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夜中のロケ開始 その40

「蘇我さんとは付き合っていないの?」女子はその話ばかりだなぁ。まあ、彼女はクラスの人気者だし、学校一と言われる優秀な魔法使いだからなぁ。気になるんだろうな。




 俺は、「彼女にはお爺さんを紹介してもらってるし、世話になってるから親しいよ。だけど、男女の仲というわけじゃ無いよ。俺が、曲りなりにも魔法の道具が使えるのは彼女の爺さんのお陰だし、この間の伊豆事件でも、彼女に助けてもらってるし。蘇我さんの家に足を向けて寝れないなぁ」と説明する。




 すると、何か安心したように、「そう、良かった」と瀬戸山さんは笑っている。




(良かった? んん? なんで?)




  その時、桜木が、「みなさん、着きましたよ。次の駅で降りますよ」と車内を言って歩いている。


 放送部の方からも連絡が来たが、桜木が下車の準備を促しているのを確認して、帰っていった。




 街といえば街、田舎といえば田舎の中途半端な駅で降りた。もう辺りは暗く、空には星が出ていた。


 勇人や桐崎など男どもは重い荷物を担いでいる。俺は、両肩に二つづつ、カメラの機材が入ったアルミのケースを掛けている。




 駅前のロータリーで、2年の映研の先輩が、一台のタクシーを拾い交渉をしている。行きと帰りの迎えの車の交渉だ。朝の3時に迎えに来てもらって、始発電車で撤収の予定だ。それぐらいに向かいに来てもらわないと困るのだ。


 ロケの現場は、ここから車で15分ぐらいなのだそうだ。ネットでは心霊スポットとして有名で、検索すれば直ぐに出て来るところらしい。意外と、街中の駅のここから近いらしい。


(なんで、そんなところに好き好んで行くかね。俺は見えないから良いけどさ)




 一行は、順番にタクシーで移動する。タクシーは一度に四人までしか乗れないので、なんども往復して貰う事になった。


 機材の多い映研からの移動になった。一往復30分かかるので、オカ研まで順番が回ってくるのは2時間後だ。


 駅前だが、先に弁当を頂く。


ここは駅前だが、周りは居酒屋ぐらいしか開いていないので、お弁当が必要だったのだ。


 女性陣の大きなリュックは我々のお弁当だったのだ。


 どうも、現地には店がないと言うことで、靏見さんと瀬戸山さんで7人分のお弁当を作ってくれていたらしい。夕食と夜食、朝食の三食分だ。


道理で、リュックが大きいはずだ。




 駅前で、暗がりの中、座り込んでお弁当を食べていた。「あはは、夜中のピクニックって、何かテンションが上がるなぁ」桐崎が笑いながら食べている。(お前は靏見さんがいれば、時間も場所も関係ないだろうに)




 俺が「美味い。料理上手だね」と料理を褒めると瀬戸山さんが微笑んでいる。




 オカ研のタクシーの順番が来たのは、10時頃だった。




 途中、田舎の山道を走っていたが、峠に近いところで旧トンネルの方の横道へ曲がって行く。今は、車は新しく出来たトンネルを走り、旧トンネルを走る車は無いそうだ。


 旧道は木々は鬱蒼と茂り、道は右へ左へと曲がっている。


 街灯も無くなり、タクシーが照らすヘッドライトだけが灯りだった。


自然と車内のみんなも口数が減って行く。




 突然、ヘッドライトに高校生の群れが照らし出された。先に着いていた放送部と映研だ。


どうやら、ここが現場らしい。




 俺達は荷物を降ろして、運転手に礼を言うと、タクシーは今度は桐崎達を迎えに行った。




 映研や放送部は、もうリハーサルを行なっている。2年の結城さんが何回も原稿を読んでいて、その風景を映研が撮影している。


こちらを撮影してこないところを見ると、オカ研は眼中にないらしい。




 30分後に桜木と桐崎達が到着して全員揃ったので、俺達は機材の準備をし出した。


タクシーには、次は3時に迎えに来てもらって、ここを撤収の予定だ。






 今回は色々と夜でも映るカメラを準備していたらしい。桜木の持っているカメラは暗がりでも映るのだそうだ。


 マイクもフサフサなカバーを付けている。これを付けると風の音が入らなく、綺麗に録音出来るらしい。




 桜木が一人、山や道、林の中を撮っている。インサート用の映像と言うらしい。よく分からんが、三脚に乗せて彼方此方を照明も無しに撮っている。


俺達は、別のカメラを渡されて、三脚に固定して行く。


「そっちのカメラは回しっぱなしにしておいてください。何が撮れるか分りませんからね」桜木が指示を出している。


 これらのカメラも暗がりでも映るそうだ。そして、マイクの先にフサフサを被せて行く。


 これで準備が終わり、三脚を固定して、全体を映るようにしておく。




 トンネルを撮り続けるカメラ、今しがた来た道を撮り続けるカメラ、道の反対側から荷物と後ろの森を撮り続けるカメラなどをセットした。


細かい設定は桜木がしてくれたので良くは分からないが、何かが映るのだろう。




 栃原先輩と瀬戸山さんがレポーターとアシスタント、ゲストに見鬼の富士見さん、桜木がカメラマン、照明が桐崎、音声が靏見さん。そして、俺が留守番だ。






 栃原先輩、富士見さん、瀬戸山さんの三人はピンマイクを付ける。そして、それを桜木がチェックしている。


 靏見さんがマイクブームと言うのに、ガンマイクを付けて画面に映らないように三人の声を拾う。


 靏見さんはヘッドフォンをして、マイクブームを持って、


「テレビ局のスタッフ見たい」


と喜んでいる。


 これは腕がだるいと思うんだけどなぁ。


 もちろん、靏見さんのマイクも桜木のチェック済みだ。


そして、栃原先輩ら三人が手持ちのマイクを持っている。


桜木のカメラにもマイクが付いているし、(一体、幾つマイクが必要なんだ?)




 桐崎は照明係なので、バッテリーとランプを持っている。




 俺がヘッドライトに赤いキャップを嵌めていると、桜木が「もう良いよ。これだけ明るいと意味ないから」と笑っている。赤いキャップは何の意味が有ったのだろう?




 映研、放送部、オカ研の順で撮影して行く。他所のクラブが撮影している間は、照明を消して、真っ暗にして待つのだ。相手のカメラに光が入るからだそうだ。会話は離れているので、小声なら可能だった。


 映研は、ドキュメンタリーの製作なので、インサート用の映像を撮影していた。


(インサート用の映像と言うのは何だろう? まったく謎な撮影だ)


 次の放送部は、結城先輩がマイクを持って撮影している。


 途中、「キャー!」とか悲鳴を上げる一年生も撮影している。桜木によると、彼女達は悲鳴を上げて逃げる役のエキストラなのだそうだ。

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