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治療 その84


「おおーーーい! おおーーーい!」俺は思いっきり手を振った。


 彼等は徐々に近づいて来て、四人が倒れているのを見て、状況を察したようだ。


「多分、一酸化炭素中毒か酸欠だと思う。なんとか、俺の世界の、向こうの世界の救急車に乗せたいんだ。帰れないかなぁ」


「入って来たのか?」


「ああ、呼び止めたのだけど、間に合わなかったんだ」


「言っといたのに、しょうがないね」

「瀬戸山さん、酸素作れる?」


「多分、出来るかなぁ」


「彼等を酸素で覆って、二気圧まで上げて」


「えええ? やって見るけど」


「純粋に100%の酸素じゃなくて良いんだ。この場より濃度が高ければ」

「気圧も、ゆっくりと上げていってね」


 瀬戸山さんと言われる、魔女の格好をしている女性が何か念じ初めて、魔法をかけているようだ。


「ああ、どうしたらヘモグロビンに結合したCOを除去出来るんだ?」


 勇人と言う高校生が悩んでいた。


「電荷を与えられたらね。どんな化学薬品ならCOを吸収するんでしょうか?」


「電荷か!」


 何言ってるんだよ。電荷って、COやO2って、物質の最小サイズじゃないか。タンパク質どころか、鉄の分子一個だって、CO2よりはるかに大きいよ。


 彼は、ウエストポーチから取り出したノートに魔法陣を書いている。


「瀬戸山さん、この魔法を使って。世界で一番小さいゴーレムだよ」


「この台詞も言うの?」


「もちろん!」


 魔女の格好の子は、呪文を唱えながら踊っている。踊り終わると、ゾンビに機械の装甲が付いた格好になっていた。

 彼は、その格好をスマホで撮っている。


 彼女は有希ちゃんの傍にしゃがみ込んで、呪文の詠唱が終わった。

 彼女の右手の甲の部分から、金属製の細いチューブが二本伸びて来て、有希ちゃんの首に刺さった。

「我々はボーグだ」

「お前達を酸化する」

「抵抗は無意味だ」


「これ何の呪文?」

「この格好、可愛くないし」

彼女は彼を振り向いて聞いた。


 動画撮影をしていた彼は、その瞬間に残念な顔になっていた。

 その後、彼は人差し指を口に当てて、次の患者の治療をする様にジェスチャーで指示をしている。


 こいつ、絶対、この動画を撮りたかっただけじゃね?


 動画を撮り終わると、彼が説明してくれた。


「今、血液の中には、ヘモグロビンには一酸化炭素が結びついています。血液の中には酸素が溶けているので、O2に電荷を与えて分離し、COもヘモグロビンから分離し、分離したOと結合し、CO2にするだけのゴーレムを作りました」


「ゴーレムは、彼女が魔法解除すれば無くなります」

「材質は魔法の物理障壁だから、消せば問題ないでしょう。長時間に渡れば血小板が付いて血餅を作りますが、短時間なので問題ないでしょう」

 高校生の彼が俺に説明してくれているが、俺は彼等勇者達の家族でも仲間でもないんだよなぁ。


 30分程すると、有希ちゃんの手がピクピクと動き出した。

 1時間ほどで、手足を動かす事と発声はできる様になって来た。


「瀬戸山さん、酸素の圧力を1時間ほどかけて下げて。徐々に、徐々に」


他の三人も同様に、手足が動く様になって来た。みんな、まだ目眩があり、呂律が回って居ない。


「はねしゃだんわりがとおおぉ」


 たぶん、有希ちゃんが俺に礼を言っているのだと思う。


「もう、大丈夫、大丈夫」

と頭を撫でてやる。

これって、セクハラか? 後で、気持ち悪いと怒られるかなぁ。


「勇人、減圧終わったよ」


「じゃあ、酸素は毎秒50CCづつ出して上げて、適当に回復魔法をお願い」


 俺は、魔族とドラゴン討伐から帰って来ると、一炭化酸素中毒患者の治療をさせられている。


 結界の中に入るなと言って置いたのに、入って倒れたらしい。

あの、花田さんと言う人が助けださなかったら死んでいたかもしれないのだ。

 なんで、装備も無しに入って来たのか? 意味が分からん。


 4人とも、回復魔法をかけられると起き上がって来た。


「花田さん、ありがとう」

「花田さん、助かったよ」


 4人は口々に花田さんに礼を言っている。


 いや、助けたのは俺と瀬戸山さんだよなぁ。口にはださないけどさ。


 彼等には、もう一週間、野外酸素療法と回復魔法治療を受けて貰った。

あと、医療用トリコーダーで診察し、薬を作成し、投与しておく。

 俺には医療知識がないので、AIに任せて有る。過去のカルテの情報から、勝手にAIが判断して、薬を作成しているのだ。


 彼等が回復するまでの間、俺は勉強をして、瀬戸山さんは精霊魔法をフローラから習い、花田さんはモンシロチョウから精霊魔法を習っていた。



 4人が完全回復した頃、花田さんがノートの切れ端で良いから貰えないかと言って来た。

レポート用紙を二枚とボールペンを渡すと、中学生の魔法使いとアドレスを交換していた。


(他の奴は良いのか?)


「助けられた時、お父さんみたいな安心感を感じたの」


「解る。解る。」


 有希ちゃんと瀬戸山さんが女子会トークをしている。


 そりゃあ、あの背中だと広くて安定感はあっただろう。が、俺の背中はそんなに広くないし、お父さんと言われるほど歳が離れてないよ。瀬戸山さんは何がわかったのかな?


 瀬戸山さんも彼女にアドレスを渡している。


 今日で、みんなお別れなのだが、女子は別れが惜しい様だ。


 俺は、全ての人とアドレス交換を断っていたら、瀬戸山さんは全員と行なっていた。どうして、すぐに人を信用するかなぁ。



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