決闘と実験 その72
俺は、魔法の物理障壁で、飛行の外殻を作るべく、アメリカ空軍のBー1の外観を魔法陣の式に起こしていた。
少し手を加えて、全長を本物より5m程度伸ばしておいた。全長が長いほど、振動はゆっくりとした動きになるのだ。速度も速く出せるしね。流体の中を進む時、同じ推力なら、全長が長い方が速度が出せるのだ。
しかし、まず解決しないといけない課題は振動だった。四角いコンテナのような形状のシャトルでは、カルマン渦が発生した時に揺れるのだ。全長が短いシャトルでは、空気の巻き込む力が振動になる。それを修正しようと魔法の力が働くのだが、抑制する力が遅れると本来の揺れにプラスされ、タイミングが合うとより大きな力になって揺れ続けるのだ。
対策として全長を伸ばすといいのだが、まずデザインが決まっているのでそうもいかない。理屈はこうだ。掌に短い棒は立て難いけど、秋田の竿燈祭り竿は立てていられるのと同じだ。長い方が、振幅の周波数は落ちるのだ。
そこで、物理障壁で全長を伸ばしてやると、揺れの周波数が落ちるのだ。形状が変わると、カルマン渦の大きさと間隔も変わる。人が揺れと感じない程度に制御する必要が有るのだった。
そして、物理障壁は、一般人には見えないという利点が有った。本来のデザインは壊さなくて済むのだ。まさに透明アルミだ。
デザイン的にB-1のジェットエンジン部分は同軸多段プロペラを置き、ULCの高圧空気の供給源にした。
因みに、魔法の力でVTOLをするので、STOLをする必要は無いが、そこには男のロマンがあるのだ。
飛んで見てわかった事だが、揚力が強く、上空でとんぼ返りをしてしまうのだ。本体部分が軽すぎたのだ。
現実にはとんぼ返りはせずに、翼の揚力が落ちて失速するのだが。
翼を翼断面の形状から流線型にしても、リフティングボディーが働き、上昇が治らない。エレベーターを下げるが、宙返りをしそうになって、失速してしまうのだ。
結局、飛行物本体を魔力で下方に押さえることにして、安定を保った。
エルロン、エレベーター、ラダーはAIが動かし、搭乗者は直接操縦をしない。四隅と中央部に六方向のセンサー(前後、左右、上下、ピッチング、ヨーイング、ローイング)を置き、5つのAIが判断し、多数決で操作する。
本来は、空気の渦による振動の除去なのに、何をやって居るんだろうか? 自分でも馬鹿かと思う。
室内は、モニターだけで、窓は無く、前方に四席椅子がある。後方に、壁に対面式の折りたたみ椅子が埋め込んである。
後方の壁は上下に開き、下側の扉はランプになり、搭乗口になる。
転送装置とトリコーダーは標準装備だ。今の所、フェザー砲をどうしようか思案中だ。
その後、色々グレードアップし、最終的に外壁に「USSー1701D」と描いてライトアップ出来るようにした。
この時期は、中間考査の勉強で忙しい。が、クラスメイトは文化祭の話でで盛り上がって居る。俺はずっと、シャトル製作で忙しかった。シャトルの物理障壁を、魔法陣の式に書かないといけないのだ。優雅な曲線を魔法陣に起こさないといけないのだ。
魔法を作った人は、盾とか半球とかしか考えていないので、式は簡単だが、これがBー1やBー2になると式が難しいのだ。滑らかな曲線を文章に起こすなど、ある意味数学だった。
昼休みに、桜木がやって来て魔法道の勝ち方を聞いてくる。
すまんが桜木よ、俺は魔法が使えないのだよ。
「その様な方法なんて無いし、思いつかないし、多分、お前は負けるよ。唯一の方法は、金田が魔法の呪文を唱える前に、あの口を潰すことだよ」
「そうだよなぁ、それしか無いと思うのだけど、林田にお前がやってしまったから、警戒して対策を練って居るだろう」
「たぶんな」
「ふう」
「諦めて謝れよ。『もう、魔法部には行きません。』って」
「そんな事、死んでも出来るか!」
「じゃあ、死んでこい」
魔法部の展示は魔法喫茶室と魔法道の実演展示になった。金田部長が、最終的に決めたのだった。
「magic girl」のサイン会と「witch sisters」との撮影会は写真部で行うことになった。
写真集の名前が「magic girl」で、4人組の魔女が「witch sisters」だ。
ただ、ダンス部も演劇部も「magic girl」と言う演目を作っている。
格好は、つばの大きな三角帽子にボレロの魔女が沢山で踊るのだ。
は、塾から帰ると、1時間、相模湾を低空で飛行している。AIを鍛えるためだ。今は時速300km/hまで速度を上げることが出来ている。
変更点は、機体本体に物理障壁、その外側に、飲み薬のカプセルの形の物理障壁(半球と円筒と半球の組み合わせた形)を張っている。そして、その外側がBー1爆撃機の形状の物理障壁だ。もし、窓があると、「メーテルと哲郎」が再現出来るのだ。シャトルと外気は直接触れずに飛んでいるのだ。
また、今は、アルミで外側が四角錐の突起で覆っている。自衛隊のレーダーに映りにくくするためだ。全体の断面は六角形になる様にしている。昼間見るとギラギラだろうなぁ。シャトルの形状は、Bー1の形状の物理障壁の中なので、自由に出来るので、飛行には特に問題はない。
これで、低空を飛んでいる。航空灯も衝突防止灯も点いていないので用心が必要だし、第一、無線も積んでいない。もちろんエンジンも積んでいないけどね。
何がカッコ良いって、外見は某米SFテレビドラマのシャトルポッドにしか見えないのだ。
(そろそろ、制服を買いに行っても良いんじゃないか?)
そう思う日々が続いている。
ある日、教室で試験範囲を見直していると、また、わざわざ桜木がやって来た。
「やっぱり、金田部長に勝つ方法は無いかな?」
「何度も聞くな。無いね」
「ルール上、他の道具とか支援をもらってもいけないんだ」「もう無理だ」
「知ってるよ」
「あの時、殴り合いにしなかったお前の負けだよ」、「向こうは『魔法道』とか言い出して、あたかもフェアな戦いに見せる演出まで行ったからね」
「ああ、だけど、お前は林田に勝ったじゃん」
「金田部長も同じだよ。詠唱する時間が必要さ。その隙を突くしかないね」
「そんな隙あるかなぁ」
「無いだろうね。林田の時、見ていたからね」
「「はぁあぁ〜」」
俺と桜木は二人で大きなため息をつく。
「桐崎ぃ、どうして魔法障壁は、自分の魔法は通るんだ?」
「当たり前じゃん、通らないと困るだろう」
そりゃそうだが、回答になって居ない。
「蘇我さん、魔法障壁はどうして、自分の魔法は通るの?」
「当たり前じゃない。通らないと戦えないよ」
そりゃそうだ。だけど、これも答えになって居ない。
その後、誰に聞いても答えが得られなかった。
教科書にも辞書にも載っていないのだ。誰も今まで疑問に思わなかったようだ。
仕方がないので、俺は考えを変えた。
桐崎に魔法障壁と物理障壁を張って貰った。
そこに、蘇我さんにライト、ホーリーライト、赤色光、遠赤外線を出して、通るか見て貰った。
蘇我さんにレーザーと言う概念がなく、レーザー光線は出せなかった。その為、散分する光になったのだ。
いや、遠赤外線と言う概念も無かったけどね。
ライトの光、赤色光は普通に通った。(これは予定通り)
ホーリーライトはホーリーの部分が遮断され、ただのライトになって居た。
(全部遮断されるのかと思ったが、違ったようだ)
で、遠赤外線は、「電気櫓コタツのようなあったかい光」と言えば理解してくれて、淡いオレンジの光を出してくれて、見事通った。
炬燵の光と言ったので、オレンジの可視光線が含まれていたらしい。
見事、熱を感じることが出来て、遠赤外線が通ることが証明された。
蘇我さんは、笑っている俺に「当たり前じゃ無い」なんて言って来て居た。
まだみんな、恐ろしい事実に気づいて居ないようだ。
ついでに、障壁を球にして貰い、中で携帯をかけてもらうと、通話する事ができた。
剣と魔法の世界は素晴らしすぎる。魔法が出来た時代には、電波や光の概念が無かったのだ。
だから、障壁を張っても中の人物が見えるのだ。
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