表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/215

胸枕の 61

 入浴を済ませて、匂いを落とすと、作業員さんの車で富士山駅まで送って頂いた。


「なんで残るんだよ」


「怒ってるの?」


「いや、でも危険なことや汚い事はしてほしく無いよ」


「私は平気、それより一緒にいたいの」


「……。」


 俺は黙って、手を繋いで居た。


「ところでさ、誕生日いつ?」


「どうして?」


「名前が葉月だから、そろそろだろう」


「十月十日、生まれたの、予定日より遅くなったんだって」


「旧暦かぁ」


「そうだね」


家の最寄り駅まで2時間半掛かるので、瀬戸山さんの家の最寄り駅に着いたのは、11時前だった。


 車内で、2人はずっと手を繋いでいた。勇人の願っていた展開にはならなかったが、瀬戸山さんから香って来るシャンプーと石鹸の香りで、勇人は2人の暮らしを夢想していた。



 瀬戸山さんを下ろして、二人と別れたマイクロバスは、順調に帰路に着いていた。


「私の勇人を葉月になんかにやれないわ」


「あんたのじゃないし、もう、葉月のだし、初めから彼女じゃなかったでしょ」

「真里亞、あんた痛いよ!」


「だって、葉月が横から持って行くから」


「持って行ってない、ない。付き合ってもいないし、好きでもなかったでしょ」


「ははは、真里亞は葉月に嫉妬しているんだよな」

「藤波はどうでもいいんだろ」


真里亞と紅葉の言い争いを桐崎が笑っている。


「気持ちは分かるわ」相模川高校の白本さんが、話に入って来た。


「背が高いし、強いし、優しいし。私だったら、奪ってでも彼氏にしちゃう。他の女の彼氏にするにはもったいないよね」


「えっ?」


「あいつは、そんなに価値のあるやつじゃないよ。勉強ばっかりで、女心も分からないし」


「じゃあ、私が貰ってもいいの?」


「良いわよ」


「いやいや、瀬戸山の物だって言ってるじゃん」


「じゃあ、決まりね」


「あいつ、君の胸に顔を埋めた痴漢野郎だぞ」柿田部長も目を丸くしている。


「良いのよ。優しくて良い人よ。きっと」



 バスの後ろの方のシートに桜木が座っていた。隣には、栃原副部長が座りに来た。


「あいつ、人気だなぁ。賢いし、強いし、女の子に人気だし、全然勝てないよ」


「そうね、藤波君は優しいしね。ところで桜木君は、一体誰にモテたいの?」


「え?」


「蘇我さん? 秋山さん? あの子は白本さんって言ったかしら? 誰にモテたいの?」


「え? あの、その、センパイ……」


「可愛いこと言ってくれるのね」栃原副部長は桜木の頭を撫ぜる。


 金田部長が、こちらを見ていたが、栃原副部長は軽く無視している。


 初ゾンビ撮影で、精神的に疲れたのか、それとも朝が早かった為か、桜木は寝てしまった。バスの揺れが、ちょうど良い揺りかごになった。


 栃原副部長の右肩に桜木の頭がもたれて来た。栃原副部長は、右手を上げて桜木の右肩を抱いた。桜木の頭が、栃原副部長の右胸にもたれている。


(一つだけ勝ったね。この胸は君のものよ)


 バスは学校へ向かって帰って行く。



 3日後、魔法部の顧問の後藤先生を通じて、金田部長に連絡が入った。相模川高校の魔法部の顧問より、先日のお礼がしたいとの事だった。

 高校生の事なので、金銭の授受はいけないとの事だったので、食事会にとの誘いだった。

 週末、学校近くのステーキハウスに集まった。

メンバーは、

相模川高校の魔法部の顧問、山田先生(女)

部長、柿田

副部長、田崎

部員、白本

部員、福島


相模原商業の魔法部の顧問、後藤(男)

部長、金田

副部長、栃原

部員、瀬戸山

部員、倉田


友人、蘇我

友人、秋山


の12名だ。


 ちょっといい感じの店なので、ドレスコードと言うことは無いが、男はシャツにネクタイだ。女性は、スーツかカジュアルを着ている。一応、ホテルディナーでも良い服を着て来い。と金田部長からは連絡が来ている。ドレスでも無いし、制服でも無いし、ちょっと大人びた微妙な服になる。その点、教師はスーツになり、服選びは楽だ。



 相模川の山田先生が、お礼と挨拶を述べている。目にクマができており、校内では大問題だったようだ。いや、14人が亡くなっており、校内外で大問題だったろう。

 死亡した生徒の遺体はまだ届いていないが、遺族に返されるのも時間の問題だろう。


 山田先生が店内を見回して、活躍していた男子生徒二名がいないのを気にして聞いてくる。


「花火の彼と日本刀の彼は、今日は来てないの?」


「花火の方は夏期講習に行っています。彼、趣味が勉強でして。日本刀の方は、デートですね。彼女も来ていませんから。多分、二人で海に行くと言っていましたので」蘇我さんが丁寧に答えたが、考えたら失礼な話だ。せっかく、席を設けて誘ってくださったのに、「興味がない」と正直に答えてしまったのだ。


「カメラの子は?」と聞いて来ると、「部長がやらかしまして、彼女と仲が良いので妬いたみたいですよ」と、真里亞はこれまた正直に答えて、視界の隅に金田部長と栃原副部長が、仲良く座っているところを見た。


 苦笑いをする先生が「君が蘇我さんかな? すごい魔法だね。まさか、あれだけのゾンビを一瞬で倒すとは」と驚かれていた。


「たいした事はしていないんですよ。普通の生活魔法ですから」


「え? 生活魔法って?」


「内容は秘密です。本当は、喋っても問題ないんですけど、開発した者が、自分に向けられたら防ぎようが無いって言って。彼、魔法が使えませんから、防げないんですよ」


「それって、防御魔法が使えないって事?」


「ええ、この魔法に関わらず、すべての魔法が防げないのに、彼は魔法が使えないから気づいてないんです」


「魔法が使えないのに、魔法の呪文を作ったのか……」


その時、


「彼が来ていないじゃ無い!」突然、白本さんに詰め寄られて責められた。


「はぁぁ? 知らないわよ」


「私が来ることを知って、会わさないようにしたでしょ」


「あいつは馬鹿だから、朝から晩まで勉強してるわよ。文句なら、彼女に言いなさい」

と真里亜は瀬戸山さんを指差した。


「あいつは彼女の物なの。私や貴女は相手にされてないのよ」


 騒ぎを聞きつけて、瀬戸山さんが席を立って近づいて来た。


「どうしたの?」


「この子が、勇人を彼氏にしたいんだって」


「え? 真里亞だけじゃなくて? どうして?」


「優しくて、強くて、素敵だからよ」


「勇人は私の彼だから、貴女になんかあげない」


「私は胸を触られてるし、彼が自分から乗り換えるのは勝手でしょ」


「あれは当たっただけって聞いたわよ。勇人は、貴女の胸なんかに興味ないわよ。勇人が好きなのは、先輩の胸よ!」


「ブッ!」


 栃原副部長が、飲んでいたジンジャエールを噴き出した。


「私は何もしていないから。ましてや、胸を見せた事も触らした事も有りません。変な噂を立てないで頂戴!」


 栃原副部長も席を立ってやって来た。

 その豊満にしてたわやかな胸を三人が見つめる。

 超美形に少しの可愛らしさを足した顔、背中まで有る漆黒のストレートヘア、160cmの身長に、キュートなボディに豊満な胸。

 彼女にコンプレックスを抱かない女性は居ないだろう。


「あのカメラ回してた子には、胸を、胸で寝かして居たじゃない! 胸枕で幸せそうに寝てたじゃない」

白本さんが新語を作って抗議している。


(胸枕って! 確かにそうだけど)

紅葉も、寄って来て居た。


「貴女は、ああやって、誰にでも胸を貸すんでしょ。彼は貴女と付き合って居ないでしょ。そう言ってたし。貴女の彼氏はそちらのおられるじゃない」


「付き合って居なくても、告られなくても、女は男の気持ちが判るものよ。男は女の気持ちはわからないけどね〜」

栃原副部長は、チラッと瀬戸山さんを見る。


「貴女達も彼の気持ちが分かるから騒いでいるんでしょ。残念だけど、貴女達の入る余地は無いわよ」


「ところで、彼? 部長はクラブの仕事で一緒にいる時間が長いだけで、何にも無いわよ」と部長との関係を否定した。


「でも桜木くん、可愛いしなぁ。どうして歳下なんだろう。あたし、おねぇさんキャラじゃ無いしね。フゥ〜」

栃原副部長が溜め息をつく。


「「「「ええぇ!  一番お姉さんじゃん」」」」

四人が一斉に突っ込んだ。




面白ければ☆五つを、面白くなければ☆一つをお願いします。続きを読みたいと思ったら、どうかブックマークをお願いします。よろしくね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ