再会の花
仲間が二人増えたものの、最初の頃はアリサもロウも物珍しさから畑によく来ていたが、畑の変化が乏しいためかひと月ほどした後、二人してよくクエストを受けてはポイムとキナコを連れて森に入るようになった。
そして森の中でまだ栽培していない薬草をロウが見つけると取ってくる。
新しい薬草の栽培を始めると、二人は畑に入り浸り、アリサは花を、ロウは鑑定で成長過程を見るのが楽しいようだ。
二人の活躍で手に入った薬草は、
月夜草、ロックロック(石食草)、夢見草、マナパイプ(魔煙草)、朧花、ヒーリングラス(治癒草)、ヒートリーフ(加熱草)、スウィートクーラー(冷却草)
を持ち帰ってきた。
ロウはそれぞれ効果や混ぜ合わせるとどうなるまで解説をしてくれたが、難しすぎて覚えられない。
ロウでもポーションが作れるということを聞き、薬師と錬金術師の違いが気になりアリサに問いかけた。
すると、まずクレストが違う。
薬師はポーションの生成に特化、錬金術師でも薬師のようにポーションを作ることができより効果の優れたポーションを生成できる。
薬師はその他冒険者についていくことはできポーションも冒険中に生産ができるが、錬金術師は冒険者についていくことはできてもポーションの生産は不可能。
新たなポーションの生成や研究を錬金術師が、新しい効果のポーションを現場で作って使うのが薬師、という住み分けなっている。
ロウのように冒険者をしている錬金術師は少なく、新しいものを探究すべく腰を据えて研究に没頭する錬金術師の方が多い。
錬金術師の開発したポーションや魔具などは世の中の生活を向上させる、時には有能な錬金術師を求め国同士の争いに発展することにもなるというほど、重宝される人物にもなることができる。
「アリサさんのクレストはどのようなものですか?」
「私のは剣士です。そして剣士のクレストのとしては珍しい、剣聖となっているのです。ですが私はこのクレストのせいで、人生が狂い、惑わされましたから。あまり良いものだとは思っていません。」
「そんなことないです!アリサさんは素晴らしい人です!森ではアリサさんに助けてもらいっぱなしで。僕は、アリサさんが剣士で、剣聖で良かった!心からそう思います。」
「ロウさんも、錬金術師として活動するようになってから見違えるほど成長したと思いますよ。ですがジュンさんは。」
「ジュンさん、クレストありませんよね。どうしてなんでしょうね。異世界人でもクレストはつくと思うのですが。」
「ロウは異世界人を見たことがあるのか?」
「ええ、見かけた人はアリサさんのクレストと同じでした。それともう一人、回復師の中でもより強力な回復ができる女性、聖女と呼ばれる人も異世界人でしたよ。二人とも僕らみたいにクレストがありました。」
手の甲には、二人のような紋は何もない。
まぁ悩んでも仕方ないし栽培ができればそれでいい。
「今日摘んできたタイガードの花、綺麗ですよね。ポイムに似ていたのでつい。」
そう、また最近ではアリサの気に入った花を摘んで来るようになった。
畑の一角はアリサの花園として世話をしており、そこではロウが綺麗な花を咲かせられるように奮闘している。
殺伐とした森から花園に帰ってきて、ようやく生きた心地がするらしい。
花園はこの畑のために尽力してくれている二人のため、チェインに何か言われようとも死守するつもりだ。
当のチェインだが、ロウのおかげで一番良い状態の薬草を納品することができるようになり、畑で栽培された薬草から生成したポーションの効果が今までと段違いに良いということで、パーティから喜ばれているという。
店はまだ現役で冒険者をしているため開けていないが、ギルド内にいる冒険者からはチェインのポーションは高値で取引されているということだ。
ここまでやってこられたのは二人と二匹のおかげだ、本当に感謝をしている。
言うだけ言って任せっきりのチェインとは雲泥の差だ。
それと住処だが、柵の近くに作った、ただ外から見えにくいだけの囲いを作って、その中でポイムとキナコと一緒に寝ている。
この囲いの利点は、催した時に今までは村の外まで急いでキナコを連れて行っていたが、それがなくなったことだ。
見た目の割に丈夫な体を持っているから、半分野宿でも生活に困っていない。
「そろそろ武器も買い替え時期ですか?」
「そんなことありませんよ。」
「ジュンさん、もう本当に白魔金のこと知らないんですね?熟練の冒険者なら喉から手が出るほど欲しい装備なんですよ。一度鍛えれば剣は刃こぼれを起こさず、杖は魔法の増幅させる。効果は絶大で貴重な金属の武器を僕らは持たせてもらってるんです。」
「そうか。だがなぁロウ、キナコの精錬癖がなあ。」
「ジュンさんも新しい農具を白魔金で作るのはどうでしょう。僕はジョウロが欲しいです!」
「それなら良いか。」
「依頼料は僕が出します!」
二人と二匹で時々洞窟にも入ることがある。
アリサにもロウにも辛い場所であることは間違いないにもかかわらずだ。
「この洞窟を克服しなければ先はありませんよ。」
「底を見てきました。戒めですね。」
トラウマを克服した、そう考えて良いのかイマイチ悩みどころだが、二人が言うならとそのままにしている。
おかげでロウのマジックバッグがキナコの精錬の金属でほぼ埋め尽くされている。
既に防具も白魔金で作っていて、ギルド内での評判は白魔金の悪魔たちと呼ばれているとか。
ロウを追放したパーティの女子二人が、ロウがここまで変貌するとは思っていなかったのだろう、また組むことを懇願されたがロウは取り合わなかった。
面白くないのは女子だけでなく男子もで、森で三人と二人で戦闘となったが、アリサを前にして前衛で勝てる者はおらず、後衛も、成長して地形を自由自在に操り作り変えられるようになったロウの敵ではなかった。
あっけなく戦闘が終わりポイムとキナコを探すと少し離れた場所で二匹が寛いでいた、と笑いながらアリサとロウが話してくれたことが印象的だった。
取り止めもないことで笑えるようになっている。
女子たちは男子を捨てて、またロウにアプローチをかけているそうだ。
これらが、アリサとロウが来てから三ヶ月くらい経ってからのこと。
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それからまたひと月経って、マジックボックスの中の種が充実し始めチェインのポーションの効果が世の中に轟き始めた頃、彼女たちが村に戻ってきた。
「おじさーん!いるー?あ!花いっぱい!」「これ、綺麗。」「あそこなんか際立って綺麗じゃない?」
「おお、久しぶりだな。レイナ、マリカ、リオン。それからお前らも。」
「へへへぇ。」「名前、覚えてたんだ。」「久しぶりー。」
ちょうど良いタイミングで森からアリサとロウがポイムたちを連れて帰ってきた。
「あー!ポイムー!!」
女子三人がポイムのもとにかけていく。
「あ、あの、君たちは?!」
ロウの顔が真っ赤だな。
それぞれ自己紹介を始めたようだ。
デレデレしたロウの尻をアリサが思い切りつねり、痛みのあまりにロウが飛び跳ねている。
もうあの二人くっつけば良いのに。
・・・くっつけば良い、か。
心の底から祝福する準備ができているのが面白いな。
「お前らも、よく三人を守ってくれたな。」
角がまた生え始めたのか隆起してきている。
頭を撫でると会った時のように目を瞑り気持ちよさそうにして、子鹿が腕の中におさまろうと飛び跳ねてきた。
ここを発ったときよりも大きく重くなって、変な格好で抱えることになり五人にそれぞれ笑われた。
「三人とも、ジュンさんには砕けた話し方なんだね。」
「うん、おじさんそういうの気にしないよ?」
ロウが羨ましそうにこっちを見ている。
「僕も、いい、ですか?」
「いいよ、アリサもこの際だから。」
「ふふ、じゃあお言葉に甘えて。」
「じ、ジュン!ジョウロ取って!」
「はいよ。」
言葉にならないほど喜んでいるロウ。
「面白いやつ。」
ロウは水を汲んで花園にアリサと一緒に入っていった。
「あれ、おじさんのじゃないの?」
「あれはロウが頑張ってるところ。おじさんのはあそこ以外。」
「凄い綺麗に咲いてるよね。ロウって人も凄いんだね!」
「ああ、そうだな。レイナも懲りずに戻ってきたんだから凄いぞ。」
「ええー、なんか複雑。」
むくれた顔が面白いな。
「それで、レイナ、マリカ、リオン、ここで働くのか?」
「うん!」「さっきアリサに聞いたけど過酷。」「もちろん!」
「マリカ、そう言うな。まずは宿を取ってきなさい。」
「レイナ、はいよ。」
「ロウ?これは?」
「それで宿を取ってこい、ジュンならそう言うから。」
「いいの?!」「いいのか?」
「いいの!」
かっこいいところを見せたいか。
「わーい!いこー!!」「宿代浮いた!」「みんなまっててねー。」
「・・・騒がしくなるな。」
「忙しくなるな、の間違いじゃない?ジュン。」
「僕は全然いいよ!あでっ!!」
またつままれてる。
随分と仲の良いことだ。
畑仕事始まったけど早回しになっちゃう




