表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/215

横浜 花火大会 その46


 一年生1学期の期末考査が終わる。

外はもう真夏の気配で有る。各地の神社では、夏祭りが行われて居る。

空は晴れて、入道雲が高くそびえ立つ。そろそろトンボが飛び、セミがなく時期でも有る。

 勇人は、「魔法科の実技」以外は、ほぼ満点だったろうと高を括っていた。

 魔法使いの素質がない勇人には魔法が使えないのだが、ペーパーテストは習った知識を書くだけなので自信があった。それに、授業で習う程度の事は、もう自習で終わっていた。

 勇人には、読んだ書物の内容を忘れない素質と内容を理解する素質があった。いわゆる、天才と言われる素質だ。ただ、その知識を生活に応用できるかどうかは本人次第だが。


 本日、試験最終日、最後の試験が終わった直後なのでクラスの中が騒がしい。 それに増して、明日は横浜の花火大会の日。その為、特にクラス内が騒がしいのだ。また、夏祭りも有るので、今の時期、高校生はイベントだらけなのだ。

 みんな、この試験休みと夏休みで遊びに行く予定を決めて居るのだ。

 このあたりの高校生は、海に行くなら茅ケ崎、遊園地なら横浜だ。ネズミーランドにも時間的には可能だ。

高尾山にハイキング、と言う高校生はまずいない。あそこは、小学校の遠足で行く山なのだ。


 桐崎と靏見さんが、海に行こうと誘って居る。秋山さんと蘇我さんは行く気のようだ。

瀬戸山さんが、クラブの合宿が有るからと返事を保留している。


「藤波は?」と桐崎が聞いてきた。


「行かない。予備校の夏期講習に申し込んで有るから」と俺は断った。


「でもさぁ、女子の水着だぜ。プルンプルンの水着だぞ」桐崎が自分の胸に手をやって言い出した。


「ゴクッ」

 桐崎と俺は、秋山さんの胸を見て生唾を飲んだ。これが不味かった。


「私行かない」

「私も行かない」

 急に、秋山さんと真里亞の二人が行かないと言いだした。

 いや、秋山さんは分かるよ。秋山さんは、シャツの胸のボタン位置にシワが入っているぐらいだ。確かにセクハラだった。しかし、蘇我さんには何もしていないじゃないか。第一、見せるほどの胸も無いじゃないか。何が不満なんだ。


 しかし、二人ともヘソを曲げてしまったようだ。


 この後は、何を言っても二人は話を聞いてくれず、帰って行ってしまった。その後、桐崎が靏見さんに叩かれていた。


 海水浴の話は、女性二人と俺が行かないと言うので流れてしまった。桐崎よ。君達二人で勝手に行ってくれ。


「じゃあさ、じゃあさ、明日、横浜に行かない? 花火上がるしさ」めげない桐崎が聞いて来た。


「俺、塾だから」といつものお断りをしていると、「あたし、行きたいなぁ」と瀬戸山さんが声をかけて来た。


「葉月行く?」靏見さんは満面の笑みで、彼女は釣れた獲物を離すつもりはない事が解った。


(おいおい、この二人は何か企んでるぞ。瀬戸山さん、よく考えろ)


「私いきたいなぁ」再度、瀬戸山さんが言ってきた。


(俺か? なぜ俺に言う? 別に、俺たち付き合って居ないよ)


「行きたいんだってぇ〜」靏見さんが、こっちを向いて瀬戸山さんの言葉に被せてくる。


「おい、行きたいんだって」桐崎もこっちを向いている。


(あっち向けよ。喋ってるのは彼女だ!)


「試験休み中は、合宿とか無いから自由なの」と瀬戸山さんは予定が空いている事を説明している。


 そして、 三人で俺の方を見てくる。


(こっち見んなヤァ〜、わて関係おまへんやん)心の声は届かない。


 楽しく、四人で行くことが決まった。


 勇人達は、昼前に、橋本駅で待ち合わせになった。高校最寄り駅より大きな駅のためだ。

この駅は京王線や相模線の乗換駅でもあり、駅前も発展している。


 当日、勇人は予備校帰りの為、黒系のスラックスに白いシャツ。背中に参考書の入った黒系のディバックを背負っている。午前中だけ受講してきたのだ。本日は初日の為、手続きと受講料の払い込み、オリエンテーションだけであった。


 女子二人と桐崎が浴衣姿だ。瀬戸山さんはピンクに紫の朝顔などの花柄の模様が入った、夏らしい浴衣を着ている。靏見さんは、初音ミクがアニメのコスプレをしている柄だった。

 桐崎も浴衣を着ている。どうも、靏見さんと合わしたようだ。それにしても、アニメの浴衣、男物も有るようだ。


(どこで売っていたんだろう? バカップルめ!)


 40〜50分程電車に揺られると、横浜駅に着く。みなとみらい線に乗り換えて、元町・中華街駅まで行く。もう車内はすごい混みようだ。瀬戸山さんが俺の前で、押されて、俺にもたれかかって来てそのまま動けなくなっている。

 車窓から見る人混みは、もう、凄い人だ。港の公園が人で埋まっている。


 まずは、桐崎が予約してあった店に行って、お昼を食べる。中華街の外れに有る店を予約してくれていた。なかなか美味いのにリーズナブルな店だ。高校生でも支払いに不安がない。

俺と桐崎は瀬戸山さんと靏見さんの分まで支払う。


(これデートなの? ダブルデート? クラスメイトのお出かけだよね)


 まだ、日没まで時間がある、このまったりとした時間を露店など見ながら運ばれて行く?のではなく、喧騒と人混みと人の流れに流されて行く。流れに逆らうと言うことはできない。

 パレードとか演奏会とか、イロイロと楽しめるようにイベントだらけなのだが、楽しめたのは露店だけだった。

 瀬戸山さんが、綿菓子を一つは多いと言うので、一緒に分けて食べた。

露店の店でも、テキ屋のオネェさんがカラー綿菓子を作ってくれるのだ。

 瀬戸山さんが「風船ヨーヨー釣り」、「金魚掬い」をしているところを写真に撮っていると、彼女にスマホの待ち受け画面にされた。


(どーすんのこれ? 俺達付き合ってないよね。告った覚えも告られた覚えもないのだけど)


 規制される前に、山下公園に着きたかったのだが、遅かったようだ。

ガードマンの指示に従い、ノロノロと列になって歩いて行く。


 日中、パレードなどの行事など色々なイベントを行なっているのだが、それを見て居た人たちも集まって来ており、混雑に拍車がかかっている。


 空いているスペースを見つけ、俺達は、レジャーシートを小さく広げて四人で座った。


 空が赤く染まり、徐々にグレーに変わって行く。山下公園は、前が北東に開けており、日は後ろに沈む。

俺達は雲の色の変化のみを見ることになる。


 空いているうちにと、俺と瀬戸山さんが先にトイレに行った。女子トイレは混んでいて、瀬戸山さんはなかなか出てこなかった。


 二人で桐崎達の所に戻ったが、すでにだいぶ混んで来ていた。

 予定では、海にはイルミネーションで飾られた船が浮いているはずだが、ここからは見えない。


 そろそろ時間だと言う頃に、桐崎と靏見さんがトイレに立って行った。


(だから、早く行っとけよ! メチャ混んでるよ。間に合わなくなるよ)


「いってらっさい」俺は手をヒラヒラと振る。


「ドン! パチパチパチ〜」花火が始まった。


 爆発は近くにいると甲高く、短く聞こえる。爆発の衝撃波が皮膚と内臓を揺らす。


 花火の色に、瀬戸山さんの顔が染まっている。代わる代わるの色の花火が打ち上げられるので、瀬戸山さんの顔と浴衣が、その都度、違う色に染まる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ