文化祭 二日目 その86
本日は、文化祭2日目。
我がクラスは、初日のイベントのみなので、本日は登校のみだ。
俺はまたしてもクラスメイトとは会えず、ボッチだ。が、今日はクラスのみんなからのメッセージが黒板に書いてあった。
「藤波君へ、使った大道具、ゴミ捨て場に捨てておいて下さい」
(……。)
確かに、教室の後ろにゴミが山積みになっている。
我が校は、中等部と含めるとクラス数が多く、学校も広く、ゴミ捨て場が遠いのだ。それで、俺に押し付けたようだ。
さて、昨日が長過ぎて、何から整理して良いか難しい。
取り敢えず、ごみ捨てだ。
創作ダンスの劇に使った背景等なので、もう使わない物は折って、畳んで小さくして、ゴミ捨て場まで運ぶ。
教室に戻って、折って、畳んで、運ぶ。
教室に戻って、折って、畳んで、運ぶ。
教室に戻って、折って、畳んで、運ぶ。
なんか、午前中が、ゴミ捨てで終わった気がする。
一人で、昼の弁当を食っていると、数人が帰って来て、各自が弁当を食べ出した。
「藤波、ゴミ捨て有難うな」
「おう! 藤波、ありがとうな」
「藤波、わるかったな。助かったよ」
一言礼を言うと、弁当を食って出て行った。
(礼だけかい! 普通、一緒に回るとかあるだろう! まあ、男同士で回りたくはないな)
また一人になったので、図書室で自習をしておく。
文芸部が、「ワード占い」と言うものをしていて、お客が引いた時に俺もさせられた。
予め、本棚に番号が振られてあり、箱の中に番号札を引き、占いに使う本箱を決める。
目を瞑り、本棚の棚の高さ、場所を自由に決めて、一冊の本を決め、目をつむったままページをめくり、本を指差す。
「そこに書かれた文章が、貴方にとって、今必要な言葉です。大事にしてください」と言う占いだ。
客が居ないので、文芸部のメンバーが俺を取り囲んで見ている。
俺が引いたワードは、「マグネシウムを」だった。
図書室に流れるこの空気、どうするんだよ。俺のせいじゃ無いよ。
「有難う。でも、占いに使う本棚は、限定したほうがいいね」
また、隅に戻って、自習を続ける。
夕方、瀬戸山さんからラインが入った。
『明日、森野ちゃん達が来るって。』
『だれ?』
『昨日、一緒にいたじゃない。魔法使いの森野ちゃん。』
『ああ、昨日の魔法使いか。』
『花田さんと二人で来るって。』
『なんで?』
『会えたら嬉しいじゃない?』
『別に』
取り敢えず、来る事になった。
大体、中学や高校の文化祭というのは、どこも同じようなもので、見ていて興味の湧く物は少ない。
ウロウロと見て回っていると、桜木に会った。
「おい、もう歩き回って大丈夫か? まだ完全に固まっていないんだろう。変形しても大変だから、安静にしていたほうがいいぞ」
「あ、藤波、有難うな」
プイッと向こうに行ってしまった。何か怒っているようだ。
あのあと何かあったのかな?
炭化した手足を再生してあげたのだ。感謝こそされ、怒られる義理はない。今度、桐崎にでも聞いてみよう。
取り敢えず、魔法部に行って、倉田に会わないと。
魔法部は閑散としていて、倉田ら数人が明日の準備と掃除を行なっていた。
「よっ、倉田! 久しぶり、元気だったか?」
「久しぶりって、何か用か?」
倉田は、明らかに俺に逢うのがうれしくない様子だ。
「あれから、金田部長はどうなった? もう元気になったか?」
「まだ、意識が戻りませんよ。それどころか、生死の境をさまよっていますよ」
「長いな」
「頭をスタッフが貫通していたじゃないか」
「ああ、そうだな」
「ところで、例の魔晶石は自分の物って認めた?」
「意識が戻ってないんですよ。聞けませんよ。そんな事」
「じゃあ、もういいわ。それ頂戴」
「え?」
「買うと高いじゃん。余っているなら貰おうと思って」
「駄目ですよ。部長のですから」
「そっかぁ〜。部長の物だもんな」
「いや、そうと決まったわけじゃ無いですけど」
「いやいや、部長の物だよ」
「違いますよ。誰のものか、まだ分かりませんよ」
(こんな物、試合中に出て来た時点でアウトだよ。何言ってんだよ)
「部長のだって」
「まだ誰のものかわからないし、誰も名乗り出ないので、持って行ってもいいですよ」
「悪いなぁ。持ち主が出て来たら、渡しとくな」
俺は大きな魔晶石をせしめる事に成功した。
(しかし、あれは昨日の話だったのか? 気を付けないとね。俺にとって、半月経ってるからなぁ)
俺は、教室に戻って、カバンを取り、下校準備をして帰った。
御茶ノ水と秋葉原に用事があるのだ。定期があるので、八王子経由で行く事にする。
八王子のデパートで普通の扇子と竹の扇子を買い、御茶ノ水に向かった。月に雁と竹林の庵の図柄にした。両方とも男性用で大柄だ。
魔法協会の向かいの店で、樫の木製の短い魔法の杖とミスリル貨を二枚買う。
秋葉原では、魔法使いのアニメのキャラクターが書かれたジッポライターと木のケースのジッポライターを買う。
家に帰って、サザンに憑依して貰う。
「サザン、久し振り」
「昨日、会ったじゃ無いですか」
「ちょっと、作って欲しいものがあるんだけど」
「良いですよ。腹も膨れてるし」
俺は、ミスリル貨を潰して、魔晶石を包む、竜の姿彫り細工をした飾りカバーを作って貰った。
水晶柱の六方向から見たドラゴンが彫られていて、継ぎ目が無いのだ。
一応、銀のチェーンを付けて置く。
「ありがとう。助かったよ」
あと、竹の扇子をミスリル箔で覆って、親骨の部分は厚く覆って、頑強の魔法をかけてもらう。
翌朝、文化祭の最終日だ。
俺が登校しても、朝の挨拶だけで誰もいない教室に一人でいる事になった。
この学校は、クラブ活動は自由なのだが、大抵の生徒は、みんな何かしらのクラブに所属している事が多いのだ。クラスのだし物が終わったので、みんなクラブの方に顔を出しているのだ。
それにしても、一人ってことは無いだろう。誰か居そうなものだが。




