勇者パーティーは、 その83
「もう逃げ出すしかない! 勇者だなんて言われて調子に乗って居た」と思った。さっさと逃げなかった事を今更後悔していた。
そうしたら、突然、妖魔達が炎に包まれてしまったのだ。
燃え盛る炎の中に妖魔達は包まれたのだ。
妖精達は、妖魔を閉じ込めて白い粉を降らせていた。
そうしたら、その粉が引火して、あたりが火の海になったのだ。
結界が張ってあり、爆風こそこちらに来ないが、光と熱波がやって来た。
炎の熱で顔が火照っている。すごい熱量だ。
炎が引いた頃、結界の中で妖魔達が苦しんでいた。
弱い個体は、黒焦げになって動かないでいた。
ファンタジーパーティのメンバー4人は呆然と見ているしかなかった。
「どうする? 闘うか? 逃げるか?」
「今なら、奴らも伸びているし、無事ではないだろう」
「闘うなら今だな」
答えは出たが、誰も踏ん切りがつかなかった。
今まで、散々殺されてかけて来たゴブリンで有る。瀕死の重傷とは言え怖い。戦えば、殺されるのじゃないかと臆してしまう。
そうこう悩んでいると、空を二人の高校生が飛んで行く。
自分達の誘いを断っていた者たちだ。
そんな彼等が、この機に乗じて戦いに行ったのだ。
二人は、箒に乗って飛んでいる。彼女の方は魔女の様だったが、彼氏も魔法を使う様だ。
それにしても、箒とはなんて古典的なんだ。今時の魔法使いじゃないね。と思って見送った。
「さあ、俺たちも行くか?」
「ああ、行くか」
「ええ」
「おう!」
四人は走り出した。
「待て〜っ! 行くな〜!」
後ろで、俺たちを止める声がする。最近こっちに来た輩だ。
「お前も勇者なら、付いて来い!」
「止まれ〜!」
四人は、妖精達が結界を張っているのを横目に見て、入って行った。
辺りでゴブリンが死んでいた。何やら、胃の中の物を吐き散らして死んでいた。生きているやつも、もう動けないようだった。
走っていると、まず頭痛がして、吐き気が襲って来た。
苦しいとは感じなかったが、手足が重く、痺れて動かなくなった。
周りで倒れているゴブリンも、嘔吐物の側で倒れていた。
これは、とんでも無いところに入ってしまったと感じた。
振り向けば、魔法使いの有希は、もう動けないで倒れていた。
アーチャーの小倉鬼さんは、四つん這いで嘔吐している。
「ああ、俺たちはここでゴブリンと死ぬのか」と思った。
頭痛が酷く、ものが考えられない。手足も痺れて動かないでいる。
ニート君は思っていた。
普段のニート生活で太った身体が心臓を苦しめる。
一週間だが、共に戦った仲間が、俺を放って置いて、戦いに行ったのだ。
確かに、上下スエットに室内ばきスリッパだし、武器らしい武器も技能も持っていないが、足手纏いだったのだろうか? 置いていかれたのだ。
しかし、高校生達と話していてわかった事だが、彼もまた魔法も武力も使えない男だった。
彼は、魔法を使える妖精達を使って魔族を倒す算段をしていた。
粉塵爆発を利用し、酸欠と一酸化炭素中毒を起こしていたのだ。
戻って見たら、仲間達は彼を置き去りにした後だった。
仲間達四人で走って行く姿が見えている。
大声で、戻る様に呼びかけるが、聴こえないのか走って行ってしまった。
やっと結界まで来たが、遠くに倒れている四人が見えた。早く連れ帰らないと死んでしまうが、自分が走って行っても死者が増えるだけだとわかっている。
この世界に、消防も警察も無い。頼れるのは自分の力のみだ。
「いや、違う。周りにこんなにもいっぱい仲間がいるじゃ無いか」
どうするか考えた時、周りの妖精達に助けを求めた。
そして、高校生達の会話を思い出していた。
「誰か! 俺の顔に新鮮な空気を顔に掛ける魔法をかけてくれ!」
「お願いだ。誰か、俺に、俺の顔に新鮮な空気を掛ける魔法をかけてくれ!」
カナブンによく似た妖精に声をかけると、モンシロチョウによく似た妖精に頼めと、指差して言われた。
「お願いです。俺の顔に新鮮な空気を掛ける魔法をかけてくれ。早くしないと死んでしまうんだ」
「あら、良いわよ」
モンシロチョウによく似た妖精は、彼に向かって呪文を唱えて、頷いた。
「これで、しばらくは大丈夫よ」
彼らに時間と言う感覚はない。だから何分と言う言い方はしない。
「ありがとう」
彼は妖精にお礼を言って駆け出した。
結界の中は春の嵐の様だった。
暴風が吹き荒れていたのだ。
100m程先に、仲間が四人倒れていた。足下はゴブリンの死体だらけだ。みんな、嘔吐したり、頭を抱えたりして倒れている。
まずは一番手前の、軽そうな魔術師から担いで戻った。彼女は、確か中学生の女の子だった。
120kgの汗だくニートが、 喋るだけでも気味悪がられるだろう。
それを肩に担いで走っているのだ。
意識があったら悲鳴ものだ。
「はあぁ、はあぁ、はあぁ。酸素、この子に酸素を吸わせてあげて」
「酸素ってなあに?」先程のモンシロチョウが聞いてくる。
「酸素って、燃える空気、じゃない、燃やす空気の成分」
妖精に上手く説明ができない。慌てているのと疲労とで頭が回っていない。
「じゃあ、新鮮な空気を肺に送り込んで」
「わかったわ」
「おおっ」
地面に横たわっている彼女の胸が動きだしている。ゆっくりと胸が上下しているのだ。
「きっと、助かれよ!」
急いで、残りの仲間が倒れている場所に戻った。
今度はアーチャーだ。背中の方より脇の下に手を回し、やや仰向けにして引き摺って逃げた。
「はあぁ、はあぁ、はあぁ、はあぁ、はあぁ、はあぁ、はあぁ、こいつにも空気……。はあぁ、はあぁ」
一言喋るのがやっとだった。
次は片手剣のお兄さん。残り二人のうち、彼が手前に倒れていたからだ。
最後に両手剣のお兄さんだ。
戻って来る頃には、こっちが死にそうである。
苦しくて四つん這いで喘いでいる。立っているのが辛い、そして遂に花畑に仰向けに倒れこんでいる。
ハアァ、ハアァ、ハアァ、ハアァ、
ドッドッドッドッドッグニュドッドッドッ。脈が跳んでいるのが自分でもわかる。
こんなに運動したのはいつ以来だろうか? 苦しい。死にそうだ。
彼等四人はまだ呼吸はしている。しかし、意識が戻らないのだ。
顔色は赤く、すこぶる良く見える。
ただ、意識が戻らないのだ。
大分経って、周りの妖精達は勝ち鬨を上げた。
そう言えば、空に広がっていた暗雲は、いつの間にか消えていた。
俺達は、と言うか、彼等高校生二人と妖精達は勝ったのか?
結局、俺は何も出来なかった。
妖魔も倒せず、仲間も救えず、ただ、泣いている豚だ。
学校にも行かず、ゲームばかりしていた結果がこれだ。
遠くの空に、高校生達が箒に乗って帰って来るのが見えた。
面白ければ☆五つを、面白くなければ☆一つをお願いします。
続きを読みたいと思ったら、どうかブックマークをお願いします。
よろしくね。




