伊豆旅行 その23
フローラのおかげで、昨日は学校を休んでしまったが、今日は邪魔も入らず登校できた。
学校に行くと、再来週の体育大会の話で盛り上がっている。
「藤波〜!お前、準備委員な」
「昨日、お前休みだったから、立候補して置いたよ」桐崎の優しい言葉が聞こえる。
「どうしてだよ? 俺、休んでいただろう」
「だからだよ。満場一致で決まったよ」
(そらそうだよ。そう言うのは「嫌な係を押し付けた」って言うんだよ。第一、立候補じゃなく、それは推薦って言うんだ)
瀬戸山さんが、真里亞の席に来て、週末は暇なのか聞いている。
「西伊豆に行かない? 魔法部のアルバイト」
部費を賄うために、実習とか実地訓練とか名目を作っては、依頼を解決してアルバイトを行うのだ。
学校内の依頼と違って、外部からの依頼は金銭が動くので、クラブとしては美味しいのだ。
解決すると、美味しいものが食べられるだけじゃなく、ちょっと小遣いも増える。
一石二鳥なのだ。
「あのね。誰も受けなかったから2年の先輩が受けて、隣にいた私が同行の指名を受けたの」
「他の子達は、もうすぐ県大会だし、3年生は最後だからって、気合を入れて練習しているので忙しいのよ」
「友達も誘っていいって、先生も先輩も言うから一緒に行こう」
「仕事は何?」
「鎮魂よ。鎮魂。毎年人が溺れて死んでるので、鎮めて欲しいって」
「先輩が全部するから、応援だけで良いらしいの」
「行くだけで良いの?」
「そう、居てくれたら良いの」
「じゃあ行こうかしら。ねえ、藤波くん」真里亞が無茶振りして来た。
(なんでそうなる?)
「行かない。俺は行かない。塾があるし、水はまだ冷たくて泳げないし。俺は行かない」
「なに? なに? なに?」桐崎が声をかけて来た。
「俺は関係ないから、そっちで話をしてくれよ」渡りに船だ。話を桐崎に丸投げして、知らぬふりをする。
「瀬戸山さんが魔法部のアルバイトの依頼を受けて来たの」秋山さんが説明し出した。
「よし、藤波、行こう」
「俺は塾。そんなところには行かないし」
「なに言ってんだよ。海だぜ海」
「鎮魂も何も俺には関係ないし。好きなだけ溺れてくれよ」
「秋山さん、希代子、行くよな」
(ん? 何故、靏見さんだけ名前で呼ぶの?)
「じゃあ、行こうかしら」と靏見さん。
「私はやめとく」と秋山さん。
「そんなこと言うなよ。先輩の顔を立ててやれよ」桐崎がもう無茶振り、理屈無しの勧誘に走り出した。
結局、秋山さんも俺も折れる形になった。
魔法部の持ち出しで、旅費、宿泊代を見てもらう事になっている。
俺は慌てて魔法の道具を作る。(魔力は、素質xスキル÷10で計算される。)
(今度は死霊かよ。って、前回もゾンビか)
先ずは、冒険者の指輪を作る。いや、全く中二病ですな。
着火、加熱、水作成、風、ライト、物理防御、魔法防御、瞬間自動発動、回復、光弾の10種の魔法を指輪に入れる。
「ファンタジーで冒険者が有ったら便利だなぁ。と思う魔法を10種入れて見ました」という感じに上げてある。
きっと、冒険者の宿で売ったら人気が出そうな指輪を作って見た。魔法工房に勤めたら儲かるぜ。全く。
攻撃魔法の光弾は派手だから。単純にそんな理由だった。現在社会で、いったい誰が戦うというのだ。だから、現実に使う事は無いだろう。
付箋型の魔法紙に使い捨ての魔法を水呼吸、飛行、駿足、霊視、ホーリーライトを作って、手帳型スマホホルダーに入れておく。
あと、鉄刀をウエストポーチに入れておく。念には念を入れだ。
あと、フェザー銃だ。
これはバナナ型の銃だ。
照準が合わせ難いので、発射スイッチに触れると赤色レーザーサイトが出るようにした。このレーザーサイトは、魔法じゃ無く市販品だ。普通に電池で動いている。
威力は、本来は、ってかドラマでは麻痺、即死、蒸発だったが、無傷、麻痺、即死、最強の四種類にした。そして、光弾が毎秒50発出る。
そうすると、ドラマでお馴染みの、あのビリビリビリとした、安っぽい合成のような光線が飛んで行くように見えるのだ。
ふふふ、魔法って便利。
(材料の魔核は腐るほどあるしね)
ああ、適当に癇癪玉が出るようにすれば良かった。じゃあ、爆発の演出も出来たのに。ドラマでは、フェザー銃が当たると煙が出るからだ。
部屋で、出力を無傷にして試射する。
構えて、撃つ!
「・・・ ・・・」
「音がしねー!」
ダメじゃん!
結局、一発目だけ、「ピシュッ」って音がするように追加改造した。
へへへ、秋葉原行って、ユニフォームも買わなきゃいけないな。個人的には黄色がいいなぁ。
赤色レーザーサイトを微調整して、30mで合わせておく。
金曜日の放課後、制服、学校指定の鞄で橋本駅に集合した。
今回の旅行はクラブ活動の一環なのだそうだ。まあその為、制服着用となった。俺、魔法部に入って居ないけど。
魔法部の先輩が挨拶をしている。
栃原 優希 普通科2年、魔術師はlv1だが、霊媒士、見鬼、巫女のスキルを持っている。
瀬戸山さんも霊媒士、見鬼は低レベルで持っているので、その為の抜擢らしい。
髪が長く、美人で、歳が一つ違うだけで、大人の色香を持っている。
オカルト研から、桜木 一男が取材に同行する。
(「はじめ」ってキラキラか? 字は普通なのに、絶対「かずお」としか読んで貰えないわ)
彼の持っているカメラは、暗がりでも映るのだそうだ。最近のデジカメは性能いいね。よく分からんが、ISO感度が凄いのだそうだ。
オカルト研究会、通称「オカ研」は、タブライト紙並みの記事をアップして、部費を稼いでいる。
新聞部、放送部とは格が違うので有る。下にだけど。
だから、怪しい出来事には、何にでも顔を突っ込んでくる。
電車を乗り継いで、伊豆を目指す。車窓から大島が見えている。
山の東側の夕方は早く、寂しい。
空はまだ明るいが、あたりが暗くなるのだ。
日が暮れて来た頃に、下田に着いた。
依頼人の人が駅まで旅館の車で迎えに来てくれて居る筈なので、探すとすぐに見つかった。駅前ロータリーに車を停めて待っていてくれた。
オフシーズンの夕方に、この駅にやって来る客は珍しいのだ。
送迎のバスは、10人乗りのハイエースだ。
ボディ横に旅館の名前「松崎、観光旅館 東風荘」 とある。
「ここら辺は、夕方にはバスが終わるのですよ」と教えてくれる。路線バスの終バスが早いのだ。
この伊豆編って、自分でも気に入っていました。
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