向こうの世界 その79
「私は、花から産まれたのよ。産卵なんてしないわよ」
「夜露が、まだ蕾の花の中に溜まって、花が開く頃に私達が産まれるの」
「卵なんて、冗談じゃないわ」
「お腹に子供いねーじゃん」
「俺ん家に来たかったら、この人と仲良くする事、俺の大切な人だ」
「解ったな!」
「うふ、ありがとう。林檎を食べる?」
「えーっと?」
「フローラだ。妖精のフローラ」
「あら、お名前も可愛いのね」
(え? 瀬戸山さんの機嫌が治っているぞ。何があったのだ?)
「どうも、本当はフローラって名前じゃないんのよね。本当は、『コノハナノオハナノヨウセイノハナハタセルコノフェラリーノコノハナ』って言 うの。でも、これでもあなたたちの言語の発音にして有るのよ。妖精の言葉では『jkbFndkh?/-「@}}%%^*"?\[;"*・んっd』って言うのよ」
「聴き取れねーよ。こっちが、俺のクラスメイトで彼女の瀬戸山 葉月だ」
「お互いに仲良くしてくれないと、俺ん家に出入り禁止な」
「な、フローラちゃん」
俺は二人に念を押しておく。
「で、また、悪魔が現れたのか? こっちの一日が二年だから、五ヶ月で三百年か? お前、あの時のフローラか?」
「失礼ね。妖精に寿命は無いの。体は古くなると生まれ変わるけど、私は私よ」
(生まれ変わるんなら、別人じゃ無いのか?)
「で、俺の時みたいに、勇者を召喚すれば良いじゃん。なんで、しないの?」
「したわよ。四人も。でも、誰も倒せなくて、五人目をどうしようか話し合ってるの」
「話し合っていないで、強いのを召喚すれば良いじゃん」
「召喚って、魔力を使うのよ。大変な作業なんだから」
「林檎は、ケーキ食ってからにしような」
フローラが、林檎に手を出していた。
「勇人、勇者してたの?」
「蘇我さんところの爺さんに、鍛えてもらってた頃ね。フローラはその時の知り合いなんだ」
「ふ〜ん」
俺は、瀬戸山さんに、フローラとの事を簡単に説明して置く。
「あの時は、8ヶ月も寝起きを共にしてたのよ」
「あえて、ややこしい言い方を選んでいるだろう」
「そんな事ないわ、あなたたちの国の言語の語彙が少ないのよ」
「四人もいるなら、協力しなくても良いだろう。なんなら、5人目呼べよ」
「俺たちの言語は語彙が少ないからな」
「怒らないでよ」
「ふふふ」
二人の会話を聞いていた瀬戸山さんが笑っている。
「瀬戸山さん、ここで待ってて、多分、5分もかからないから」
「私も行く」
「いや、危ないから、ここで待ってて」
「危なくても、私も行くのよ」
「『のよ』って……。」
結局、三人で行くことになった。
「靴を取ってこよう」
俺は自分の靴と瀬戸山さんの靴を玄関まで取りに行った。
「ユウト、ゲートを開けるのここで良い?」
フローラは机の上部の薄い引き出しを開けようとしている。
「勝手に、他人の机の引き出しを開けるんじゃない」
「ああ、ヤダァー、思春期の男の子だもの、仕方ないわねぇ。こっち向いててあげるから、片付けなさい」
「違うわ!」
「じゃあ、そんな本はベッドの下に隠して有るの?」
「やーね、葉月ちゃん、ベッドの下だって」
「ええぇぇ? いやらしいぃなぁ〜」
「そんな所にねぇよ」
「有るんだぁ、何処かに隠して有るんだぁ」
「何が好きなの? メイドさん? ああ、魔女さんかなぁ?」
(んん? 本棚の本を見られたかな?)
「うるさい! 行くぞ!」
(どっちにしろ魔女の写真集は、四人共服を着ているわ!)
俺は、机の天板の下の方の薄い引き出しを開ける。その時に、机の上に出してあった参考書類も魔法の鞄にしまっておく。
フローラが飛んで来て、引き出しの中にゲートを開けた。
フローラが足から入って行く。
瀬戸山さんが椅子に上がって、机の天板に腰を掛けて、足を引き出しの中に入れて言った。
「これって、じゃあ、私は『シズちゃん』かなぁ?」
「俺は『出木杉』な」
瀬戸山さんを抱いて、ゆっくりと降ろして、俺も飛び込んだ。
(おい! 引き出しを誰が閉めるんだ?)
スコンっと周りが明るくなって、見覚えのある所に落ちた。
以前、来たことのある妖精の国だ。
「ここが精霊界なんだって。以前はそう言ってたよ」
「すっごーい、本当に一面お花畑なんだ」
「こっちよ『ヒロト』。」
「『ユウト』だ。第一、ボケが甘くて、突っ込み方が解らないよ」
「ふふふ、あの妖精と仲がいいのね。妬いちゃうなぁ」
瀬戸山さんは、なぜか嬉しそうである。
(瀬戸山さん、なんか上機嫌だなぁ)
花畑の中を石で舗装されている道を歩いて行く。
石の敷方は粗く、凸凹で歩きにくい。
その道の上を、フローラはパタパタと飛んでいる。
道を進むと、丘の上まで伸びていて、王様が居た。
空は何処までも青く、羊のような白い雲がフカフカと浮いている。
地面には、色とりどりの花が咲き乱れて、飛び交う妖精たちの姿が見える。
偉そうな金ピカの椅子にポテッと肥えた王様が座っている。精霊王だ。
今日は、前回と違い、精霊王の前に誰かが跪いている。
てんとう虫のような妖精に連れられて行くまで、少し離れたところで、謁見の順番を待っていた。
精霊王にも負けないぐらい太ったヲタ風の男性が立ち去ったので、俺達は前に進んで、王様に謁見した。
「お久しぶりです。王様」
「勇者ユウトよ、よく来てくれました」
「いえいえ、無理やりでしたから。用事があると呼びつけるの止めて貰えませんか?」
「魔族が、また攻めて来てのう、困っておったのじゃ」
「で、お願いなのじゃが、また倒してはくれないか?」
「人の話聞いていないし」
「こいつ、言うだけ言ったら消えるんだぜ」
「勇者は、失礼のないように」
てんとう虫の妖精に窘められる。
「初めまして、王様。瀬戸山 葉月と申します」
「おお、かわいいのぉ。ゆっくりして行っていいぞ」
「誰がゆっくりなどするものか!」
「勇人! なんてこと言うの! ただの社交辞令よ」
「奴は本気だよ。俺は以前、8ヶ月もこの世界に居たんだ」
「え?」
「彼奴ら、魔族を倒すまで、返す気は無いよ」
「おお、その事だが、彼等はもう集結を始めておる。来週にも攻撃してくるだろう。勇者よ。頼んだぞ!」
「やだよ」
スゥ〜っと王様とその椅子が見えなくなって、消えて行った。
「あいつ、また逃げやがった」
俺は瀬戸山さんに笑いかける。
「一週間かぁ。結構あるなぁ」
「さあ、みなさん、お土産があります。王様はいらないみたいですから、皆んなで食べましょう」
俺は妖精達を集めて、ホールケーキを3つ出して、ハチミツの瓶を6個出した。
妖精のサイズなら、結構な数の妖精達が食べられると思ったのだが、彼等は意地汚かった。食欲が底なしだったのだ。
ブックマークをお二人の方にして頂きました。
よーし、頑張るぞ!
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