魔法部のミーティング その89
誰かが言った。
「当事者の桜木と藤波を呼べ!」と。
俺を教室まで、瀬戸山さんが呼びに来た。
「え? 俺は魔法部の事は関係ないよ」
「いいから来て」
(何が良いのか分からないが、女子がこう言ったときは逆らってはいけないのだ)
俺が魔法部の部室に連れて来られた少し後、桜木も連れて来られていた。
俺たち二人には、会議のあらましを説明された。
説明されてもどうなるものでも無い。
しかし、どうしたいかは、ヒシヒシと伝わって来る。
「俺は、試合に負けて、出入り禁止になっているんだけど」
拗ねた様に桜木が答えている。
「ああ、それなんだが、あのバカのインチキの可能性があるんだよ。お前は黒焦げで意識がなかったけど、金田部長のポケットから、使われた魔晶石が出て来てな。なあ、倉田!……先輩」
「ええ? えっと、えええええ、そノォ。はい」
「「「「「「「ええぇぇ〜」」」」」」」
「まあ、あくまでも可能性だから、本人に聞いてみないとわかん無いけどね」
「じゃあ、あの試合は無効なの?」
瀬戸山さんが聞いて来た。
(上手いパスだ。GJ! 瀬戸山さん)
「やったーっすよ」
「ウオォ〜!」
「無効じゃん」
「無効ね」
「キャーッ!」
部室が一気に盛り上がった。
「いやいや、まだ無効と決まった訳ではないよ。あくまでも可能性だから」
「本人に聞くまでは分から無いだけで」
「そう言う事だ、栃原、桜木君」
「勝負はまだ決まってい無いのだ」
「ククククッ」
「春まで、部長が帰って来るまで、お預けだなぁ」
「いえ、俺は負けましたし」
「それが、反則の疑いがあるんだそうだ。金田が復活するまで待ってやってほしい」
「なあ、倉田!」
言われた倉田だって、上級生の元部長に逆らえるわけもなく、この空気の中、またもや4回目のループに突入はしたく無かった。
そして、このまま復活出来るかどうか分からない金田部長を、ここの部員全員を敵に回して、擁護する義理も根性もなかった。
「そうですね。ポケットから魔晶石が出て来たのは事実ですし、疑惑があるなら、回復するまで待ってから事情を聞いて判断すれば良いでしょう」
「ではそう言う事で、桜木君、申し訳ないが、君の出入り禁止は一時保留ということにしていただけないだろうか?」
「しかし、……でも……。」
「じゃあ、そう言う事で」
「あと、部長の不在をフォロー出来る人を選ばないといけないな」
「栃原副部長は部長代行へ、倉田は副部長補佐をしてもらおうかしら?」
「金田部長が復帰するまでの間よ」
鏡屋元部長が、一人で喋って、サクサクと決めて行く。他の部員達も反論は無い。ここは日和って、従った方が得だと判断したのだろう。
「俺はもう帰って良いかな? 他所のクラブの事など関係無いし」
「ああ、ご足労かけて悪かったね。また寄ってくれよ」
俺は、魔法部の部室を後にした。
大体、5時半ごろ、この時期にはもう日が暮れている。西の空が少し明るい程度だ。
俺は、時間になったので第二体育館の前に来ていた。
これから、文化祭の打ち上げダンス会があるのだ。
本来は、グランドでキャンプファイヤーを行い、フォークダンスを踊っていたらしい。
当時は女子校で、やーがこのキャンプファイヤーが結構盛り上がったらしい。当時は、女子にモテる女子が結構居たらしいのだ。
が、今は、グランドで行うのは、ヨサコイダンスを踊る有志のユニットと言うことになっている。
使う曲などは、事前に実行委員会から発表されており、各々個人で勝手に飛び入り参加して踊っているわけだ。
また、それを見に来るギャラリーも多い。
体育館で行われるのは、アメリカのプロムを真似た社交ダンスだ。
第一体育館の方は、競技にもなっているぐらい真剣だ。
そちらは、ダンス部やそこそこダンス教室に通っていそうな奴らが踊りを競っているのだ。
俺達がいる第二体育館は、所謂、恋人達のダンス会なのだ。ある意味、こちらの方が盛り上がるのだが。
こっちは相模原商業高校生の憧れのダンス会なのだ。この時期に恋人が居ないと参加出来ず、参加すれば公認のカップルと言う事になるのだ。
全てのダンス会は、制服で参加という事になっているが、特に女子は色々と工夫を凝らしている。ノーマルの制服の女子などいないのだ。
化粧とアクセサリーは、節度を持っていれば自由だ。
俺は瀬戸山さんを待って居た。
ここで待って居る者は、たいてい男子だ。中等部のダンス会は中等部の体育館で行われるので、基本、ここには居ない。高等部と付き合いのある子はこちらに来て居る。それはそれで、中等部では一種のステータスなのだそうだ。
「待ったぁ?」
瀬戸山さんが現れた。
スカートに細工がしてあり、裾が長く、シャツと同色系でピンク。シャツも襟や袖にヒラヒラとした飾りがついて居る。
遠目には、ドレス風に見えなくも無い。ここに来て居る女子は、全員ドレスの様な制服を来て居るので、瀬戸山さんはおとなしい方だ。
「いいや。全然、今来たところだよ」
二人で、第二体育館の中に入って行く。
体育館の中は、中央がダンススペース、周囲に机が並べてあって、立食形式のオードブルが並べてある。
机の前に休憩用の椅子と壁際にも椅子が並べてある。
俺達は、壁際の椅子に座って、飲み物をもらって来た。
会場のスピーカーからは、先生達の文化祭の総括や批評、なぜか、先生自身の紹介と挨拶が流れて居る。
入口の方でどよめきが起こって、栃原新部長代行と桜木が入って来た。
何故か、桜木は俯いて居る。
「ああ、俺の栃原さんが」とか、「あいつ黒焦げだったのに」とかの声も聞こえる。
(お前ら、隣に彼女がいるよなぁ。『俺の栃原さん』じゃねぇよ)
遠く距離があったので、挨拶もせずに放っておいた。
先生の話も終わり、音楽が流れ出した。まだ踊って居る生徒はチラホラと居るだけだ。
もう少し場が盛り上がらないと、一般の生徒は踊り難いのだ。
「長い文化祭だったね」
「色々あったね。ダンス部だけかと思って居たら、向こうの世界まで行ったり。いつもあんなことしてるの?」
「まだ、2回目だけどね」
「ふーん、私ね、すごい事になっているの」
「なに?」
「精霊魔法のレベルが凄いの」
「(+3)を貰ってたものね。普通じゃ無い数値になってるだろうね」
「そうなの、素質が13、スキルレベルが39も有るの」
「人間が獲得出来る限界レベルを超えているね」
「そうなの、ビックリ」
「瀬戸山さん? ドラゴン、5匹と言うか五頭と言うか、倒したでしょ。それに無数のワイバーンを殺して居たでしょ。普通の人は、一頭も倒せないの」
「え? そう言えば」
「でも、あれは勇人が教えてくれて」
「精霊界の精霊達が戦ってたんだよ。俺は何もしてないよ」
「じゃあ、私が倒した事になってるの?」
「そう、それも、習いたての精霊魔法で」
「あああぁぁ!」
「カンストしちゃったんだよ。チートだよね。そこに、精霊王から(+3)もらったから、カンストして余っていた分で成長したんだろうね」
「う、うん」
「今、人類最強の精霊魔法使いの1.5倍ぐらい強いよ」
「ちょっとした妖魔ぐらいかなぁ」
「妖魔……。」
「校内一かな」
「踊ろうか?」
「うん」
瀬戸山さんの頭が俺の胸ぐらいの高さになる。
歩幅を小さめに、彼女の背中に手を回して踊っている。
瀬戸山さんの肩が上がっていて、少しも優雅さが無いのは、愛嬌か?




