文化祭 最終日 その87
約束の時間になったので、校門の方で待っていると、花田さんと森野さんがやって来た。
花田さんは、さっぱりと髪を切られていて、カジュアルなスーツを着ている。あの、ニートな雰囲気は無いが、太っている事には変わりない。
森野さんは、普通の活発な中学生だ。ダブダブな原色に大きなキャラクターを描いたパーカー。あの魔法使いなコスプレはなんだったのだろう?
俺には分からないが、多分このぐらいの子が読む雑誌には、こんな服装のモデルさんが写っていそうな。そんな服である。
「お久しぶりです」
「やあ、久し振り、本当に高校生なんだ」
「わあぁ、あんな勇者が、本当にただの高校生なんだ」
「何もしていませんよ。全部、妖精達が自分でした事ですよ」
「いやいや、謙遜をして良いレベルじゃないよ」
「瀬戸山さんは、今はよそのクラブにバイトに行ってるので、そっちへ行きましょう。顔を見ると喜びますよ」
俺は、二人を写真部のブースに連れて行く。
教室に入ると、写真集の販売とサイン会と一緒に写真を撮れるブースを一周するようになっている 。
ここでは、魔法使いと一緒に箒に乗って、写真を撮れるのだ。
俺は、二人に一冊づつプレゼントして、瀬戸山さんの列に並ばせた。
「ああ、ハヅキー!」
森野さんが瀬戸山さんに手を振って、跳び上がって喜んでいる。
これぐらいの子は、表現が豊かだ。
瀬戸山さんがこちらに気付いて、小さく手を振っている。
花田さんの目が、栃原先輩と蘇我さんに釘付けになっている。
そりゃそうだろう、俺だって綺麗だと思うし、可愛いと思うもの。
二人を瀬戸山さんと撮影する列に並ばせて、俺は下がって見ている。
森野さんと花田さんの二人は、教室の中とは言え、空飛ぶ箒に乗る事は初めてらしく、バランスを取るのを苦労している。体がぐらぐらと揺れるので、箒もふらふらと動くのだ。
(そりゃ、大抵の人は、箒に乗らないからな)
「キャーッ! はづきぃ〜!」
森野さんが、瀬戸山さんに抱きついたり、テンションアゲアゲで喜んでいる。
(箒って、そんなに楽しいのか?)
「ちょっと、そこで待ってて」
瀬戸山さんが言ってきたので、三人で待っていると、みんなを読んできてくれた。
「一昨日、行ってきた精霊界での友達」
「花田さんと森野さん」
「二人は、勇者として呼ばれていたんだよ」
と二人を紹介している。
俺を除く、全員で集合写真と残り三人のサインを貰って、写真部を出た。
瀬戸山さん達は、まだ仕事が残っているので、続きも俺が案内する事になった。
喫茶店の模擬店に入って、少し話をした。
「なんか、夏休みに魔女のカッコして踊ったら人気出ちゃってさ。今じゃ、学園のアイドルみたいになってるよ」
「この学校は、魔法学科が有るから、魔法を使える生徒は結構いるのにね」
「ええ? 魔法学科ってあるの?」
「ああ、2クラスまであるから、結構いるよ」
「勇人も?」
「ああ、俺も魔法学科だけど、魔法は使えないのにね、なぜか入学できたんだ」
「使えなくても入学できるの?」
「学門として、教えてはくれるらしいが、実技の点数はつかないよ」
「私も来たいなぁ。寮って有るのかなぁ?」
「スポーツ科の奴らは、他所から来て、寮に入ってるけどね」
「受けてみようかな?」
「ああ、親に相談したらいいのじゃない? 遠いの?」
「秋田」
「……と、遠いね……。」
「こっちは、花田さんが居るし」
(こいつはニートのロリコンだろう。大丈夫か? 真性なら、高校生になれば安全だろうけど。ただのオタなら危ないだろう)
「あはは、本当だね」
(お前が危ないんだって)
「花田さんはお近くなのですか?」
「ああ、町田なんだ」
「町田のおばさんの?」
「おう、いつでも見舞いにきてくれよ」
「町田のおばさんって誰? 病気なの?」
森野さんが不思議そうに聞いてくる。
「「あはは」」
(やっぱり、あぶねぇじゃねぇか!)
次に、三人で二年生がやって居るメイドカフェに入った。
食事はのメニューはカレーとオムライスしかない。文化祭のブースのメニューだから仕方がない。
オムライスには、一応、お約束でハートを書いてあり、愛情を注入してくれている。
あと、カフェアートという物をして貰って、三人で遊んだ。
午後からのダンス部の演技を見に体育館に行き、割といい場所を確保した。まあ、整理券をダンス部から横流しして貰ったのだけど。一応、俺も功労者だからな。
ダンス部のダンスに「witch sisters」が参加しているのだ。
本日の最終回の公演だ。文化祭も最終日なので、もう「magic girl」の予定は無い。はず……。
今日が見納めになるのだ。
音楽が鳴り、ダンス部の演技が始まり、四人が登場する。
会場は、やんやの大騒ぎになるが(森野さんなんかは椅子の上に立ち上がっている)、やはり、四人は踊りが下手なのだ。
場数をこなし、ダンス部のメンバーが上手くなっていくので、余計に目立ってしまう。
箒に乗って飛び去るシーンで、箒から各自のカラーの光の尾を牽いて、星を飛ばしている。この演出は知らなかった。
そして、バク転したり、螺旋状に飛んだりと体育館の中を自由に飛んでいる。どうやら、最後のお別れ公演の演出らしい。
我々の真上を通過するとき、瀬戸山さんの耳の辺りがキラリと光ったのを勇人は見逃した。
文化祭はあと二時間有るのだが、あとの出し物をする連中が可哀想になる。
「うわーっ、綺麗! たのしぃー!」
森野さんが感激して、両手を振ってアピールしている。
(きっと、向こうからは見えて居ないと思うぞ)
「私、絶対、魔女になる!」
「うん、有希ならなれるよ」
(何を盛り上がってるんだか。もう、魔法使いだろうに)
「何を勉強すればいいんですか?」
「んん? 俺に聴く? 待っときな」
俺は、桐崎に電話をして、校内コンビニまで来てもらう約束をした。
そして、俺達もコンビニの方に移動した。
「ああ、ごめん。この子に魔法の勉強方法を聞かれて」
「何か見繕ってあげて」
「その格好、お前もダンス部の演技に出てたの?」
「出てたよ。靏見と一緒にね」
(悪いことしたなぁ。全然、気付かなかった)
「気付かなかったよ」
「いいよ。みんなそうだから」
「で、この子に本を選ぶんだね」
「頼むわ」
桐崎は、「コモンマジックスペル大全集 上・中・下 」と「よく分かる魔法陣の書き方」と「楽しいチンカラホイ(すぐ出来る付録付き)」を選んでくれたので、その五冊を買って、プレゼントした。
「こんな高い物を有難うございます」と言ってくれたが、本当、結構な値段になった。
この時、水を一本買って、鞄に入れておいた。




