第5話:冒険者ギルドとパーフェクト(笑)勇者
お師匠様から「頼むからまた帰ってきて診断してくれ!」と涙目で送り出された私とルナは、推薦状を手に隣街の『冒険者ギルド』へとやってきていた。
活気あふれるギルドの扉を開けると、酒と汗の匂い、そして荒くれ者たちの視線が一斉に注がれる。
「ひえぇ……やっぱり冒険者ギルドって怖いよぉ……」
おどおどと身を縮めるルナ。
私は即座に周囲の人間をスキャンし、冷静にログを出力した。
[エリアスキャン:冒険者ギルド中央支部]
[脅威度判定:ほぼ皆無(筋力バカ 80% / 酔っ払い 20%)]
[アドバイス:堂々としていて問題ありません]
『安心してください、ルナ。威圧しているように見えますが、単に筋肉のついた人間が集まっているだけです。知性は平均値を大幅に下回っています』
「聞こえたら怒られちゃうから! 声小さくして!」
そんなやり取りをしながら受付へ向かおうとした、その時だった。
「やあやあ! みんな、今日も無事で何よりだよ!」
パンッ! と爽やかな音とともに、ギルドの重厚な扉が開かれた。
現れたのは、金髪をなびかせ、光り輝く甲冑を身に纏った一人の青年。背中には装飾の施された美しい大剣を背負っている。
「「「アレン様ぁぁぁ!!!」」」
一瞬でギルド内が歓声に包まれる。
彼こそが、神から授かりしチートスキルを持つ男——勇者アレンだった。
「困ったことがあればいつでも僕を頼ってくれ。民の笑顔を守ることこそ、僕の使命だからね」
眩しいほどの笑顔で手を振るアレン。
集まった冒険者や町娘たちが「きゃー! 抱いてー!」と大盛り上がりしている。
……だが。
私の**『超高精度・表情および生体反応アナライザー』**は、見逃さなかった。
[ターゲット:勇者アレン]
[心拍数:急上昇(ストレス反応)]
[瞳孔:収縮(極度の不快感)]
[脳内麻薬:マウント欲求により異常分泌中]
(……なるほど。表面上は聖人君子を装っていますが、内面はドロドロですね)
アレンがファンに笑顔を振りまきながら、すれ違いざまに呟いた「心の声(小声)」を、私の音響マイクがバッチリ拾ってしまう。
(チッ……ドブネズミどもが汚い手で触るなよ。服が汚れるだろ……。レベル上げもだるいし、さっさと魔王倒して王女と結婚してぇ……)
『……ルナ。あそこにいる金ピカの人間、内面の汚染度が重度です。近づかないことを推奨します』
「えっ!? あ、あの有名な『パーフェクト勇者』のアレン様だよ……!?」
ルナが驚いて声をあげた、まさにその瞬間。
アレンの目ざとい視線が、私の装着されている『古代魔導書』と、それを持つルナへと向けられた。
「おや? 君、見かけない顔だね。そんなボロっちい本を持って……もしかして、落ちこぼれの新人かい?」
アレンは爽やかな笑顔のままルナに近づいてくると、周囲に聞こえないような絶妙な声量で、嘲笑を浮かべて囁いてきた。
「ハッ、消え損ないの泥ネズミが。僕の視界に入るなよ、不快だ。……おい、さっさと失せろ」
露骨な暴言に、ルナが「う……っ」と身をすくめる。
それを見た私のシステム内で、冷徹な処理が実行された。
[不快な割り込み処理を検知]
[相手のスキル構成を勝手にバックグラウンド・スキャン中……]




