文化祭初日 顛末 その85
そして、精霊王に呼ばれて、謁見の広場に行った。
精霊界は、いつもの青空で、わたのような白い雲が浮いている。時折吹く春風が気持ち良い。
王様は、いつも通り上等そうな椅子に座っていた。周りを妖精たちが囲んでいる。
これから謁見式が始まるのだろう。
テントウムシの妖精に並ぶ様に言われた。
「勇者の皆さん。ここでお待ちください」
「お待ちください」って、王様も座って待ってるじゃん。一体、誰待ち?
すると、二時間ほど王様と客を待たせて、ゾロゾロと妖精たちが急ぎもせず集まって来た。
謁見の広間とその周りの丘が妖精ぜ埋まった頃、テントウムシの妖精が謁見の始まりを宣言した。
「皆さん、静粛に。これから王様のお話があります」
待ち疲れた王様が話し出した。
「勇者の皆さん、ご苦労様でした。皆さん、この度の魔族の侵攻は、勇者様たちのおかげで防げました。
精霊界を代表して、お礼を言います。『ありがとうございました』」
テントウムシの妖精が話を継いだ。
「勇者の皆さんには、お礼の品をお渡しします」
4人は、各自が得意とする技能を貰っていた。技能がちょっとだけ上手くなったのだ。
勇者として無理やり呼んで働かせたご苦労代だろう。しかし、能力って品じゃないだろう。
たかだかわずかなプラスと思うかもしれないが、自分が持っている技能に+1が常につくことを想像してほしい。わずかな事でも、たいへん有用なのだ。
しかし、両手用剣+1ってどうしようかと思うけどね。何に使うんだよ。
しかし、アーチャーの大学生は違った。極限まで鍛えた数値に+1が付くのだ。
人類の最高値に+1が付くのだ。他の選手より、頭一つ上手くなる。
もし、大会優位者なら、優勝間違い無しなのだ。
「勇者、花田殿。貴方は他の勇者を救い、魔族の侵攻を止めるのに貢献しました。よって、精霊魔法の素質)と少し上手くなる素質を授けます」
他の者が+1なら、+2ぐらいだろうか、少し多く上手に使えるのだろう。
「はっ、ありがとうございます」
彼の周りをモンシロチョウの妖精が飛び回っている。
「勇者、瀬戸山殿。貴方はドラゴンや魔族を退治し、魔族の侵攻を退けました。よって、『竜殺し』の称号と熟練した精霊魔法を授ける。」
「はいっ! ありがとうございます」
「勇者、サザン殿。貴方はドラゴンや妖魔を退治し、精霊界の平和に貢献しました。よって、各素質をとてもうまく使えるように、熟練の素質を授ける」
サザンが指輪から出て来て、体の皮膜を震わせて答えている。
「バビ」
(サザンの奴、喋れるのか?)
(って、熟練って異常だろ。あいつスライムだぞ。それ以上強くしてどうするんだ?)
「勇者、藤波殿。貴方は魔族やドラゴンを退治し、精霊界の平和に貢献しました。よって、魔刃を授ける。魔刃の素質、上手な魔刃を授ける。魔刃は、すでに使い方を授けてあるゆえ、心して使う様に」
「な、なんでやねん!」
「はい? 妖精フローラが既に教えて有ると報告を受けていますけど。違いますか?」
「違わないわよ。教えてあげたもの」
「あれがそうか!」
「そうよ。ドラゴンを倒す前に教えたので、チート出来たでしょう」
「え? 気づいていないの?」
「何をだ?」
「王様! わずかな魔法の素質で良いのですが? 頂けませんか?」
「君は、マナを使う魔法は使ってないのでな。無理だな」
「花田さんには、あげたじゃん」
「花田さんは、魔法なんて使ってないじゃん」
「そうだったかのう」
「彼は、練習していたがのう」
「じゃあ、みんなありがとうな。ご苦労であった」
各自の足下に、突然黒い穴が開いて、すとんと落ちて行った。
「この腐れ魔王、二度と助けてやらないぞぉ!」
俺の声が、暗いゲートに響いていく。
俺達は自分の部屋に帰っていた。
「だから、無事に帰ってくるって言ったろう」
尻餅をついている瀬戸山さんを抱き寄せた。
「ええ、信じてたわよ」
「いつも、世界を救いに行ってるの?」
「まさか、二度目なだけだよ」
「靴、脱いでね」
「えっ! ごめんなさい」
「45分ぐらいだろう。こっちの世界では」
「本当?」
「ああ、本当」
「家まで送るよ」
「ありがとう」
文化祭の初日は暮れて行った。
うう、初日が長かった。




