俺の出番だ その75
金田部長は、ゆっくりと火球の詠唱をし、桜木を攻撃して来る。
桜木が避けると、コートの周りの張られた結界に当たって砕け散る。
観客席の最前列にいると、直接は当たらないが、すごい熱量なのがわかる。
金田部長の杖の先端がオレンジに光り、杖の先端から少し前の空間に、燃え盛る太陽のような炎の塊が出来て、大きく成長して来る。
そして、ある程度大きく成長したら、急に飛んで来るのだ。
金田部長の火球を、桜木も初めのうちは避けていたが、一発、足をかすめてからは形勢が変わった。
火球は、当たると熱いというより、痛いのだ。
ズボンは焼け焦げ、見えている足は茶色く焼け焦げている。赤黒く、中の筋肉がむき出しになっている。焼かれているので出血はない。しかし、立って、歩いている方が不思議だった。
金田部長は、火球の威力を最大まで高めて撃っていたのだ。詠唱に時間をかけ、火球を大きく成長させるのだ。そうすれば、マナを多く消費し、威力も上がるのだ。
桜木は、足を引き摺りながら、左に左にと回り込んでいる。
しかし、もう移動速度が落ちているので、絶好の標的だ。
次に、桜木は左手で金田部長の火球を受けて、左手が炭化した。もちろん、頭から顔も焼け落ちた。ケロイドとかではなく、焼肉状態だった。
桜木は、動けなくなった所を攻撃されて、今度は右手を炭化させながらゆっくりと倒れた。
人はゆっくりと倒れたというが、俺には普通に倒れたように見えていたが。
ピクピクと左足を動かしている様を見て、観客席の方からは悲鳴が上がっていた。
「起きろー! 桜木! 好きな女の為に戦って死ねー! 起きろー!」
俺は、少し高くなったコートの端で叫んでいた。
声が聞こえているはずは無いのだけど、桜木は、炭化した手と動かない足を引き摺り、起き上がって来た。
顔が焼けているので、前が見えていないのだろう。いや、意識があるかどうかもわからない状態だ。
なぜなら、完全に金田部長から見て横向きに立って、ファイティングポーズを取っている。前が見えて居ない証拠だ。
金田部長は、今まで人相手の為、多少は手加減をしていたのだろう。しかし、今度の火球は詠唱が長く、二回りほど大きくなっている。まだまだ、桜木を痛めつける気らしい。
栃原副部長は、コートに走り込んでタオルを投げ込んだが、火球の発射の方が早かった。
辛うじて立っていた桜木が炎に包まれた。倒れた桜木の身体から、煙が出ている。スルメを焼いたような匂いが辺りに漂っている。
観客席からは悲鳴が上がった。
「勝者、金田部長!」
「私が魔法部を辞めます」
司会の倉田が金田部長の手を上げようとして止まった。
「ええー?」
栃原副部長は、桜木の元へ駆け寄り、多分、頭だったものを抱えている。
いまや桜木は、理科室の人体解剖人形を燃やしたようになっている。両手と右足は黒い棒になっているが、他は黒く焼け焦げて残っている。
バレーボールぐらいで黒くてブスブスと煙を上げているのが頭だと思うのだけど。それを抱えて泣いている。
何かを叫んでいる。喚いている。
「あーあ、御免なさい、こんな私のためにぃ〜!」と泣いて、呪文が唱えられないでいる。
「この勝負、金田部長の勝ちにつき、桜木君は魔法部への出入り禁止になります」
司会の倉田が宣言すると、魔法部の方から拍手がパラパラとあった。
蘇我さんがコートに上がり、奥から瀬戸山さんが出て来て、秋山さんがコートに上がりだした。
俺は、桐崎達に「保健室に行ってるから」と声を掛けておく。
「へっ? ああ」と変な返事をもらった。
「白本、どう思う? 魔法が使えない者をやりすぎじゃないか?」
「あれじゃあ、彼、死んじゃうかも。って、確実に死ぬよね」
相模川高校の魔法部の柿田部長と白本さんが、試合結果に驚いて引いている。
瀬戸山さん、蘇我さんは、初めから想定していたのか、対応が速かった。透かさず回復魔法を唱えていた。
しかし、焼け石に水だろう、魔法で増えたHPは急速に下がり始めているはずだ。
俺は、胸のコミュニケーターを叩き、スイッチを入れる。
「コンピュータ、上陸班、私を除く5名収容、すかさず保健室に転送しろ」
桜木だった物と蘇我さん達は、光の粒子に包まれて、魔法道のコートから消えて行った。
「「「「「キャアァぁあぁーー!」」」」」
観客席から悲鳴が上がる。
「げっ!」司会の倉田がマイクを通して声を上げてしまった。
「おい、白本。消えたぞ。」
「ええ。五人もなんて……」
相模川高校の魔法部の柿田部長と白本さんが、瞬間移動の魔法に驚いた。
俺は人気の無い、後ろの方に移動した。
蘇我さん達は、周りの景色が白く消えると、未来的な小部屋に変わり、また消えて、保健室が現れた。
自分達が、強制的に保健室に転送された事が、一瞬わからなかったようだ。
「勇人?」瀬戸山さんは辺りを探したが、誰もいなかった。ここは誰もいない保健室の様だ。
取り敢えず、四人で桜木をベッドに寝かした。担ぎ上げた時に身が崩れなかったのが不思議なぐらいだ。
栃原副部長が、黒く焼け焦げた頭を抱え泣いて居る。
「なんで、私なんかの為に命を賭けるの? さっさと降参すればいいのに」
「ずっと、君の事が気になっていたんだよ。金田部長は関係ないのに」
「表で合えばよかったんだよ……」
そんな中、光の粒子に包まれて勇人が現れた。
「緊急事態の概要を述べよ」
もちろん、俺の第一声だ。
面白ければ☆五つを、面白くなければ☆一つをお願いします。
続きを読みたいと思ったら、どうかブックマークをお願いします。
よろしくね。




