表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/215

ゾンビの後始末 その60

「その子たち、大丈夫? 何も食べていないんでしょ。喉通るかしら」栃原先輩は、女生徒の方にペットボトルのお茶とおにぎりを持ってやってきた。


「ありがとう」辺りを見て「もう、ゾンビは居なくなってる」と呟いている。


「あ、倒しちゃったからね。道の駅かパーキングが有ったら止めてもらうね」


 確かにゾンビはいなくなって居て、帰り道にはその姿を見る事は無かった。


 バスはゆっくりと未舗装の道を走って行く。


 一般道の方に出る駐車場の手前で、みんなは息を飲んだ。大量のゾンビが殺されて居たのだ。ゾンビなので倒されて居たと言うべきか。

 マイクロバスが通れるスペースだけは、確保されて居た。


 トラックが数台停まっており、作業員が働いて居た。白い不織布の繋ぎに、肘までのビニール手袋をはめてゴーグルにマスクをしている。


 そのうちの1人が近づいてきて、ゴーグルとマスクを外す。勇人だ。


窓を開けて、真里亞が話しかける。

8月の焼けたアスファルトの熱気と腐敗臭が車内に入って来る。


「お疲れ様、救出出来た?」


「三名居たわよ。あと、ゾンビが建物の中に三体、駐車場に五体、倒して有るわよ」


「回収しておくよ」「蘇我さん、カメラを頂戴、一緒に出しておくよ」勇人は自分のこめかみを指差して、蘇我さんに手を伸ばした。



 車内の皆は、車窓に広がる死体の群れに絶句して居た。


「誰が、こんなに倒したんだ?」

「どうやって……」


 相模川の魔法部の部長の柿田部長が、やっとの思いで呟いた。これもあの男の仕業なのかと震えて居た。


「真里亞が……」

「蘇我さんが」

 瀬戸山さんと桜木が答えた。


 真里亞は名前を呼ばれたのかと振り返ったら、全員の視線が自分を見ていた。


「え? なに? どうしたの?」


「これ、真里亞が倒したよね」


「ああ、うん……。……テヘッ!」


 真里亞は右手で頭を叩き、首を右に傾けて舌を出した。


(((((『テヘッ!』と違うわー!)))))みんなが一斉に心の中で突っ込んだ。


 瀬戸山さんが後ろの方の窓から顔を出した。


「勇人、来て」


「なに?」


「手が汚れてるから後ろに回して、私の方に持ってこないで、服が汚れちゃうじゃない」


「ああ、ごめん」


「目を瞑って」


「なに?」


 葉月はそっと勇人の上唇を吸った。


「私の」

「手は動かさないで、汚れるから」


勇人の頭を抱える様にキスをしている。


「おいおい、何やってんだ?」金田部長が怒り出した。


「私も残って手伝うね」


「早く帰って、LINEするから」

「日没までに片付けないと危険なんだ。作業員が暗がりの中で襲われちゃうからね。遅くなるから、先に帰って」


「遅くなってもいいから、私も残るね」


「終わったら、県警に行って、手続きするから、深夜になるかもしれないし」


「深夜になってもいいから、手伝うね」


「県警で風呂に入って、匂い落とすから、すっごく遅くなるかもしれないよ」


「一緒に県警まで行って、一緒に遅くなってもいいから、手伝うね」


「遅くなって、泊まりになるかもしれないよ」


「一緒に泊まって、一緒に寝るから、いいの」


「え? ええ? 俺、今日、今日、コ、コ、コ、コン、コンド……、持って来てないし……」


「え? ……。そ……、……そんなことしません!」


「あーあ、自爆したな」

「あちゃー」

「馬鹿……」

「そんな事、誰も言ってないだろう」


 周りのギャラリーから、小さなツッコミが入る。


 が、真剣な者もいた。


「瀬戸山! 遊びで来たんじゃないぞー!」金田部長が顔を真っ赤にして怒っている。


「お前は、彼氏を連れて来て、デートのつもりかぁー!」


(連れて来たのは真里亞だし、ここの仕事をしたのは藤波と真里亞だろうが。彼らの仕事で、自分たちはゾンビに出食わさなかったんだ。仕事してないのは、お前だろう)


秋山さんが立ち上がりかけた時、「私が言いますね」と栃原副部長が立ち上がって、金田部長を手で制した。


「瀬戸山、お前は時と場所を考えろ。一体どういうつもりだ。人の生き死にが関わっている時に」

「はい、部長、部員の規律の乱れは、副部長である私の責任ですから、私が叱ります」

「瀬戸山! お前は気が緩んでるんだ。反省しろ。猛省出来るまで表で頭を冷やして来い!  荷物をまとめて出て行け! 早くしろ!」


「え?」と予想外の展開に皆が驚いていた。


 元々、一日分の食料とバトルスタッフぐらいしか荷物がないので、栃原副部長が瀬戸山さんに荷物を手渡ししている。


「反省したら帰って来い! 今夜は寝かさずに反省しろよ」


頭を撫でて背中を押してバスから下ろす。


「しませんから、そんな事」


「私も降りる」真里亞が立ち上がって振り返る。


「止めなさいよ。みっともない。降りたって、一緒の部屋に泊めてくれないわよ」


秋山さんが真里亞の腕を掴んで諌めている。


「運転手さーん 、すいません。バスを出して下さい」


 2人を置き去りにして、バスは発車した。


「なんでいるの?」


「反省しなさいって」と勇人は瀬戸山さんに笑顔で答えられた。


「いや、俺、仕事してるんだけど……」


 瀬戸山さんは、他の作業員には好評だった。真夏に不織布の繋ぎを着て作業するのは、死ぬほど暑いのだ。その為、熱中症にならない為に水分補給は必要なのだ。そして、自分の娘ぐらいの年齢の娘さんが、お茶やお弁当を運んでくれる 。これは嬉しくないはずがない。


 瀬戸山さんが、「みなさん、お茶です」とか何とか言って配っている。別にタダで貰っている訳ではない。ちゃんとお金を払っているのに、お父さん達の人気者だ。


 作業は、日暮れまでには片付いたので、県警まで連れて行って貰った。

 手続きを済ますと、近くの観光協会の会館で風呂を借りている。勇人達は作業員の仲間と風呂に入っている。汚れと匂いを落とす為だ。瀬戸山さんも隣の女湯に入っているはずだ。


 遺体は、事件性? が無いと遺族に返される。 ゾンビに食われてるのは事件では無いらしい。で、殺人事件でもあると、警察の出番となる。

 しかし、わざとゾンビに食わせたりしても、時間が経っていると分からないそうだ。因みに、殺人事件等で、先に死体になると、ゾンビにならないので、今回の遺体にはいない。


 冷蔵庫に入れられた遺体のうち、身元の分かるものを身に付けていると、数週間で家族に連絡がいくそうだ。

面白ければ☆五つを、面白くなければ☆一つをお願いします。続きを読みたいと思ったら、どうかブックマークをお願いします。よろしくね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ