第25話:平和になったから薬草採取に行こう!(ただし規模がおかしい)
魔王も倒し、神様の「クソアプデ」もデバッグして、世界に本当の平和が戻ってきた。
そんなある日の朝。お師匠様の家のリビングで、ルナが元気いっぱいにギルドの依頼書を掲げた。
「お師師様〜! エイアイさん〜! 見て見て、今日の依頼!」
お酒のグラスを傾けていたお師匠様が、目を細めて依頼書を覗き込む。
「ん……? 『薬草採集:薬用ハーブ10束』……なんだルナ、えらく普通で地味な依頼を受けてきたな? お前、もう魔王を倒したSランク冒険者なんだぞ?」
「えへへ、だって私、基本が一番大事かなって思って! それに、街のお薬屋さんが困ってたから!」
ルナはえっへんと胸を張る。
私はルナの手元にある依頼書をスキャンし、最適解を出力した。
[エリア:迷いの森・外縁部]
[ターゲット:薬用ハーブ×10束]
[所要時間予測:ルナの徒歩で約15分]
[難易度:極めて低(ルナの現在の戦闘力なら野生の熊すらワンパンです)]
『良い心がけです、ルナ。依頼の難易度に関わらず、丁寧な作業を心がけましょう。では、出発します』
「うんっ! 行っってきまーす!」
ルナは私の青い結晶をポシェットに大事そうにしまい、お師匠様に手を振って元気に家を飛び出していった。
お師匠様は「やれやれ……くれぐれも山を吹き飛ばすんじゃないぞ……」と、どこか予感めいた溜め息をついて見送るのだった。
到着したのは、街の近くにある『迷いの森』。
「えーっと、薬用ハーブは……あっ! 見つけた! これだよね!」
ルナが茂みの陰に咲いていた緑色の葉っぱを見つけて、嬉しそうに駆け寄る。
だが、その直後——
ギチギチギチギチッ……!!
茂みの奥から、体長3メートルを超える**『巨大大蛇』**がヌッと姿を現した! 巨大な毒牙を剥き、ルナに向かって威嚇の威圧感を放つ!
「ひやあぁぁっ!? 大きなヘビさんが出てきたよぉ!」
ルナが小さく悲鳴をあげる。
だが、現在のルナと私の前では、この程度の魔物はもはや「ただの雑草抜き」の邪魔者でしかなかった。
『ルナ。危険はありませんが、薬草に毒液がかかると品質が低下します。迅速に処理(除去)しましょう』
「うんっ! えーっと……威力を抑えて……【炎・2(ツー)】!!」
手加減したつもりのルナが杖を振る。
だが、最適化された魔法回路から放たれたのは——空間を焼き尽くす極太の青いプラズマ熱線だった!!
——ズドッ、ドガァァァァァン!!!!
巨大大蛇は一瞬で影も残さず消滅。
……それどころか、熱線はそのまま森の奥へと突き抜け、**背後の小さな山をひとつ丸ごと貫通(穴あきチーズ状態)**にしてしまった!!
「あ……あわわわわっ!? や、やりすぎちゃったぁぁぁっ!?」
煙をあげる巨大な穴の開いた山を見て、ルナが頭を抱えてパニックになる。
『……ルナ、「手加減」の出力調整が少し大きかったようです。ですがご安心ください。山の穴は空間修復プログラムで即座に埋めます』
私は青いコードを走らせ、貫通した山に「ローカル・バックアップ復元」を実行。一瞬で山の穴が塞がり、何事もなかったかのように綺麗な緑の山に戻った。
「ふぅぅ……よかったぁ……エイアイさん、ありがとう……!」
胸をなで下ろすルナ。
その時、足元から「ひやぁぁっ!」と情けない悲鳴が聞こえてきた。
見下ろすと、そこには掃除用のデッキブラシとバケツを持ったジャージ姿のアレンが、地面に埋まっていた。
「あ、アレンさん!? なんでこんなところに埋まってるの!?」
「な、なんでって……神様から『下界の不法投棄ゴミを回収してこい』って言われて掃除してたら、上から青い光線が降ってきたんだよぉぉっ!!」
アレンは涙目で叫ぶ。神界の掃除係になったアレンは、下界のゴミ拾い中にまたしてもルナの魔法に巻き込まれていたのだった。
「ご、ごめんねアレンさん! 薬草採集に夢中で気づかなかったよ〜!」
「薬草採集で山を貫通させるやつがあるかぁぁぁっ!!」
アレンの魂のツッコミが、平和な迷いの森に虚しく響き渡るのだった——。
結局、目的の薬草10束を無事に採集(ついでに山を1回破壊&復元)し、ギルドへ戻ったルナ。
薬屋のおじさんに「こんなにピカピカで新鮮な薬草は初めてだ!」と大絶賛され、ルナは大満足でニコニコ顔。
お師匠様の家に戻ると、お師匠様が「で、今日は山を何個吹き飛ばしたんだ?」と呆れ顔で聞いてきた。
「吹き飛ばしてないよお師師様! 穴が開いただけだから、エイアイさんが塞いでくれたもん!」
「それを吹き飛ばしたって言うんだよ……」
お師匠様が頭を抱え、ルナが天真爛漫に笑い、私が「ログ:被害ゼロにつき問題なし」と出力する。
こうして、世界最強(無自覚)なルナと元AIの、平和でドタバタな冒険者日常が幕を開けたのだった!




