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フローラの出現 その78

 フローラを連れて、一旦保健室に桜木の様子を見に行く。

 保健室には鏡屋部長まで、桜木の様子を見に来て居た。


栃原副部長は、目を泣き腫らして居る。


(まだ、泣いて居るのか? 皆の前で、あれだけの芝居をしておいて。女って怖すぎる)


「栃原先輩、仇は取って来ましたよ。殺しては居ませんが、今、病院ですよ」

「所で、追加料金の話なんですが、……。」


「ゆうとー!」

俺は、瀬戸山さんに襟首を持たれ、保健室の隅に引きずられて行って、床に正座させられた。


「どうして、男はみんな先輩ばかりに!」


(どうしてって、鏡見ろよ。あの胸の色気は無いだろう)

と口に出せないで居ると、


「ネエ、ユウト、また魔王が攻めて来てるの。また、勇者をやって」


「んん? また来たの? この前で死んでなかったの?」


「そんな妖精と話してないで、こっち向いて謝りなさいよ!」


「このメスなあぁに? ユウトのつがい?」


「『つがい』って言うな。どこで日本語習ったんだよ」


 俺は、魔法の鞄から、以前買っておいたハチミツの瓶を出して、封を開ける。


「ありがとう、ユウト、優しいのね」

早速ハチミツを舐め出した。


「どうして女性には優しいの? 妖精にまで優しいのね。こっちを見て!」


(((((((ああ、藤波がまた地雷を踏んでるぅ)))))


 みんなは、一斉によそを向いて居る。関わらないように意識して居るようだった。


「ユウト、このメスがうるさいから、狭いあなたの家に行きましょう」


「メスって言うな、それに狭いも付けるな。今、怒られて居るんだよ」


「ユウトの家で、二人で話しましょう。話しに集中できないわ」


「お願いだから、黙ってハチミツを舐めててくれ。今怒られて居る所だから」


「さっきも胸を触ったじゃ無い。謝って責任取りなさいよ」


「向こうが俺の手を取って、触らして来たんじゃ無いか!」


「あたし、そんな事して居ないし、触って来たのユウトじゃ無い」


妖精のフローラが下から話に割り込んで来た。


「え? お前の胸なんか触ってないだろう」


「触ったじゃ無い。さっき、後ろからドサクサに紛れて」


「勇人! 謝りなさいよ。なんで、色々な人の胸を触るの? こんな妖精まで。我慢できないの?」


(いや、我慢できないとかじゃなくて、事故だったろう。見てただろう)


 今回の事で、瀬戸山さんに責められるいわれはない。ちょっとイラッとして来て居た。

 このままここに居たら、喧嘩を始めそうだった。


 俺は、瀬戸山さんの話をブチ切った。

「ああ、ごめん、ごめん。ちょっと、向こうの話を解決してくるわ」


胸の徽章を叩いて命令する。

「コンピュータ、一名と妖精一名収容」


 俺がフローラとハチミツの瓶を抱いた頃、俺の身体が光に包まれて行く。


「勇人、私も行く!」


 しかし、瀬戸山さんの手は空を切って居た。


「勇人!……置いていかれた……。」


 保健室の空気が凍り付いて行く。


(そりゃそうだろう。藤波にしたら、やって居られないだろう)

桐崎は、そう思ったが、口には出せないで居た。自分に地雷が来るのを嫌がって日和ったのだ。


「ああああん、勇人を、あんな妖精に盗られたぁ〜」

瀬戸山さんは、声を出して泣き出していた。


 「瀬戸山、私が彼氏に変な事したばっかりにごめんね。」

栃原副部長が、瀬戸山さんの頭を胸に抱きかかえた。


「瀬戸山が、そんなに傷付くとは考えずに行動してしまったね。ごめん、軽率だった」


「うん」

(ああ、先輩ってお母さんみたい。優しいし、暖かいし、みんなにモテる訳だよ。私なんか、ヤキモチ焼いて、勇人を攻めて)


「君の彼氏は家に居るよ。急いで取り返して来い。会ったら、桜木のお礼を言っといて」


「はい!」

瀬戸山さんは急いで出て行った。


「いや、電話が有るだろうに」

桐崎が呟いた。



 俺は、シャトルの船内に居た。

そして、再びシャトルを前に進ませて、船内の電源を切って、後部ハッチから出て、ハッチを閉める。

 シャトルを魔法の鞄に収納して、魔法の箒で一階まで降りる。

教室の窓が無い面の壁に沿って下まで降りた。普通、教室は、黒板が有る壁には窓が無いのだ。

この面の壁に沿って、地上に降りたのだ。


 教室に置きっ放しの鞄を拾って、駅まで走って帰る。

家の近くの駅前のケーキ屋に電話をして、ホールケーキを4つ程とカットされたショートケーキの果物が多いケーキとモンブランを頼んでおく。


 ホームセンターで発電機とガソリンの予備タンク、大きなサイズの電子レンジを買っておく。

 ガソリンスタンドで、予備タンクにガソリンを入れて貰って、自然食品の店に行く。

ここで、蜂蜜を各種買っておく。意外にも蜂蜜は、菜の花とか桜とか花別に採取されていて香りと味が違うのだ。


 そして、スーパーに行って、果物と玉子を3パック、2階の100円ショップでぐい呑を5個ほど買う。


 頼んで居たケーキを買って家に帰ると、玄関扉の前に瀬戸山さんが座って居た。


(はい? 何か用なのか?)


俺の家のマンションは、玄関がオートロックのマンションではない。古い、普通のマンションなのだ。


 デジャブーか。何か有る度に家に来られるのは嫌だなぁ。


「どうしたの?」


「勇人、ごめんなさい。怒らせるつもりは無かったの」

「あんまり、みんなと仲良くするから、妬いてしまって」


「ああ、まあ、入って」


 俺の家は共稼ぎなので、この時間は家に誰も居ない。


 俺の部屋に通して、二人でフローラの話を聞くことにする。


 俺と瀬戸山さんは紅茶、フローラはハチミツのお湯割を淹れる。


 ケーキは、フローラがモンブランとフルーツたっぷりショートケーキを同時に食べ出した。


「誰も盗らねぇよ。ゆっくり食え」

と言いながら、林檎をゴツゴツに皮を剥いていると、瀬戸山さんが代わって剥いてくれた。


 瀬戸山さんには、イチゴたっぷりショートケーキを皿に乗せて渡す。

すると、フローラが

「それはわら塩くあーき」と意地の悪い事を言ってきた。


(「塩くあーき」ってなんだよ。多分、「それは私のケーキ」と言おうとしたんだろうな。左右の手でケーキを持って、口の中をケーキで一杯にして喋るなよ)


「お前、根性悪いよ。その身体で三つも食えないだろう。第一、まだまだ有るし」


「あたし、その女嫌い」


「嫌いでいいから、こっち来るなよ」


「そんな事言って、お腹の子にはなんて言えばいいの?」

と、ケーキで膨れたお腹をさすっている。


バン!


 ムシを殺すみたいに、手でフローラを潰す。


「お前ら卵だろう」

「どこで覚えたんだ。そんな三流メロドラマ」


ありがとうございます。

二件のブックマークを頂きました。

本当に有り難うございます。



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