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降り立つ影

女子三人にも白魔金の装備を作らせて、アリサたちよりも早く畑に飽きて森に五人と二匹で冒険に出かけている。


「ロウったらまた私の手柄を横取りしたんだよ?!」

「あれは、危なかったじゃないか。」

「レイナが余所見してた。」

「そうよ、ロウがいなかったらレイナ崖の下よ?」

「まあまあ、レイナが無事で良かったわよ。」

「うわーん、アリサ大好きー。」


騒がしいな。


「今日はどこまで行ってきたんだ?」

「んー?未探索エリアだよ?」


ここひと月でめきめきと実力をあげ、女子三人もかなりの凄腕と称されるようになってきた。

ロウはハーレム状態で楽しいようだ。


「そういえばまたついてきてたねあの二人ー。」


まだ、本当にしつこくロウを追放した二人がいまだに彼をつけ回している。

振り向かないロウについていくほど、彼女らもレベルが上がると言う悲しい状況になっていた。

もう声かけるかな。

あと男子だが、彼はもうこの村にはいない。

女子二人から出すとこ出している女戦士に乗り換えたらしい。

現金なやつだ。

ロウのいたパーティはもう女子二人となり、解散したと言っても過言ではないだろう。


「そうか、それは大変だったな。みんな怪我はないか?」

「心配してくれるのおじさんだけだよー。」

「ポーションあるから。」

「ロウもすごいよね。マナポ作っちゃうんだもの。」

「そうね、魔力切れることがなくなったのは大きいわ。ロウのおかげね。」


褒め称えられもうデレデレのロウだが、彼もみんなの役に立つためポーションの研究をし始めた。

ヒールポーションとマナポーションを短期間で作り出し、その品質まで底上げさせていた。

今やチェインのポーションといい勝負だろう。

回復師のいない五人パーティにはもう欠かせない存在となっている。


「ジュンがいい薬草をこっそり分けてくれるおかげだよね。」


そう言って感謝の気持ちを忘れないところも、ロウの良いところだ。


「そうか、それなら一つ頼まれて欲しいんだが。ロウ。お前の見てる世界を見せてくれないか?」

「・・・え?」

「鑑定ってあるだろう?その鑑定したものを見てみたいんだ。できるだろうか。」


畑仕事でロウの見ている鑑定結果がわかればより栽培が捗る。


「それって僕、用済みってこと?」

「違う違う。最近畑を空けることが多くなっただろう?栽培している薬草の品質もロウの鑑定頼みのところもある。ロウがいない間もちゃんと面倒を見られるようにしたいのさ。そうだな、鑑定の眼鏡とかあると良いんだがな。」

「鑑定の眼鏡型魔具・・・。」


うずうずしているようだ。

言葉ではああ言っても、何かを作り出したいという欲求と衝動には錬金術師は素直だ。

いや、ロウだけかもしれないが。


「私も、ロウの見ている世界を見たいわ。」


ダメ押しのアリサ。


「わかった!やってみるよ!」

「足りない材料は、自前で揃えてくれ。」

「あはは、いつものことだね。」


それから、ロウの魔具研究が始まった。

ギルドに出回る魔具を買い集め、作り方を一から勉強し始めた。

アリサたちと外に出ている最中も、鞄に道具を詰め込んで暇さえあれば研究に没頭しているとアリサが言っていた。


「ロウ、最近かっこいいよね。」

「どうした?リオン。」

「私たちと一緒に危険な場所に出て、安全を確保したら私たちが寝たあとに研究をしてて、夜中ちょっと起きた時に見たんだけど、その姿がかっこよかったんだ。」


畑で薬草の花が開いているのを見つつ、リオンがロウの最近を教えてくれた。



鑑定の魔具研究を始めてからひと月、女子三人が村に来てからふた月になろうとしている。

未探索エリアを探索し続けている五人と二匹の快進撃は目を見張るものだ。

新種の魔獣の発見し、地図をどんどん新しく塗り替えていく。

いつしかギルドでは白魔金の悪魔たちから白の天使たちに呼称が変わったそうだ。

女子三人も別人へと変貌を遂げた。

稼ぎもよく、マジックバッグも三人分手に入れてしまった。

それと、ロウの元メンバーにも声をかけたが。


「ロウに用があるの!」

「白頭キモい。」


だそうだ。

一途なこった。

ロウからも彼女たちに働きかけたようで、畑に遊びに来ていた。


「ロウから聞いて、ここで働くならメンバーに迎えてくれるって、言ったから。」

「白頭には屈しないんだからね!」

「はいはい、でもまあ、お前たちもよくやってるじゃないか。話はうちの子たちから聞いているよ。」

「うちの?」「子?」


この二人はルインとキャスと言うらしく、ルインが剣士のクレスト、キャスが魔術師のクレストであると、手の甲を見せてくれた。

年齢の話をして一番年長に見えるアリサですら10以上歳が離れていることを告げると、そのまま動かなくなってしまった。

ロウから貰い受けた白魔金を二人に渡して、五人に合流するように伝える。

畑は女子たちの花園が増え、ロウが畑に来ればひっきりなしに花園の手入れを鹿と一緒に行っている。

みながまた外に出ればまた一人、鹿たちと一緒に畑の世話をして一日を終える日々。

とても充実した日々だが、何かの弾みで簡単に壊れてしまう。



鹿の角が大きく尖り始めた頃、村が魔獣に襲われた。

と言っても大群で襲われたわけではなく、大きな鳥の魔獣が村の結界を破って舞い降りたのだ。

そしてその日たまたま、畑の子全員と、チェインたちパーティも全員、村に滞在していた。

すぐさま、その大きな魔獣にチェインたちが立ち向かったが、鳥は魔法攻撃を受け付けず、斬撃も硬度を変えられる羽毛で簡単に弾かれてしまい、畑の子もチェインらの様子を見ていて太刀打ちできる相手ではないことを痛感させられていた。

鳥の魔獣は羽をたたみ、体を休めているようだ。

よくよく見ると、至る所の羽毛がむしれて、血を流しているところもある。

この鳥の魔獣の傷をつけるほどの力の持ち主が他にいる。

今は羽休めをしていて活発に動いていないが、これが動き出したら、とギルドと村は焦りなんとか追い出す方法を検討していた。

傷ついた魔獣、鹿のようにはいかないだろうが、体を回復させてやればすぐにここから出ていくだろう。

安直だが攻撃を加えて敵対するよりかは遥かにマシに思える。

ロウのポーションと回復系の薬草を多量にむしってポケットに突っ込み、鳥の魔獣に近づくことにした。

チェインたちや畑の子のような戦う力は自分にはない。

ポイムとキナコが袖に噛み付いて引っ張ったりしたが、頭を撫でてやめさせて、休んでいる鳥の近くまでやってきた。

それに気がついたチェインが大きな声を出す。


「ジュン!やめろ!迂闊に近づくんじゃない!」

「そうだよ!ジュン!まだ僕は君の依頼を完成させてないんだ!完成前に、いなくなるなんてやだよ。」

「おいおい、まだ死ぬと決まったわけじゃないだろ。それに、なんとかしなきゃどうせ死ぬんだろ?なら自分の出来ることをやる。それだけだ。」


鳥はこちらに目を配り、手の届くところまで近づくと、顔をこちらに向けて大きな声と口で威嚇をしてきた。

正面から見た鳥の姿は、上半身は猛禽類、下半身は獅子のような体で、まさにグリフォンといった姿をしている。

吠えられはしたもののグリフォンの思惑にかかわらずズカズカと懐に入り込んで行くこと、この魔獣は狼狽え、前足の鉤爪で攻撃をしてきた。

また左腕が飛ぶ。

だがその隙に怪我をしている後脚に駆け込んで近づき、右手に持っていたポーションを振りかけた。

シュワーという音と共にみるみる傷口が塞がっていく。

ポーションが効く、使える。

グリフォンはこの人間が何をしたのか、自分が何をされたのか、頭をこちらに向けて観察していたようで、傷を治した人間に好きにやらせると決めたように顔を正面に向けて座り込む。

こちらもそんなグリフォンの様子を肌で感じ、全身をくまなく観察して、傷があればポーションを振りかけ、ポーションがなくなればポケットに突っ込んだ薬草を傷口に当てて治療を施した。


「ジュン!こっちに!」


チェインが呼ぶより早く、ロウが呼ぶ。

ロウが飛ばされた腕を抱えながら泣いている。


「なんでこんな!無茶するんだよ!」

「でも命はまだあるぞ。」

「僕の寿命が先になくなるよ!」

「はは、元気じゃないか。」


ロウの頭をなでてやると、少し落ち着いてきたようで涙ももう流してはいない。


「腕をくっつけるには、どうしたら・・・。」

「おい!お前!早くそれをよこせ!早くしないと付かなくなる!」


チェインが腕と肩を同時に消毒しチェイン特製の薬を塗りたくって腕と肩を接着させた。

激しい痛みが走るが、離れた肩と腕が互いに組織を伸ばしてくっつこうとする感覚が同時にする。


「しばらくはこのままだぞ。俺の大事な栽培要員なんだからな。」


栽培要員、か。

畑の子、ロウはどう思っているだろう、と顔をロウに向けると、今にもチェインに対して怒り出しそうになりながらも必死に耐えていた。

その気持ちは、とても嬉しい。

ロウは、自分がやりたかったことをチェインにやられ、知識と道具が不足して何も手出しができなかったことに、腹を立てているのだろう。

チェインに怒鳴りつけるのなら、それ相応の準備できていて、対等の立場になって初めて出来ること、それをロウはこの瞬間に感じているのだろうな。


「すまないな。」


チェインに簡単に告げて、ロウの手を引いて畑の方に戻る。

グリフォンは体を状態点検するように見回し、体を捻り、異常がないことを確認すると、そのまま真上に飛び去っていった。


「ロウ、ありがとう。」


まだ難しい顔をしているロウの頭を右手でくしゃくしゃに撫でて、また右手で手を繋いで畑まで戻ってきた。

ロウの後ろから、女子たちと二匹が遅れて歩いてきている。


「あの薬、この畑にはない薬草が使われてる。忘れな草、リザレクトウォート、回帰草、レゾナンスグラス、生命花、アナステフリージア。見たことも聞いたこともない薬草だった。僕は探しに行きたい。ジュンがまたあんな無茶しても、大丈夫って笑えるくらいにっ。」


また泣いてしまった。


「ああ。そうだな。ロウ、期待しているよ。採れたら持ってきてくれ。」

「ゔん!」


出会った頃に比べ逞しくなったな、ロウ。


「はあ、なんか治療を受けると眠くなるんだよな。あそこで寝る。」


掘建て小屋の中で横になると、そのまま気を失ったように寝てしまった。

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