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魔法部の合宿 その47


「そちらに帰られないので、こっちで見る」と桐崎からラインが入る。


 花火の打ち上げ時間は短いので、時間内に桐崎達は帰ってこなかった。


「そっちに行けないから、勝手に帰る」と桐崎からまたもラインが入る。


(これか? これが狙いか? どっちだ? 俺たちを二人にするのが狙いか? 自分達が二人になるのが狙いか?)俺は考えるが、答えは出なかった。


 花火が終わり、混雑の中迷子にならないように、手を繋いで歩いて駅に向かう。少し動いては止まり。また、少し動いては止まる。その間も、帰りの電車の中でも、ずっと手を繋いでいた。

 瀬戸山さんを家の最寄の駅まで送って行った。


「藤波君、あのね」


「何?」


「今度、お祭りに……。ううん、何でもない。またね」


「じゃあ、またね」


 戸山さんは何かを言いかけて、止めた様だった。


 瀬戸山さんは、夏休みに入ると、魔法部の合宿があるそうだ。

 高尾山の宿坊で三校合同の合宿に参加するそうだ。名前の通りが良いので高尾山と言っているが、位置的には陣馬山の山中になるらしい。


「少しの間、会えなくなるね。」と言ってきたので、この前作ったコミュニケーターを渡す。「A」マークに楕円の衛星軌道が描かれた旗章だ。


「これを胸につけておいて、どこに居ても飛んで行くよ」と伝えた。


「夏祭り、また一緒に行こうね」と約束した。


 そして、瀬戸山さんの家の最寄駅から、彼女の家の近くまで送って行った。


 終業式の日、俺は通知表を確認した。実技の点数が無くてもなんとかなるものだ。

 夏休みに、赤点だった魔法学の補講が二日ほど入っただけで済んだ。一学期だけでは、退学とかは無いようだ。

 補講の内容は、一時間あたりグランド10週だった。当日、休んでいたとかなら、再度実技を行えば良いのだが、授業に出ていて成績が悪いのだから仕方がない。体育の授業で、水泳のタイムを計る時に泳げないのと同じ扱いなのだ。


(こんな補講をしても、魔法は使えるようにはならないと思うのだが)


 試験休みに入り、勇人は大きな箒を探していた。

飛行物を作りたがったので、その為の実験用だ。

 魔法使いの空を飛ぶ乗り物と言えばホウキだろうと思って探しに行ったのだ。しかし、日本には、丸いホウキが売っていないのだ。公園で使うような竹箒は売っているのだが。そして、当たり前だが、売っていても長身の勇人には、乗るには短いのだ。

 そこで、一から自分で作ることにした。

 その為、箒を作っている工場で、ホウキグサを譲って貰おうとしたら、希望通りの箒を作ってくれた。それなりの値段はしたが、ちょうど良いサイズになった。


 サザンは怖いもの無しの魔力を持っている。なにせ、竜殺しのスライムだからな。ただし、魔法の道具を作ると言う意味においてだけど。

で、まずは空飛ぶホウキを作ってみた。


 ドローン、所謂マルチコプターを利用し、無人でも空中で安定して止まれるようにした。

 魔法は便利だ。空飛ぶゴーレムだと思えば分かりやすい。箒が口頭の指示を聞いてくれるのだ。そして、空中で止まることが出来るのだ。


 竿の竹は太く長くした。全長2.1m。先に飾りが彫り込まれたS字フックが付いており、ランタンやランプを吊ることができる。

 実験は大成功であった。ちょっと、次を作れそうな気になって来た。俺は秋葉原に行って、制服を買おうと思った。もちろん惑星連邦の制服だ。カークの頃よりピカードの頃の方がかっこ良いと思う。



 魔法部は、夏休み早々に合宿だった。


 合宿所になっている寺は、相模湖からまだ奥に入って行った山の中にある。

魔法部の部員達は、着替えと杖を持って、駅から半日歩いて、山頂を目指した。


 寺の施設には違いないが、宗教色は少なく、鉄筋コンうクリートの4階建てだ。よくこんな山の中に立てたものだ。

 入口の看板には「月光院 別館 修行道場」と書いた木の看板がぶら下がっている。


 鏡屋部長が挨拶に行き、部員を各部屋に荷物を置きに行かせる。

「全員揃ったら挨拶に行きます。荷物を置いたら集合!」部長が集合を掛ける。


 他の学校の参加者も一階の食堂兼教室に集まっている。

全員が揃って入って、挨拶をし着席する。他の学校も今しがた着いた所のようだ。


 全員で60名程、夏休みに入った所なので、まだ、三年生がいるので参加人数が多い。

 普通は、一般の者が魔法を習おうとすると、魔法使いに弟子入り、私塾に通うか、魔法部に入るぐらいしか方法はない。学校に魔法学科が有る方が珍しいのだ。その為、普通、魔法部には魔法が使えない見鬼や錬金術師、全くの素質無しの学生までいる。


 畳の部屋に座布団を敷いて、全員正座して聞いている。

 みんなの前では、作務衣姿の坊さんが喋っている。

「今日から、四泊五日の間、皆さんはここで魔法の修行を行う仲間です。家族です。仲良く、そして厳しく勉強して行きましょう」とオリエンテーションの挨拶をしている。


 次に、参加している生徒の自己紹介が始まった。

 参加している他の二校は相模川高校魔法部と八王子妙法寺高校の魔法部だ。相模川に白本さんが居るはずだが、商業の魔法部とは面識がない。向こうも、大会で戦ったメンバーが居ないので驚いたことだろう。


 各フロアーの会議室は自由に使って良いとの事だったので、その後、鏡屋部長が会議室でミーティングを行なっている。


 本日は、筋トレと走り込みを行うと通達があり、表の庭に集まった。

 運動部のそれに比べたらクソみたいな運動だが、普段から運動しない彼らには十分だった。

 魔法使いは、体力はHPに、精神力はMPに関係する。その為、ある程度の運動は必要なのだが、基本文化系の活動になる傾向にある。そう言う事もあって、軽い運動でも辛いのだ。


 夕食と入浴を済ませて、本日は終了という時、表で気合いを入れる声が聞こえて来た。どこかの学校がまだ頑張っているようだ。


 商業のメンバーは、鏡屋部長で良かったと安心して眠った。


 翌朝、朝食が終わると、座学の講義があった。その後は、各自瞑想して過ごす。精神的に成長する事は、魔法使いにとって必要な練習だ。

 昼食後、各々習得レベルに応じて、魔法の練習を行う。

 ベテランレベルのものは、直径10cm程の金属の深皿を標的にして魔弾を撃つ練習をしている。

 固定した的を離れて撃つ練習や、山の中に作られた、フィールドに置いてある的を歩きながら撃つ練習をしている。この的は、当たると「カン!」と音がするので、命中したのがわかるのだ。

 チンカラホイのコートが2面有り、そこでプレイしている生徒もいる。

魔法道を戦っている生徒もいる。

 ビギナーは、室内で風車を回す訓練を行なっている。真空にしたガラス容器の中に魔力を跳ね返し易い塗料が塗られた風車が置いてあり、魔力が出ていると、反射で風車が回る仕組みだ。


 各自、自分の魔法習得具合に応じて、各々、鍛錬に励んでいる。


 魔法部と言えど、大半が、魔法が使えない生徒が多いのだ。

そして、今、全力で鍛錬すると、夕方までに魔力が切れてしまうのだ。

 そこで、各自適当にサボるのだ。見つかると怒られるので、自然とサボるのだ。どうするかと言うと、後輩や未熟な者を支援したり、指導したりして手伝うのだ。


「肩の力を抜いて、深呼吸して、おへその辺りのエネルギーを利き手に送るつもりで」とこんな感じで指導している間は、自分は魔力を使わずにすむのだ。



 夏の暑い日が暮れて、1日が終わる。

 入浴と食事を済ませると、みんなの体はくたくただった。



日がくれた山の上とは言え、建物の外は暑い。そこに二人が座って話している。

 栃原先輩と瀬戸山さんだ。

「あの子とは進んだの?」と栃原先輩が聞いて来た。

「花火に行ったけど、進んで無いんです」

「全然、勉強の方が好きみたいで」瀬戸山さんが答えている。


「ちょっと貸してみなさい」と栃原先輩が瀬戸山さんのスマホを取り上げた。

『来て!来て!早く!』と打って、「えっと、何にしようかな?」と栃原先輩はラインの続きを悩んでいた。


その時、「全員集合!今から合同ハンティングの実技に出かけるぞ!5分以内に準備しろ!」鏡屋部長の声が聞こえた。



「えっ?急がないと、瀬戸山、急げ!」『シュー』栃原先輩はスマホを返しながら立ち上がった。

 受け取った瀬戸山さんも立ち上がって、急いでハンティングの準備に戻った。

 二人とも送信時の音には気づかなかった。






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