第4話(第3話)
ナギとタリスが魔王を倒す旅を始めてから2年がたち、彼らは18歳になっていた。
タリスは魔王による被害を受けた町に残り、他の人とともに後片付けをしていた。
ナギはその間、いつものように偵察に向かう。
魔力感知と転送魔法を得意とするナギは、どの道を進むべきかを決めるため、一人先へと進む。
転送魔法の目印をつければ、一瞬でタリスのいる場所と行き来できるようになるのだ。
安全にタリスを魔王のもとまで連れて行くために、ナギは徹底的に準備を怠らなかった。
ナギは偵察の最中、一人の女の子と会っていた。10代半ばくらいの女の子は、深緑色のマントを羽織り、森の中でうずくまっていた。
ナギはゆっくりとしゃがみこみ、女の子に優しく声をかける。
「近くの村まではもう少しだ。行こう」
ナギはうつむく女の子の手を引いて、村まで歩いた。
のどかな村だった。
少し離れた場所にある町が魔王の被害にあったことは、まだ誰も知らないようだった。
村には宿屋があったので、ナギは女の子をそこに泊めた。
食料を調達し持っていくも、女の子はいらないと首を振った。体をギュッと抱きしめ、何もしゃべらなかった。
ナギは宿屋を出ると、村のまわりを念入りに調べた。怪しい人や物がないかを確認し、転送魔法の目印をつける場所を決めるためだ。
村の中に直接転送魔法で来るとそこにいる人に驚かれるので、ナギはいつもあえて外に目印をつけるようにしている。
夕方、村に戻ると、宿屋の店主が果物をわけてくれた。
女の子が元気になるようにと、気遣ってくれたのだ。
村には若い人はおらず、年寄りばかりだった。
ナギや女の子のようなよそ者がくるのはとても珍しいことだそうで、村のみんなが喜んでいるらしい。
「よかったら、みんなにも話しかけてやってほしい」と、店主に頼まれた。
ナギは女の子に声をかけた。
女の子はそれを拒否したが、怖ければマントを羽織ったままでもいいと言うと、女の子はしぶしぶ外へでた。
村人はとても嬉しそうだった。
夕食をともにし、他愛もない話をして笑っていた。
ナギは町で作業をしてくれているタリスのことがよぎったが、今のこの時間は、きっと誰にとっても必要なものなのだと感じ、その日は村で過ごすことにした。
翌日、ナギはタリスを迎えに行った。
ナギに案内され村についたタリスが見たのは、これまで幾度となく見てきた光景だった。
地面に転がる、たくさんの死体。
村にいた人は全員、魔王に殺されていた――。
「くそっ!! またっ……俺は……」
悲しみに打ちひしがれるタリスだったが、その傍らで、ナギが安心したように薄く微笑んでいるのを、彼は知らなかった。




