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罠か? その68

 当日は、白本さんに会う前に、電車の中でサザンに憑依して貰った。

 瀬戸山さん達はダンス部のレッスンに行っている。白本さんとの事は内緒にして、余計な事は聞かせていない。


 横浜で白本さんと待ち合わせだ。

駅の改札を抜けた所で待って居てくれた。


「やあ、待たせたね」


「本当よ、すごく待ったのよ」


「行こうか」


 横須賀線へ移動するのだ。再度、切符を買って改札を通る。


 ホームで電車を待っている時、白本さんが手を繋いできた。


「勇人、今なにか魔法をかけられました」

サザンが報告してくれる。


彼は、魔法こそ使えないものの、レベル40の最強チートスライムなのだ。

人間如きが、どうこうできる妖魔ではない。保険に憑依して居てもらったのだ。


「ありがとう」


「どうしたの?」


 白本さんには、サザンの声は聞こえないが、俺の声は普通に喋っているので聞こえるのだ。


「うふふ、嬉しい。前から手を繋いで見たかったの」


(この間、さんざん手を繋いでいたじゃないか)


 行きの電車の中で、白本さんは、手を繋いだまま、ずっと俺にもたれ掛かって来ていた。

以前には取らなかった行動だ。これを鎌倉駅に着くまでの間、ずっとしていたのだ。


(何考えているんだろう)

俺には予想もつかない行動だ。


 大仏を見に行こうと高徳院へ、手を繋いでラブラブで歩いている。

指を絡めて、恋人繋ぎだ。


 白本さんとは大仏の頭を摘んでいたり、担ぎ上げるように見える写真とかを撮って遊んでいる。


(本当に恋人同士と思っているのか? 分からん)


 次に、長谷寺と回る。


「もう紫陽花は咲いていないね」

とか言って、紫陽花の葉っぱに埋もれて写真を撮っている。


(まさか、本当に俺とデートする為に呼び出した訳では有るまい。第一、夏の終わりに紫陽花もないよな。暦上は秋だぜ!)


 江ノ電の駅の方に歩き出したのだが、途中で冷たいものでも食べようと、ちょっとおしゃれな、いかにも鎌倉風の店に入る。


「ハイ、あーん」

「ヤダァ、ちゃんと食べないと溢れてしまうよ」


 彼女が、白本さんだが、自分の頼んだカキ氷についてるスプーンで、俺に自分のカキ氷を食べさせてくれる。


(やっぱり、何かがおかしい。何が『あーん』だよ。何を企んでいるのだ)


 いかにも和風な店で、彼女が注文をし、蕎麦を頼んでくれている。

 四人掛けのテーブルに、なぜか俺の横に座っている。


(いや、なんで此奴は俺に懐いてるんだ?)

(元々、魔法道の試合をしただけの知らない人なのだけど)

(ゾンビ騒ぎの時、蘇我さんの知り合いみたいな事を言っていたなぁ)


 色々ととりとめもなく考えていても、この前に何かされた事の目的がわからない。そして、今日の態度はもっとわからない。どうして、恋人を演じる必要があるのだろう。


 今度は、江ノ電で江の島に向かうが、特に態度は変わらずに、何かしてくるでもなく、ずっと恋人同士を演じている。

 海が見えると、結構はしゃいで、二人で海の車窓をバックに写真を撮っている。

海との間に道があり、綺麗な写真じゃないと思うのだが。


 江の島に渡りお参りをするが、その態度は、やはり恋人同士のようだった。沿道の土産物屋をのぞいたり、ふざけたり、ラブラブラリホーのバカップルだ。


 しかし、帰路につく頃からおかしくなっていた。

 小田急で町田に出てJRに乗り換えるのだが、町田駅では、もう俺の腕にすがって泣いていた。


「今日は帰りたくない」

「ずっと一緒にいたい」

「一時も離れたくない」

と、腕にすがって泣き出したのだ。

 恋人にこんな事を言われたら、薬局を探して、ホテル街に直行するところだが、親しくもない女性に言われると気味が悪い。白本さんは、それなりに可愛い女性だが、そういう相手は誰でもいいと言うわけではない。


 ずっと、俺の左腕を抱き抱えている白本さんを放置して、真里亞に電話をかける。


「ゴメン、今暇かなぁ?」


「何?」


「助けて欲しいんだけど」


「いいけど何?」


 俺達は、再度乗り換えて真里亞の家の最寄り駅まで行った。


「瀬戸山さんには黙っていて欲しいんだけど、白本さんがおかしくなって」


「あら、仲が良いこと。浮気デート?」


「違うんだ、この間、横浜で会って、そのキスしたんだけど、それを写真に撮られて、脅されて」


「ふふん、どうしてキスしたの?」


「なんか急に好きになっちゃって」


「乗り換えたんだ」


「いや、違うよ。瀬戸山さんへの誕生日プレゼントを持ったままだよ」


「え?」

「あなた達、何をしてるの?」


「おかしいだろ。だから先週、診てもらったんだ」

「それで、今度は白本さんがおかしくなっちゃって」

あまりの白本さんの行動の異常さに、真里亞が鑑定してくれた。


「あら! この子、チャームに掛かっているわよ」


「貴方は魔法使えないのに、何かした?」


「この前がおかしかったから、エンカウンターとカウンターアタックの御守りを持っていたけど、特に何もしていないよ」


「じゃあ、あなたにカウンターアタックされて、自分のチャームに自分がかかってしまったの?」


 真里亞には心当たりがあったのだ。

ゾンビ騒ぎの救出劇の後、打ち上げ、お礼パーティで、白本さんが勇人を奪い取る宣言をしていたのだ。もちろん、勇人はそんな事など知る由もなかった。夏期講習に行っていて、パーティには参加して居なかったのだ。


「勇人、あなたきっと、この前もチャームに掛けられていたのよ。それで、今日も掛けられたのだけど、カウンターアタックではじき返して、彼女が自分の魔法にかかったのよ」


「ああ、それで、今朝からずっとおかしかったのか」


「この子バカじゃない?」


「蘇我さんの友達でしょう」


「ちがうわよ。最近、知り合っただけよ。恥ずかしい。(本当に取りに来るとは思わなかったわよ)」


 白本さんが、泣きながら喚いている。真里亞に暴言を吐いているのだ。


「勇人、この女は誰? 何? なんで私が居るのに、違う女と会うの?」

「ドロボウ猫! 私の勇人をどうするつもり!」

「勇人は渡さないわよ」


 白本さんは、だいぶ興奮してきていた。捕まえておかないと真里亞を蹴りそうだ。


「ちょっと、動かない様に押さえておいて」


 俺は、白本さんをこちらに向けて抱き抱えて置く。力を押さえているが、気を緩めると蘇我さんに襲いかかるのだ。


白本さんの胸が腹に当たって、柔らかくて気持ちが良い。

(ジャージより、私服の時の方が柔らかくて気持ちいいな)


「ちょっと待って!」


 俺は白本さんの顎を指で上げ、顔を上に向ける。

蘇我さんに怒っている口に唇を重ねて、唇を吸う。

「あぁん」


(女の子の唇は、プリプリしていて気持ちが良い)


「あんた! 何してるの?」


お互いに貪る様に唇を吸い合う。興奮してきて、口が開くと舌を入れる。下を絡めると、向こうも俺の舌を絡めてくる。


「んん」

気持ちがよくて、思わず声が漏れてしまう。チャームとは関係なく、ずっとこうしていたい感じだ。

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