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守護者

溶岩湖の中から巨大なトカゲのようなものが姿を現した。


『我が名はサラマンダー。この世界の火を司るものなり。ガーディアンを倒したものはお前たちか。』

「サラマンダー?ガーディアン?お前ガーディアンっていうのか。倒したことになるのか?まだ生きてるぞ?」

『ああ。外殻を剥ぎ取られてしまえば倒したのも同然。ときにそこの白髪の者、この世界の者ではないな。精霊王により召喚されし者か。」

「いや知らん。精霊王なんぞ会ったこともない。」


さっきからみんな固まって喋りもしないのだが、どうしたっていうんだ。


「ジュンは、この世界の人じゃないから、普通に、して、られるんだね?」

「どうしたロウ。魔獣が喋っても別に変じゃないだろ。」

「違うわジュン。サラマンダーは精霊王に仕える精霊の一つよ。伝承の中でしか存在しないとされているものが、今目の前に・・・。」

「そうなのかアリサ。異世界転移者よりも珍しい存在か。それで、急に飛び出してきて何の用だ?」

『ガーディアンを倒した者には褒美を、と精霊王より託っている。精霊王に従い、これを授けよう。』


サラマンダーが口から何かを吐き出した。

溶岩の流れが落ち着いた孤島の下に赤く光る何かが転がっている。

その大きさはかなりのものだ。


『緋金だ。今お前たちが身に着けている物よりも良いものだ。受け取るが良い。』

「ああ、いただくとしよう。」

『では、さらばだ。』

「あ、待て、ガーディアンはどうする。」

『好きにしろ。我は常にこの場にとどまっているわけではない。別の場所にもガーディアンはいる。そのガーディアンがこの場にとどまるというのであればそれも良し。』


先ほどの抵抗が嘘のように、ガーディアンは力なくただ腕に張り付いているだけになった。


「わかった。忙しいところ悪かったな。」


何も返さずにサラマンダーは溶岩の中へと姿を消した。


「・・・ロウ、大丈夫か?」

「うん、今は平気。でも嬉しいんだか怖いんだか、ドキドキが止まらないよ。」

「アリサも、みんなも大丈夫か?」


ルインが少し引きつってはいるが動けるようだ。

他は腰を抜かしてしまって立てないらしい。


「ロウ、あれ持ち上げられるか?」

「うん。」


ロウが緋金に手をかざすと、孤島と同じ高さまで持ち上がった。


「サラマンダーから出てきたものだし、熱いんじゃないか?真っ赤だな。」

「緋金、って言ってたよね?」

「ああ、ひひいろかね、そう言ってたな。」

「これも伝承でしか出てこない鉱物の名前だよ。鑑定でもそう出てるから間違いないよ。」


ロウの見えている鑑定結果、意外とその精霊王とやらが情報提供しているのかもな。


「さて、希少鉱物も見つかったことだし、畑に戻ろうか。」

「ジュン。なんでそんな普通にしていられるの?」

「さあ?歳だからじゃないか?ルイン。」


ようやく全員立ち上がった。

緋金の場所までロウが地形を動かし間近で見ては指で触れてみる。

もう熱くはなさそうだ。


「ロウ、しまえるか?」

「うん、たぶん入るよ。」

「じゃあこれも。」


ツルハシもロウに預けて身軽になる。

溶岩湖を後にして長い階段を一段ずつ登っていく。

すっかり存在を忘れていたが、まだガーディアンは腕に張り付いていた。

目や口があり、こちらをじっと睨むように見てくる。


「お前、ここに残るか?」


動かない。


「じゃあ一緒に来るか?」


返事がない。


「じゃあ一緒に来るということで。」


ガーディアンを腕に張り付けたまま、洞窟から外に出た。

未探索エリアの帰り道、ロウが浮かない顔をして何かを考えている。


「どうした?ロウ。」

「そういえばさ、薬草食べてたよね。今日いろいろありすぎて忘れてたけど。」

「ああ、毎日食べてるぞ。」

「え?毎日薬草食べてるの?」


えげつない顔をレイナがしている。

野菜嫌いか?


「ああ。君たちが冒険に行っている間にしていることだからな。血肉となる大切なポーションが体に悪いものだと困る。だから育てている薬草は一通り食べているよ。毒も中にはあるみたいだが、消毒草とキナコのおかげで何とか生きてるかな。今じゃ消毒草無しでも食べられるようになったぞ。ん?どうした?ロウ。」

「あ、いや。そんなに体を張らなくても。僕の鑑定だけじゃ不満だった?」

「そんなことはないさ。ロウの鑑定は凄いし役に立っているよ。だがほら、実体験ってのも必要だろう?」

「うーん、そうかなー??」


ますます険しい顔になってしまった。


「おじさんってそういうところ変わってるよね。」

「みんなのためにぽんぽん痛めるジュンが尊い。」

「ジュン、別にそこまでしなくても良いのよ。ロウもジュンと同じくらい、私たちを思ってポーションを作ってくれているわ。」

「また高品質のポーションできたんだっけ?たまたま私がいて完成したとき二人抱き合って喜んだもんね。」


おいおいここで痴話げんかは辞めてくれよ。

アリサとリオンの、ルインに対する表情が恐ろしいことになっている。


「ローウ、どうにかしろ。」

「ジュンでも怖いものあるんだね!あでででっ。」


ロウの頬をアリサが摘まんでおる。

ルインが助けに入って、楽しそうにしておる。

いつもの調子に戻ってきたか。


「はは、もうその辺にしておけよ、アリサ。」

「んもう。ジュン、笑うようになったわね。その笑顔は私たちにとっての一番の薬よ。」

「アリサの言うとおりだよ、ジュン。君のおかげで僕は心から笑顔になることができたんだ。」

「そうか?」


嬉しいことこの上ないがな。

まあこの世界に来た時に比べて感情を表に出すようにはなったと思うが。


「おじさんがいなきゃ今頃は・・・。」「笑顔なんてなかったわ・・・。」「奴隷・・・。」

「私たち二人もここに居なきゃ今頃どうなっていたか。」「自暴自棄であたしら自爆?」

「僕は・・・。」

「・・・。」


生きているからこそ、乗り越えたからこそ、暗くなる時もあるか。


「みんな良かったな、こんなおじさんに出会えて。人生変わったか?」

「うん!」「大変革。」「好きな人に会えたよ!」

「ジュン、うふ。」「ロウとまた一緒にいられるよ。」

「僕は変わったよ。ジュンのおかげで。」

「私も過去に別れを告げられましたから。」


アリサとロウは大変な過去だったな。


「みんなの変わった、は自分たちで切り開いたんだからな。おじさんは何もしてない。強いて言うなら場所と機会を与えただけ。あとは自分の力だ。みんな輝いていて、おじさんは嬉しいよ。」


自信、誇り、他者を思いやる気持ち、みんなにはもうこれらが胸にあるはず。

そしてかけがえのない仲間がそばにいる。

どんな困難も立ち上がり、向かうことができるだろう。


「そうそう、あと驚いたのが、ジュンが結構動けるってことかな。」

「それはそうだね。おじさんのツルハシってあんなに凄いの?」

「レイナでも吹き飛ばされていたのにね。」

「そうか?目にもとまらぬ速さで動く君たちが驚くことか?」

「僕らはさ、冒険に出ているから動けるようになるものわかるでしょ?でもジュンは冒険に出てないのに、なんで?」


いや知らんよ。


「さあな。薬草効果じゃないか?鑑定とかで出ないのか?」

「うん。全く。薬草の効果でうんぬんとか、持久草以外は無いよ。」


前の世界よりも健康的な生活は送れている。

野宿ではあるものの、温かい飯に温かい寝床、体力勝負の仕事、朝日と共に起きて日没とともに寝る生活。

体も心も健やかなのは当たり前かもな。


「そうか。おじさんは君たちの笑顔が一番の薬だし、お前さんたちが目の前でやられるのは見たくないからな。知らないところで死んでるなんてごめんだ。今回はそういうこともあって、力が出たのかもな。戦闘の経験も全くなかったが、守れてよかったよ。」


なんだか、自分がどれだけ危ないことをしたのか、そう思うと足が震えるな。

ルインとレイナがスイッチすると、レイナがピタリとくっついてきた。


「ジュン、カッコ悪いなんて言ってごめんね。カッコ良かったよ。」

「ああ、レイナも、守ってくれてありがとな。」

「ジュン。」


マリカとキャスが自分自身を指差して何かを訴えている。

一体なんだと言うのだ。


「マリカも、魔法ありがとうな。」

「当然。」

「キャスも、助かったよ。」

「ジュンのためならなんでもしちゃうよ?」


無事村にたどり着いて命があったことを素直に喜んだ。

無反応を決め込んでいたガーディアンだが、畑に連れて行くとすぐさま目についた花園に入っては出て入っては出てを繰り返していた。

それから何日か、みなの冒険についていくのをやめて畑で薬草づくりに専念していると、小さな岩石の塊で人の姿を形づくってジョウロを両手に持ち、花園でキナコやロゼが土に追肥をした場所に、ジョウロで水をあげているガーディアンがいた。

やつも畑が気に入ったようで、キナコやロゼから、鹿たち、ロウやポイム達とも次第に打ち解けていき、花を握りつぶしてしまうなどの失敗は何度もあったが、誰も怒ることはなく仲間としてガーディアンに接して畑について教えていくうちに、人の言葉を理解するようになった。

ガーディアンは少量の水と土、岩があれば食べ物に困らないようで、キナコやロゼが作り出すよく肥えた土を食べて元気に畑作業を率先して行うようになり、ガーディアンが畑の周りに石の柵を作り上げたときは驚いたが、みなでガーディアンを称え喜び合った。

表情はわからないが、ロウの仕草をよく真似をするようになっており、ロウの気恥ずかしそうな嬉しそうなときにする、頭を手でかきながら俯く姿を見せ、ガーディアンの気持ちを汲み取ることができるようになっていた。

ガーディアンが畑に来てから二カ月が経とうとしたところで村の門番が騒がしくなった。

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