大スズメバチによる被害が出ており、唯一退治したのがうちの学校だったらしい。


 桜木がアップした映像を見て、救援依頼が来たらしい。

そして、そこに映っていたのは、いつもの俺たちだったので、直接蘇我さんに連絡を取って来たらしい。

 ちなみに俺は、尻を突き出して、スズメバチにしがみ付いているだけだった。


(インタビューは全部カットかよ。これじゃあ、ただのおかしい奴じゃん)


 栃原先輩の所にも、救援依頼があったらしく、先輩が桐崎に依頼に来ていた。

 依頼内容は、「桐崎に連絡を取って、応援に来て欲しい」というものだったらしい。


俺は、御茶ノ水の東京支部に、巨大スズメバチに関する依頼があるか連絡を取ると、何件か入っているというので、学校終わりに見に行った。神奈川の北部からだと、結構時間がかかるのだ。


 放課後、新宿のダイバーズショップと秋葉原とホームセンターで買い物して、明日の準備をした。


 サザンには、蘇生と急速再生を準備してもらって、岩作成のワンドを作ってもらった。

サザンの魔力では、相当大きな岩が作れるはずだ。因みに杖の材料は、近所の公園に落ちていた枯れ枝だ。


 翌日、相模川高校に行くと、俺たちの高校と違って、相当、被害にあっているようだった。正門と裏門にパトカーが止まっており、中に警官も詰めていた。


 魔法部の顧問、山田先生が礼を言ってくる。

「忙しい所をわざわざ有難うございます」

「我が校は、もう二人も連れ去られてね、困っているんだ」


「それはお困りでしょう」

蘇我さんが適当に相槌を打っている。


「それで、奴等を退治する方法教えて貰いたいのだが、あの、洗剤作成魔法を教えて貰いたい」

山田先生はがっつり頭を下げて来た。


(ヤッパリ、俺要らないじゃん)


「え?」

靏見さんと蘇我さんが驚いている。


「普通に、食器洗い用の洗剤ですけど」


「普通の洗剤を、あんな大量に生成するのは無理だ。君達はどうしてるんだ?」


(それが無理なら、無理だろうが! 何言ってるんだ)


「うーん」


 みんな頭を抱えてしまった。


「来たーっ!」

何処かで声がする。誰かが表を見張っていたらしい。


「来たーっ!」

「来たーっ!」


(毎日来るって、スズメバチに餌場認定されているんじゃないか)


「ギャアー!」

「逃げろー!」


声が二箇所から聞こえている。


 俺は、桐崎が行かない方の悲鳴がする方に行った。


 窓からスズメバチが侵入して、女子生徒が捕まっていた。それを助けようと、男子が箒で蜂を殴っている状態だった。


 俺は50cmほどに切った塩ビパイプにシリコン接着剤を中に塗って、スズメバチの針にはめた。

 サイズが大きいが、流石に素直にハメさせてはくれず、腹を前に曲げて、攻撃態勢を取っているところを、左手で掴み、パイプをはめた。


 そして、必死に手足をバタつかせて抵抗する女子高生の上着のポケットに、携帯電話より一回り大きな機械をポケットに入れた。


 後、ブレザーを剥ぎ、ブラウスの胸ポケットにコミュニケーターを入れて、上から抑えた。ぷにゅっと柔らかい胸がへこむ。コミュニケーターには強力両面テープを貼ってあったのだ。強力と言うのは商品名で、普通にホームセンターで売っている商品だ。ポケットの上から抑えると、中の生地に引っ付くのだ。が、胸が柔らかいので、なかなか引っ付きにくい。


「お前何やってるんだよ!」


「この状況で、痴漢か?」


「退け!」


 俺は引っ張り出された。


(目的は済んだからもう良いけど、なぜいつも痴漢なんだ?)


 箒で叩いたぐらいではひるむわけもなく、スズメバチは、悠々と彼女を連れて飛び出して行った。


(だから言わないこっちゃない。まあ、それが目的だが)


 山田先生と桐崎達が来た時には、俺は皆んなに痴漢扱いされて、前に突き出された。


「先生! 吉田が! 吉田が連れ去られました」


「こいつ痴漢ですよ。どさくさに紛れて、吉田さんの胸を触っていたんですよ。それで吉田が連れ去られたのです」


(しらねぇよ、俺、文字通り何もしてないじゃん)


「他に、誰か連れ去られたか?」


「吉田が、こいつのせいですよ」


「吉田だけだな」

「君たちはここに居ろ」


「ちょっと君もここで待っていて欲しい」

山田先生が俺に言って来た。

俺はここでお留守番らしい。

続いて、桐崎達を見て、

「車で追いかけるから来て欲しい」

と言って出て行った。


「おい、皆んな! 追いかけるぞ!」


男子生徒たちも表に出て行ってしまった。


 俺は、食堂前の自販機に向かうと、瀬戸山さんが付いて来た。


「あれ? お留守番ですか?」

ちょっとふざけた調子で聞いて見た。


「車に乗れないのよ。いっぱいで」


「そうなんだ」


「今度は何してるの?」


「珈琲でも飲もうかと思って」


「ふーん」


「いや、まあ、スズメバチの巣を見つけようと」


「ふーん」


 後ろに桜木も栃原先輩も付いて来ている。


(なっ、なんでみんなこっち来るんだよ。バレてるじゃん)


「向こうに行かなかったの?」

「追っかけないと」

栃原先輩に話を振った。


「空飛んでるのに、車で間に合うかよ」

「で、次はどうするんだ?」

桜木の方が答えて来た。

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