荒野の決闘 その74
オカ研の藤谷部長さん達が、カメラをセットしている。この人達、仲間でもビデオの為なら売るんだろうな。きっと。もう秋なので、三年生は引退しているので、藤谷部長とは初めて会う。
いや、どこかですれ違っているかもしれないが、話した事は無い。
裏に回ると、魔法部の連中は既に来ていた。探したが、桜木はまだのようだ。
栃原副部長や瀬戸山さんもやってきた。こちらに目で合図を送って来るが、何の事かは解らない。
(口で言ってよ〜。分かんないよ〜)
魔法部の文化祭の催しなので、もうイベント自体は始まってしまっていた。
「magic girl」のイベントを期待して集まっている観客が多い。
因みに、ダンスや魔女の格好をして行うイベント等が「magic girl」で、その中の四人のグループ名が「wicth sisters」だ。
その為、ダンス部は、独自に「magic girl」と称したダンスを行なっている。
演劇部も、「magic girl」と言う演目を持っているらしい。
みんな便乗商法がすさまじい。
開始時間5分前に、桜木と蘇我さん、桐崎や靏見さんが会場に入って来る。どうやら、今まで特訓でもしていたようだ。
「桜木! ちょうどよかった。これを身につけといて」
俺はコミュニケーターを桜木に渡した。
「これは、あいつの魔法を無効に出来るとか?」
桜木が聞いてくる。
「そんな事したら反則だろう。第一、それが役に立つのは、お前が死んでからだけど」
「はぁあぁ〜」
「そんな事でどうするのよ」
「きっと、勝てるって」
蘇我さんと桐崎が桜木を励ましている。
「好きな女の為に死ぬんだから良いよな」
「でもな、今更だけど、恋愛は男女でするものなんだ。男同士で意地の張り合いしてるけど、女性側の意見を聞いてないよね」
「『けんかをやめて〜、二人を止めて〜、私の為に争わないで』って、馬鹿じゃん。女が『この人』って言えば済む問題じゃん」
「まあ、骨は拾ってやるよ」
俺の意見が辛辣過ぎたのか、桜木が黙ってしまった。
(お前ら、栃原副部長の意見なんか、全然聞いてないよね。そんな勝負に意味があるのか?)
まったく、意味のないくそたっれな試合だ。
俺たちは、コートの外で桜木を生暖かく見守る為に表に回った。
もう、してあげられる事は何もないしね。
結構、観客席は混んできていた。相模川高校の魔法部の柿田部長と白本さんが来ていた。招待席に居たので金田部長の招待らしい。いわゆる来賓だ。
ダンス部や写真部の人気を聞きつけて見学に来たらしい。
ノベルティの販売は、どの学校の各部とも魅力的なのだが、黒字にするのが難しいのだ。ついつい、制作、販売は考えても、損益まで計算出来ないのだ。高校生の甘さがそこにあるのだが、活動にお金が掛かるクラブにはとても重要な問題なのだ。
その為、成功した企画があると勉強に来るのだ。
しかし、あんなことの後によく来れたものだ。魔法部の者じゃ無いから、出会わないと思われたのかな?
俺達も最前列に陣取って見物する。関係者じゃないので、裏に入れてもらえなかったのもあるのだけど。
オカ研の胡桃と言う女生徒が、レポートしている。俺は彼女とは面識が無いが、見るからにオタ顔なのだ。
「我がオカルト研究部の一年生桜木が、魔法部への出入りを掛けて、魔法部の部長と戦います。今まで、取材の為、魔法部に出入りして、いろいろ情報を収集して居たのですが、何やら、魔法部に出入り禁止を言い渡されたようです。それを不服と桜木が立ち上がったのです」
(タダでは転ばないクラブだなぁ。桜木も取材対象なんだ)
俺は、その取材姿勢に鳥肌を立てて、脂汗をかいた。自分には関係が無いので、冷や汗では無い。
司会が、ステージの進行をしている。
「お集まりの皆さん。ルールは先ほどと変わりませんが、次の試合は、オカルト研究部の桜木君が、我が魔法部の出入りを掛けて行われます」
「今まで、自由に取材をして貰っていたのですが、度がすぎましたので、この試合に負けると自由な取材は自粛してもらいます」
「審判は、私、倉田がさせて頂きます」
「では、両者、コートの中へ入って下さい」
左奥から金田部長、右奥から桜木が現れた。
司会の倉田が、両者にルールの説明を行なっている。
俺は、金田部長が黙って頷いて聞いているが、口が動いているのを見つけた。
やっぱりな。桜木は、金田部長に詠唱をさせない為、速攻で攻撃するしかないのだ。
それを防ぐ手立ては、開始早々に物理障壁を張るしかない。が、金田部長は無詠唱では魔法が発動できないので、あらかじめ詠唱をしているのだ。
もちろん、ルール違反の反則行為だ。
俺は、手帳型ケースから、魔法看破の呪文を取り出して使った。
初めてなので、詠唱と振り付きだ。少し目立ってしまった。
周りの魔術師達には、俺が何をしようとしているかすぐにわかった事だろう。
金田部長の周りに、書きかけの魔法陣がグルグルと回っているのが見えた。
魔法陣のルーン文字を読むと、やはり、物理障壁の途中だった。
(部長の詠唱って、サザンの魔法より遅いのかよ)
「そこ、司会! 金田部長が物理障壁の魔法を詠唱していますが」
「金田部長、お久し振りです。こんにちは」
「……。」
部長は俯いて黙っている。
「金田部長! こんにちは。返事して下さいよ! 部長!」
「魔法の詠唱をやめて、返事をして下さい」
「ああ、藤波君、久し振りだね。今、試合前だから集中させてくれ」
金田部長は、諦めて喋り出した。
途端に、詠唱していた魔法陣も消えてしまった。
「いやいや、結果はわかっているけど、それでもフェアに戦わないとね」
俺は座り直した。
部長は睨んで来たが、気にしない。
観客席の魔法を使える者達は騒ついたが、そのまま進行していった。
「それでは、よーい、始め!」
司会の倉田が審判になって、開始された。
桜木は、一気に部長の顔を目掛けて突いた。
しかし、これは簡単に払われた。金田部長も予想していた攻撃だ。
金田部長が右利きなので、左に左にと避けなながら攻撃するチャンスを待っている。
金田部長の詠唱が始まると、桜木が突きに行くのだ。それを払う度に詠唱が止まってしまうのだ。
何合か、同じことが繰り返されて、膠着状態になった。
ついに、金田部長が後ろ左に避けながら、詠唱を始めた。桜木と距離を取り出したのだ。
移動距離は桜木の方が長く、速度が上がれば不利だった。その為、均衡が破れた瞬間がやって来た。
桜木が付いて行けなく、距離が空いたのだ。
金田部長はこの瞬間を逃さなかった。桜木の足元に小さく、タップリとバター置いた。大きさにしたら、食パン一枚ぐらいの大きさだ。
生活魔法は、慣れて来れば詠唱も短く消費魔力も小さい。
桜木は、スベって、大きく転んでしまった。回転しながら、受け身を取り、次の攻撃に備えてしまったのだ。
その場に伏せている。立ち上がると標的になるからだ。
金田部長は、その間に後ろに下がり、距離を取って詠唱を始めた。
戸惑った桜木が突っ込んで来た時には、物理障壁の詠唱を終わっていた。
魔法看破を使っている俺には、金田部長の周りに張られた物理障壁が見えている。
もう、桜木の攻撃は当たらないだろう。
案の定、桜木の杖は、部長の前で弾かれていた。
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