聞き取り調査 その30
この週末に、学校の体育大会がある。土日と二日間に亘って中高と合同で行われる。
赤組、青組、黄組、桃組、緑組、紫組の6組に別れて、競うのだそうだ。中学からの進級組には当たり前らしいが、俺の様な、高校からの入学組の連中には異様に映る。
事前に、各クラスの委員長が組み分けにくじを引きに行っている。我がMGー1組は紫組になった。
因みに、工業科の機械科はMAー1と表記される。
陸上競技はメインの運動場で、各競技は、各グランドや専用コートで行われる。
ただし、運動部員は自分のクラブの競技には出場禁止だ。世話係をするので、出場できないという話もあるが。
現実には、陸上部員やサッカー部員がバスケットボールをしてもそこそこ強い。やはり運動神経やセンスがいいのだ。
各学年で4組程が同じカラーのチームになる。
そして、運動部員は、自分達のクラブの競技の準備委員になる。
クラスから選出された準備委員はメインのグランドの準備や進行用だ。
そして、各準備委員には、インカムで指示が来る。メイングランドに面した校舎4階の教室が準備委員会の指揮室になり、体育祭準備委員会の運営本部が置かれる。
インカムは通常は、本部 ー 子機一斉 で有るが、本部 ー 特定の子機、 子機 ー 子機 などが出来る。
腰に子機本体を付けて、耳のマイク付きイヤホンにブルートゥースで飛ばされる。
月曜日の放課後、机上シミュレーションが有った。
10分ずつ時間を進め、自分が何をするか合同でチェックするのだ。
例えば、各時間になると、騎馬戦の各クラス代表選手入場、そして、待機場に次の玉入れの選手集合。と段取りを確認したり、準備委員が出場する時、交代員は誰がなるのか?と確認する。具体的に、時間になると、「魔法科1年1組藤波です。〇〇競技に出場の為、抜けます。」と連絡する。
その間、準備委員の人数が足りているかチェックし、「〇〇科何年何組、△△、交代に入ります。と実際に声に出して確認するのだ。
それでも、シミュレーションでは足りて居ても、当日本番では足りなくなるのは常なのだそうだ。
主な原因は、プログラムの遅れが原因なのだそうだ。その為、一緒に仕事をする仲間と交代要員の確認は大切だ。
そして、俺は桐崎が推薦してくれていたおかげで、準備委員になっていた。その為、このシミュレーションに参加していたのだ。
で、今日、この日のシミュレーションは無事に終わったが、帰りが遅くなってしまっていた。
下駄箱で上履きから靴に履き替えていると、栃原先輩と瀬戸山さんに会った。
県大会が近いので特訓をして居たらしい。
「お疲れ様です」と栃原先輩に挨拶をすると、ファンの娘や男に睨まれた。どうやら下駄箱で出待ちを行なって居たらしい。
(俺、何もして居ないよ。挨拶をしただけだよ。しかし、栃原先輩って人気あるんだね)
「藤波ぃ、一昨日はありがとう。この後暇ならお茶でも飲まない?」瀬戸山さんがお茶に誘って来た。
まあ、塾まで時間が有るので、一緒に飲みに行く事にした。
そしたら、何故か栃原先輩も付いてきた。
駅前の喫茶店で、俺は紅茶を頼んだ。この店は、専門店ではないが、茶葉を何種類か選べるのだ。
「アールグレイティー、ホットで」俺は某所の宇宙戦艦で有名な紅茶を頼んだ。
「一昨日は有難う、まさか引き摺り込まれるなんて思わなかったから」相当ショックだったのか、目が真剣だ。
「気にしなくて良いよ。仲間じゃ無いか? 俺も色々経験させてもらったしさ」適当に相槌を打っておく。(まあ、気付いてくれるなんて思っていないけど、俺はクラスでカーストの底辺だからね)
「魔法部に来ないか?」栃原先輩が勧誘モードになって居る。
(突然、何を言いだすんだ? この人)
「俺、魔法は使えないんですよ。だから、いつも蘇我さんに助けて貰ってばかりで」情けないが、事実だしな。
「真里亞と付き合ってるの?」と瀬戸山さんが聞いて来た。
(またそれか? 女子は他に聞くことはないのか?)
「付き合って無いよ」
「瀬戸山さんも知ってるでしょ。蘇我さんのお爺さんに修行させて貰って、それで仲がいいの」4月の話を説明する。
「ふ〜ん」何か含んだ返事を返される。なんだ? この反応。
栃原先輩が、入部の勧誘をはぐらかされて、何か言いたそうだ。
(よくよく見れば、栃原先輩って、美人だし、大人だし、色気あるし、そら人気出るよなぁ)
「一昨日の事、報告書を出さないと行けないのよ。で、話を聞かせてくれないかしら?」本題はこっちか。
「良いですけど、ここじゃ耳が多過ぎますよね」周りのテーブルでは、栃原先輩のファンが聞き耳を立てている。
「どこか違う店に行きましょうか? それとも私の家にしましょうか?」
先輩は家でも良いような口振りだったが、まあ、何処でも同じような気はするが、学校を出たのが遅く、家にお邪魔すると夕食時分になるので、カラオケボックスにした。
学校近くの駅を2つ3つ離れた駅の駅前のカラオケボックスにに入った。
この時間はまだ、ドリンクが付いて安いのだ。
俺は、ステータスアップとサザンの事は黙って居たが、後は正直に話した。
あと、蘇我さんが使った魔法も黙って居た。
「基本、相手が触れられるという事は、こちらからも触れられるという事で、特に不思議はない。作用反作用の原理なのだ。」というスタンスで話すと笑われた。
「それが出来るのは君だけだよ」と。
(いや、現実に捕まえられたし、括れたし)
報告書の為の報告が終わって表に出ると、もう日が暮れて居た。
「栃原! 瀬戸山! お前らもカラオケか?」
振り向くと男が二人居た。
魔法部の3年生で、林田先輩と国山先輩だそうだ。
「こんばんわ」俺は適当に挨拶をして置いた。
「お、役者が揃ってるねぇ」と国山先輩。
「栃原、お前、あの映像は無いわ。話盛りすぎだろう」と林田先輩が言い出した。
「どんだけ話を盛るんだよ。瀬戸山、何処から芝居だ」国山先輩も乗っかって来た。
映像とは、オカ研の桜木が撮影して居た映像の事だろう。
二人ともアルコール臭い。酔っているみたいだ。
「全部本当ですよ。報告書を直ぐに上げますから」と栃原先輩が切れ気味に返事をしている。
「あはは、だって、漁船が急に現れるか? なぁ! 誰だっけ? モヤシ君」
学年は上かもしれないが、初対面で「モヤシ」呼ばわりは酷いな。
「先輩、良いですか? あの映像はオカ研の桜木君が上げた映像です。全ての責任と著作権はオカ研か桜木君に有ります。我々に言われても困ります。
直接、桜木君に言って下さい」
俺もちょっと腹が立ったしね。ちょっときつく言ってみた。
「はあ? おまえなに?」
「1年が偉そうに何言ってんのぉ?」
「ちょっと、表で話そうか?」
3年の林田先輩と言うのが絡んで来た。
(鬱陶しいな。なんで酔っ払いのテンプレって語彙がないの?)
「良いですよ。ちょっと迷惑になるので、女性達の居ないところに行きましょうか?」俺も売られた喧嘩なので、高値で買ってやるよ。
「ちょっと話してくるから、もう先に帰って」俺は、栃原先輩と瀬戸山さんに帰るように促した。
俺達は駐車場の向こうの公園に行った。国山先輩達は簡単について来てくれた。物分かりのいい二人で良かった。
後から、栃原先輩達も付いて来る。
(あれ? 先輩と瀬戸山さん、何で付いてくるの? 帰ってくれないと困るのだけど)
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