魔法道大会 その36
週末、魔法道大会当日、引率の先生は中等部の金岡先生だ。
数学の男性教師で、魔法は使え無い。
どうも、頼まれて、急遽引率の先生に決まったらしい。
初めて会った先生なので、皆んなで挨拶をする。
向こうも、適当に挨拶を返してくる。
梅雨空の中、市立体育館に向かってゾロゾロ歩いて行くと、他の学校の生徒も集まって来て歩いている。
県大会で行われる競技は三つ。
魔法調理、シングルと団体。
チンカラホイ、シングルと団体
魔法道、シングルと団体だ。
魔法料理は、決められた時間内にお題の料理を作って、美味いと得点が多い方が勝ちになる。
チンカラホイはアルミパイプで出来た杖をラケットにして魔力を飛ばし、紙の立方体の駒を相手コートに落とすスポーツだ。一見、バトミントンとバレーボールが合わさった様なスポーツだ。
シングルは一回だけタッチでき、バトミントンに似ているが、ダブルスからは三回タッチ出来るので、結構盛り上がり面白いのだ。
俺たちが向かっているこの会場は、魔法道のみが行われる。他の競技は、別の施設で行われている。
シングルは、我々とは別のコートで、同時に行われる。
コートの大きさは剣道と同じで、コートより出てはいけない。
また、天井に触れてもいけない。
防具は、着物の裃と狩衣の様なものと柔道の道着を合わせたようなものを厚手の布で作って有る 。
前は合わせになって居て、バトルスタッフで突かれても、致命傷にはならない様になっているが、相当に痛い。
ただし、重いので防具を付けようが付けなかろうが自由で有る。野球の審判のような防具があるが、重いのである。こんなものは魔法攻撃の防御には全く意味が無いからだ。ファイヤーボールなら一発、投石ぐらいなら数発は防いでくれるだろうが。動きが悪くなるのを嫌う選手が多いのだ。
俺達だけ学校体育のジャージだ。他の学校は、クラブお揃いのジャージを作っている。
控え室で着替えて、体育館に集まる。
参加者全員が時間内に揃っており、来賓や偉い人の挨拶を聞いている。
(こう言う挨拶が退屈なのは仕方がないが、せめて短く出来ないものか)
そう思って、聞いていた。
試合は午前に三試合、午後に一試合、全てに勝てば優勝だ。
もちろん、トーナメント戦なので、最初に負ければ30分で終わってしまう。
現実には16校も出ていないので、シード校もある。俺たちは選ばれなかったが、強豪校やくじ運の強い学校がシード校になっている。
当たり前だが、魔法学科や魔法部と言うのは一般的じゃ無い。
バスケットボール部やサッカー部がない学校を探す方が難しい。しかし、魔法と言うと使える人が少なく、まだまだ一般的じゃ無いクラブなのだ。
さて、試合の方だが、一校目、桐崎と蘇我さんのお陰で、楽々勝った。
いやあ、桐崎が強い強い。
短い杖を日本刀の様に使い、ボカスカと叩きのめして行く。
彼は、短い杖の先に光弾を発生させて、それを撃たないのだ。
杖で相手を打つと、打撃だけでなく、光弾のダメージも行く仕組みだ。
相手が、撃たれない様に物理障壁が張ると、光弾を撃ち、光弾を警戒して魔法障壁を張ると、物理的に叩くと言う作戦だ。
これは、彼のオリジナル戦法では無く、高レベル魔法使いは皆している作戦だ。ただ、彼が強いので、目立ってしまっているだけだ。そして、彼は魔力も結構強いので、危険になると瞬時に魔法の障壁を展開する。
それも、グローブほどの必要な大きさだけ展開するので、魔力消費は少ない。
彼は、この競技のために生まれて来た様なものだ。
そして、蘇我さんは、他の生徒に圧倒的なレベル差を見せつけていた。
砲台型の戦闘で、絶対的魔力で相手をねじ伏せていた。
俺と秋山さん、靏見さんは一度も戦っていない。コートの横に控えて座っていただけだった。
俺達は初戦を勝ち抜いて、第二試合を行う。これに勝てばベスト4だ。
ここで、引率の先生に欲が出た。
メンバーの順番を変えると言い出した。
先鋒、桐崎。
次鋒、蘇我。
中堅、秋山。
副将、靏見。
大将、藤波。
を
先鋒、藤波。
次鋒、桐崎。
中堅、秋山。
副将、靏見。
大将、蘇我。
に変更して、蘇我さんの魔力の温存をすると言い出したのだ。
(いやいや、あんな火の玉が当たったら死んじゃうよ。誰が闘うんだよ)
「先生、無理です」
「俺、魔法は使えませんから」
と訴えたが、「勝たなくても良い。逃げ回っていれば良い。お前は、相手の魔法を消費させるだけで良いんだ」と有効な作戦を思いついた優秀な先生風のドヤ顔で言われた。
(いや、先生、生徒一名絶命するよ。火の玉が飛んで来るんだよ)
俺が先鋒になった第二試合、相手は、私立相模川高校、通称「川」と呼ばれている。
この地域は「相模」を冠した名の高校が多いのだ。
公立で、相模原高校、相模原総合高校が有り、我が校は私立相模原商業高校、通称「商業」と呼ばれている。
以前に、女子商業高校だった為だ。
さて、相模川高校の一年の先鋒は小柄な女生徒だった。
髪は背中まで有り、三つ編みで一つに括っている。
眉は力強く美形だ。
背は普通ぐらいかやや小さい、胸も有りプロポーションは良い。
名前は、白本 清美
防具は付けず、青いクラブのジャージを着ている。何やら背中に文が書いて有る。
(あんな格好じゃ殴られねーじゃん。どうすんだよ)
コートの中央に進み、礼をする。
彼女は美形だけど力強い目をしている。
中央付近の白線の前で、互いに準備する。
「構え」
「降参します」と俺は両手を上げた。
「馬鹿! 真面目にしろ!」
「きみ、真面目にやりたまえ」
「藤波!」
「ちょっと、真面目にしてくださらない?」
「馬鹿!」
一斉に、俺を非難する声がする。
(お前ら、死ぬ方の身にもなってみろ!)
「ちゃんと構えて」
(って、無視かよぉ)
渋々、バトルスタッフを持って構える。
結局、お互いバトルスタッフを両手で持って構えている。
俺のバトルスタッフはやや長く太い。格闘専用のチョイスだ。
(どーすんだよ、これ)
「よーい、始め!」
白本さんは、バトルスタッフを俺に向けて、呪文を唱える。
短縮呪文だ。
無詠唱は出来なくても、一言二言で使い慣れた呪文なら発動出来る。
戦闘には必要な技能だ。戦い慣れているのだろう。
白本さんのバトルスタッフの先端が光り、光弾が飛んでくる。
溜めの時間が無いのである。
が、所謂、魔弾と言うものは飛んで来る。レーザーなどと違って、人間が肌で感じれる程の速度なのだ。レーザーは光速なので、人には飛んで来るところなど見えない。が、魔弾は見えるのだ。
火球などは、プロ野球のピッチャーが投げる剛速球並みだ。
光弾はその二回り程速い。
発射を見てからは避けれないが、発動とともに避ければ、避けられないことも無い。
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