表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/18

畑の仲間

昨晩の天気から一辺、澄み渡る空に暖かな日差しが眩しい。

彩られた畑も相まって自分の周囲が色に包まれているようだ。


「あ、ジュンさん。おはようございます。」

「眠れたか?」

「はい、意外にぐっすりと。ポイムさんありがとうございます。」


ポイムが役に立って何よりだ。


「あの、僕いろいろ考えたんですけど・・・。」


やはりダメだろうか。

この反応はあまり良い答えが聞ける反応ではないな。


「ここでまた、野宿ですか?」


後ろから女性の声がする。


「畑、随分と賑やかになりましたね。お久しぶりです、ジュンさん。」

「久々、にしては早いお帰りですね、アリサさん。」


アリサが帰ってきていた。


「あの、この女性は?」

「ひと月前くらいか、洞窟で出会ってね。」

「あの時は、どうもありがとうございました。ジュンさん、こちらの方は?」

「あ!ロウ、です!」

「こっちも洞窟で出会いました。二人とも洞窟内での縁ですね。」


まぁ、と口に手を当てて笑うアリサの姿は、この村を出て行ったときとは全くの別人で明るく、どこか吹っ切れたような印象を受けた。


「別れを、言ってきました。」

「そうですか。」


未来へ歩き出す選択をしたようだ。

ロウはどこか呆けたように彼女を見ている。


「綺麗・・・。」


口から感想が漏れている。

そんなロウを見て、どこか陰のある微笑みを彼に向け、そして畑の方に視線をずらした。


「今育てている薬草ですか?こちらは、まだ植え付けは。」

「そこには種を撒いて様子を見ているところです。あとは御覧のとおり、種を取るために枯れるまで栽培を続けます。」

「そうなんですか。ならジュンさん、この持久草はもうすぐ枯れます。種も結構取れそうですよ。」

「ロウさんは、植物に詳しいので?」

「あ、僕、鑑定持ちなんです。」


真っ赤になって答えるロウと優しく微笑むアリサ。


「そうなんですね。錬金術です?」

「いえ、魔術を、でも全然強くならなくて。」

「少し、よろしいですか?」


アリサがロウの手を持ち、手の甲を見た。

紋章のようなものが刻まれており、アリサの手を見るとアリサにも紋章が刻まれている。

ロウは触れられてから身動き一つせず、じっとアリサの顔を見ていた。


「どう見ても、魔術のクレストではなく錬金術のクレストですが、どうして魔術を?」

「あ、ひゃい、パーティメンバーから言われて、魔術も使えるんだからやってみろって。魔術もできる錬金術師なんてかっこいいから、なんておだてられて。今思えばそうですね、できなくて当たり前なのに、固執してしまって。」

「魔術も見せていただけませんか?」

「え?あ、はい。」


ロウが魔法を唱えると、燃え盛る火球が出現した。

大きさ、火力、申し分ないように見えるが。

アリサはロウの魔法に動じることなく火球を観察している。


「錬金術師でここまでのファイヤーボールを出せるのはロウさんだけでしょうね。よく、頑張りましたね。」


火球が消えた。

ロウを見ると、涙を流している。


「はい、ありがとうございます。ありがとう・・・!」


今まで褒められたことがなくそれでもひたむきに努力を続け、今、それが報われたのだろう。

あとからあとから、ロウの涙は溢れてくる。

昨日とはまったく別の、全てを洗い流す涙。


「ジュンさん、私をこの畑で働かせていただけませんか?今日は、そのお話をしに伺いました。」

「ええ、構いませんよ。とはいえ、まだこのような状況ですからすることもあまりないかと。それに、この家は。」

「ジュンさんは住んでいらっしゃらないのですよね。大丈夫です。宿をとりますから。宿と食事の代金もこちらで賄えます。」


ほぼボランティアの状態で働かせることになってしまうな。


「あの!ジュンさん!僕も働かせてください!!」


いきなりの大声で驚いたが、ロウもどこか吹っ切れたようだ。

どこか自信の無いおどおどした格好から、清々しい男らしさを感じさせる風貌に変わっていた。


「僕の錬金術と鑑定なら、きっと役にたてます!」

「アリサさん、ロウ、二人ともありがとう。よろしくお願いします。」


畑に一気に仲間が増えた。


「では、こちらを。」


何をするのでも道具は必要だ。


「こ、これ?!」

「ジュンさん?!」


二人驚いた顔をする。

そうだな、きっと貴重な物なのだろうがそもそもこれはロウが見つけた物だ。


「この白魔金で二人の得意とする武器を作ってきてください。洞窟に行くときいつも丸腰で怖い思いをしていましたから。」

「あの、ジュンさん!この鉱物の価値は!!」

「ロウ、それはきっと高いのだろう?でも、二人の価値に比べたらこんなもの、そこら辺の石ころと変わりない。アリサさん、余りが出たら二人で現金にでも還元して分けてください。」


ロウはこの鉱物を見つけても今のように驚いたり、感動したりしなかったのは、どうせ死んでしまうと心が動かずにいたせいだろう。

今、こうして驚いたりしてみせたのは、生きる希望を持っていることに他ならないと思っている。

二人、過去から新しい未来へ、その立会人になれたのは少し嬉しい。


「笑ってる・・・。」

「いいから、珍しいものを見るような目で見ないでください。さあ、行った行った!」


畑から二人を追い出して鍛冶屋に向かわせる。

畑をぼーっと眺めていると二人が帰ってきた。


「言われたとおり、依頼してきました。」

「ジュンさんはいいのですか?」

「ええ、武器ならここに。」


鍬、丸・角スコ、ジョウロを指さす。


「なるほど。」


ロウは素直に納得している。


「鍛冶屋に行く前に、ロウさんを睨みつける男女がいましたけど、彼らは一体?」

「僕の、元パーティメンバーです。でも追放されましたし、新しくここでやっていくと決めましたから大丈夫です。」


アリサがこちらを向いたので、頷く。


「そう、心強いですね。」


アリサから向けられた笑顔にいちいち顔を赤くするところ、初心なところは可愛いな。


「ロウ、宿は取ったか?」

「あ、まだ。」

「ほら。」

「これは?」

「クエストの報酬。それで部屋を決めてくるんだ。」

「はいっ!」


もう驚かず、元気よく駆けだすロウ。

力みすぎて今にも転びそうだ。


「アリサさん、心配だから見てきてくれると。」

「ええ、わかりました。」


笑いながら、ロウのあとを歩いて追いかけて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ