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橋本神社の夏祭り、顛末 その54

 俺は、さりげなく、そっと近づいてそばに立っている。と、蘇我さんが瀬戸山さんを呼んだ。


「あの男、あなたの事を狙っているわよ。やあぁ〜ねぇ」って聞こえているんだけど。


 桐崎は靏見さんとラブラブオーラを出して、他者の侵入を許さない構えだ。


 俺は、女性三人組の後ろをついて歩いていく。


「藤波君? 焼きそば食べる?」


「あんなのほっときなさい」



「藤波君、金魚すくいしようっか?」


「おじさん、三人分! あいつは良いから!」


「藤波君、願い事の短冊書こう」


「短冊、3枚ちょうだい」


(なんか、真里亞に邪険にされているんだが、意味がわかんない)と思っていた。


 商店街は、笹や吹き流しで飾られている。その中を神社に向かって歩いて行った。


 この神社の縁日は8月1日なのだが、今日も境内に縁日が出ている。


 瀬戸山さんが、風船ヨーヨー釣りが気になるようだ。俺は黙って近づいて行った。それに気づいた真里亞が、「何こっちに来てるの?」と瀬戸山さんとの間に入ってくる。


「真里亞! 今日は一体どうしたの? ちょっと、こっち来て!」と秋山さんが怒り出した。


「ちょっと、用事が出来たから、先に行くね」と真里亞の手を引いて何処かに消えてしまった。

 桐崎は、靏見さんととうの昔に消えているし、二人だけ置いて行かれてしまった。


 二人で手を繋ぎ、風船ヨーヨー釣りをし、綿菓子を食べて、おみくじを引いて、拝んで帰った。

 帰りしなに、短冊に二人で願い事を書いた。「ずっと仲良く、二人で居られますように。勇人 葉月」と。


「なんか、俺、蘇我さんに嫌われる様な事したかなぁ?」


「ううん」


「だよね。なんか、今日はおかしかったよね。葉月を俺から守っているような」


「ええ? 解らなかったの? 私の勝ちよ。絶対離さないから」


「???」


「私のものよ」瀬戸山さんが抱きついて来た。


 瀬戸山さんが、俺の胸に顔を埋めて動かない。


(胸、胸、胸が当たってるよ。そんな事されると、男は恥ずかしい現象が起こるんだよ)


 下を向くと、瀬戸山さんの頭が有る。俺の顔を頭に埋めると、


「今日は許してあげる」と胸の方で言って来た。


「あのね、瀬戸山さん、……」


「こういう時は、下の名前で呼ぶのよ」


「葉月、あのね、ミミを……」

「ダメ!」


瀬戸山さんが、上を向いて目を瞑って行く。

俺はゆっくりと唇を重ねた。


「右耳だけだから……」


「キスの間は黙ってて」


 永遠の時間が一瞬で過ぎ去った気がする。時間の流れが一定でないことは、今、この二人で証明された。



 秋山さんと真里亞は、帰宅後ラインで話をしていた。


紅葉「真里亞、今日はどうしたの?」


真里亞「何が?」


紅葉「葉月が藤波の事気にしてるの知ってるよね」


真里亞「うん」


紅葉「じゃあ、どうして邪魔するの?」


真里亞「う〜ん、え〜っと、何だろう」


真里亞「私も気になっているのかもしれない」


紅葉「えええええぇぇぇぇ〜!」

次回は新章になります。


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