文化祭で決闘だ! その71
写真集『magic girl』が売れていた。
写真部など、関係各部と校内コンビニ、通学路の駅前コンビニとネット通販で販売していたのだが、一気に火がついて売れてしまってた。
ただ、この写真集は外部に印刷に出しているので、今後、最低ロット数が捌ける見込みが無いので、新たに増刷が掛けられないらしい。
印刷物は、少数になるほど単価が上がる。売価と経費を考えると、赤字にならぬように一定数を売る必要がある。
校内でしか需要がないので、少数増刷して経費が上がると、赤字になってしまうらしい。
一応、クラブ活動なので、赤字は避けないといけない。部費を使い込むと今後のクラブの活動に関わるからだ。
俺も二冊買ったしな。一冊は保存用で、まだ開封していない。こんな事なら、三冊買えば良かった。と後悔した。
魔法使いの「witch sisters」と言う仲の良い四姉妹と言う設定の写真集『magic girl』だった。にしても栃原先輩以外は同い年だろうが。
そして、それが発売日には写真部部室で、四人がサイン会をするほどの人気ぶりだった。
それに教室前の廊下には、蘇我さん達を目当てに中等部の女生徒が写真集を持って立っていたりもしている。いわゆる出待ちまで起こっていたのだ。
「藤波! 退いて。蘇我さんに可愛いお客さん!」
何時もの事ながら、俺は空気だ。
俺の席に中等部の子が来て、蘇我さんと話す事などが度々続いていた。
どうやら、自分も「witch sisters」に入りたいと言っているようだ。オーデションは無いのか? とか、誰に言えばいいのか? と聞いている。
(さっさと断れば良いのに。俺達に選択の権限なんてないよ。出演を頼まれただけなんだから)
(一体、何人が同じ質問をしに来たことか)
魔法部の部室では、栃原副部長に鏡屋元部長が話しかけていた。辺りは、文化祭の準備で忙しいのに、元部長が話し込んでいるのだ。
魔法部の部室は、今、今月末に行われる文化祭の出し物の、出店の企画会議中だった。
便乗企画の「『witch sisteras』との写真撮影」と「魔法の喫茶室(目の前で、魔法で調理する)」で争っていたのだ。
両方すれば良い様なものだが、金田部長が「witch sisters」に便乗するのを嫌がっていた。
部長は、部長なりのプライドがあるのだろうが、この波に乗らないと、クラブはジリ貧になるのが目に見えているのに。
話は、堂々巡りを三巡して、会議はダレて来ている。
「すごい人気じゃない。魔法部も鼻高々ね。ところで、栃原副部長さんは、ちょっと綺麗だと思って天狗になってない?」
「え? そんなことないですよ」
(いや、鏡屋元部長ったら「鼻高々」とか「天狗」って、田舎のばぁちゃんと話してるみたい)
「だって、すごい人気じゃない」
「おかげさまでよく売れてるみたいですよ。もうすぐ完売するって言ってましたから」
「第二弾は作らないの?」
「ええ、まだそんな話は聞いていませんねぇ〜」
「そう……。」
「部長、うちでも何か作ろうか?」
鏡屋元部長が振り返って、金田部長に話を振る。
「あれは魔法部とは関係のない話ですから」
金田部長がこちらを向いて嫌そうに答えて居る。
「そう……。せっかく出てあげても良かったのに、残念ね」
「そうですね」
(そっちかい! 部長! 出演したかったのね。そうなのね。でも、お姉さんが急にできるのも変じゃない?)
「今度、桜木君が来たら言っときますね。でも、みんなから言われて、断るのが大変みたいですよ」
「桜木は、うちの部員じゃないから……」金田部長が何か言っている。
「頼むわよ。これオカ研の仕事なの?」
「彼が、プロデュースして、写真部、映研が動いたの。主催は写真部かな」
「私達は頼まれて、モデルをしただですよ」
「そうなのね」
(「しただけですよ」って、あなた主演で踊ってるじゃないの)
鏡屋元部長と栃原副部長との腹に一物を持った舌戦が続いていた。
「でもすごい人気じゃない」
「おかげさまで、新入部員が五人も入ってくれたんですよ」
魔法部に、魔法使いでない新人君が三名入っていた。また、魔法使いの新人さんが二人、男女合わせて5人。女生徒の一人は魔法の道具を使えるだけだったし、もう一人は、何の素質も持ち合わせていなかった。一年女子の魔法使い一名、一年男子が一名、魔法使いだったのだ。あとの一名は、二年女子で魔法使いでは無いが、魔法オタクだったらしい。
そして、五人ともが栃原副部長目当てだった。一緒の倶楽部に居たいのだそうだ。
会議をそっちのけで、そんな話をしていたら、そこに、桜木が逃げ込んで来た。
「はあぁ〜! みんな次のビデオを撮れって、うるさいんだ。写真部か映研に言って欲しいよね。俺に権限ないし」
「お疲れ様」
「お疲れ様、写真集『magic girl』、売れてるねぇ」
「ええ、もうすぐ完売ですねぇ。バカ売れですよ。良い企画だったでしょ」
「ただ、次は自分を出せ! と皆んなうるさいんですよ」「次の企画なんてある訳ないのに」
「えええぇぇ! あたしも出してもらおうと思ってたのに。無いのぉ?」
「今、写真集を売っているとこですよ。有る訳ないじゃ無いですか?」
「さくらぁ……」
「でも次の企画ぐらいは、有るんでしょ?」
「『magic girl』は、今の所有りませんよ」
「でも、違う企画は有るよ。『浅間山、地下迷宮探検』とか、『関東幽霊屋敷探検』とか」
「桜木ぃ……」
「ヤダァー、そんなの行かないよぉ〜」
「だって、俺はオカ研だもの。歌って、踊っては、ダンス部に言ってもらわないと」
「桜木! おまえ、……」
「ちょっと、紹介してよ。美人のおねぇさんが居るって。栃原よりは、よく踊るわよ」
「それはどうですかね? 確かに四人とも踊れていませんでしたけど、それが、部長が踊れる証明にはなりませんよ」
「言ったな、いくら栃原のことが好きだとは言え、肩の持ちすぎじゃないのか?」
「さく……」
「どう、どっ、どうしてそれを、良いじゃないですか! 別に。」
「良いけど、バレバレなんだよ。告る勇気も、付き合う覚悟もないんだろう」「あたしが代わりに言ってあげようか?」
「その時が来たら、自分でちゃんと言いますよ」
「その時っていつだよ。栃原が、もう卒業してからじゃ遅いんだぞ」
「いつだって良いじゃないですか? ちゃんと雰囲気作って言いますよ」
「へん! ヘタレ! ヘタレ!」「栃原! こいつは百年待っても告ってくれないぞ」
「肝心な時には、誘ってくれますわよね」
「はい! 今度、一緒に遊びに行きましょう」
「桜木! やめろ! お前はナンパしに来てるのか!」
「ええ、喜んで、こんな年上でも良いの?」
「はい! 栃原先輩が好きなので」「え⁉ いや、迷惑でなかったら……」桜木は自分で言った言葉に、顔を真っ赤にしていた。
「桜木! お前は出て行け! うちの部員をナンパしにくるな!」「栃原はやらん!」
「『やらん』って、金田部長には関係のない話でしょう」と桜木が抗議し出した。
「俺の栃原を誰にも渡さん!」
(((「俺の」じゃねーよ。何言ってんの?)))
鏡屋元部長に森田元副部長に当の栃原副部長までが思った。
「恋愛は自由でしょうが!」
「うるさい! 出て行け! 出て行かないなら、お前の『魔法部の出入り禁止』を賭けて決闘だ!」
「ああ、受けて立つ!」
と、金田部長と桜木で、頭に血が上って決闘を行う事になった。
「これ? 文化祭の企画で行うのか?」
鏡屋元部長の一言で、屋外展示で、魔法道の展示試合が行われる事になった。




